4-2:寝て過ごす日
翌日、昼頃。
ノエラは朝からずっと頭痛に悩まされていた。
「ロミロフはもう出発するらしいが、ノエラはどうする? 起きられるか?」
「うーん、無理かも」
「そうか」
「起きれないから、頑張ってねって伝えておいて」
「わかった、伝えておくよ」
やはりノエラは見送りには出られなかった。
→ → →
北門、バルンはロミロフの見送りに来た。
「ノエラは?」
「頭が痛いらしく起きてこられなかった、今度からはあまり飲まないように気を付けておかなければだめだな」
「家の方に寄って行った方がよかったかな?」
「別に構わんでいいだろう、あんなものを出発前に見たら不安になるだけだ」
「それもそうか、じゃあ行ってくるよ。バルンも気を付けてね」
「ああ」
簡素な挨拶を交わして、ロミロフは魔族の領域に出発していった。
「さて、ノエラに何か用意してやるか」
バルンは二日酔いに効くものを買って帰った。
← ← ←
「ただいま」
バルンが帰ってきた。
「ちょっと待ってろ、二日酔いに効くものを買って来てやったからな」
何を用意してきたのかはわからないが、これで少しは楽になるだろう。
「ほら、これを飲むんだ」
バルンが飲み物を差し出し、ノエラは体を起こしてそれを受け取り、飲む。
「あとは寝てろ、今日は出かけずにいてやるから、辛くなったら呼んでくれ」
バルンが何か呟いたがノエラにはなんと言ったかは聞き取れなかった、そして、頭痛を塗り隠すように眠気がノエラを襲った。
→ → →
バルンはノエラがすやすやと安らかな寝息を立てて寝ているのを見て安心する。
(寝ているのならば余計なことはしなくてもいいか)
今日はもう外に出る用事もないなと、フードをとり、顔の影も晴らす。
普段から寝るとき以外は被りっぱなし、影もかけっぱなしだが、誰もいないのならばいいだろう。
(やはり、取っていた方が気持ちが良い)
そして自室に戻り、袋に入れていた角を出す。
インクリスに渡された角だ。
見た目はバルンの角によく似ていて、持っている力も同じような物だ。
この角を使えば、バルンの力は全盛期に戻り、今のように人間に紛れて暮らすようなこともしなくてよくなる、そして魔王城に戻ることも可能だろう。
そしておそらくインクリスに都合の良いことになるのは間違いない。
あの時は、帰りを待っているなどと言っていたが、そんな魔族はいない。
大事なのは自分という個であり、強者には力で敵わないから従う、そういうものが魔族だ。
王を尊敬しているから従うという魔族は一人もいないだろう。
(インクリスは何を考え、そんなことを俺に言ったのだろうか)
考えてもわからないな、元より何を考えて行動しているのかわからない魔族だったが、話をしてみてよりわからなくなった。
そもそも、この角はどうやって用意したのだろうか、バルクロムが勇者に負けて魔王城から消えてから20日程、それでこれだけの力を溜められるとも思えない。
もともと溜めていたものだとして、それをバルンに渡すのもわからない。
溜めていたものなのならば、自分で使えばいいのだ。
他者にそれを渡すことなど普通しない。
全く、インクリスという魔族は謎が多すぎる。
魔族の常識からは尽く外れた存在だろう。
思えば、バルクロムはインクリスよりも力を持っているという確証がない、会ったことも、見たことすらない。
もしかしたら、バルクロムよりも遥かに力を持っている、非常に強い魔族なのではないか?
それならば何故魔王にならなかったのか、疑問は尽きない。
(インクリスのことをこれ以上考えるのは無駄だな)
考えれば考えるだけ、謎が多いことが分かり、かもしれないで存在が強大になっていく、それならば考えることに意味がない。
(ノエラの様子でも見に行くか)
バルンは角を袋にしまって、ノエラが寝ている部屋へ行く。
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