Recession 4
発電機と混合ガソリンを持ち出した所までは分かる。
だが、俺がなぜこの女と一緒に帰らなければいけないのだろうか。
しかも重い戦利品を載せてだ。
「で、家はどこら辺なんですか」
「家? そんなの無いわ。今は寝袋と乾パンだけで生きてるもの」
ここで普通の女性なら止めるところだ。しかし、この人は強い。いきなり殴り掛かられても軽く返り討ちにできるぐらいの力はあるだろう。強い人っているもんだ。
「じゃあその寝袋と乾パンはどこにあるんですか?」
「あ、それなら今持ってるわ。生憎乾パンは全部食べちゃったけど」
「ん? 今、どこに向かってるんですか?」
「そんなの知らないわ」
笑いながらこんなことを言える人間に俺もなりた……くはないか。
「じゃあ、俺んち来ます?」
「それはどういう?」
「あくまで、契約です。俺の身を守ってくれるのなら食料と家を提供します」
「食料はどれくらいあるの」
「カップ麺一年分と豆苗、その他缶詰。あとは今日の野菜の種を育てる」
「家の環境は?」
「ほとんど無傷だ。あと今はカセットコンロでお湯も沸かせる」
「いいわね。じゃあ今すぐ案内しなさい」
「でも、あなたの素性が分からないので若干不安です。絶対に食料を盗んで逃げようとか考えてないと言えますか?」
「それは無理ね、だって私もあなたもいずれ死ぬもの。あなたが先に死んだら全部貰うわ。でもあなたが死ぬまでは約束してもいい」
「それも、そうか。そうですね。じゃあそういうことにしましょう。家はこのまままっすぐです」
家へと向かう間、彼女の身の上話を聞いた。別に聞かなくてもいいが無言でいるのも辛いからな。
彼女が言うには都内からこっちまでゾンビを倒しつつ進んできていたらしい。なんでも人の多い都内は一瞬でゾンビの巣になったらしい。それと鉄パイプを使っているのは薙刀部に所属していたから。通りで強いわけだ。
それと発電機が欲しかった理由はホットプレートが使いたいという理由から。
乾パンでも焼くつもりだったのだろうか?
あと、あのホームセンターは彼女は二回目だったらしいが一回目の時はゾンビが多くてとても入れなかったらしい。これは恐らく生存者たちが集団で逃げ込んだものの発症者が出たかゾンビの襲撃があったかのどちらかだと考えられるとのこと。
でも偶然会った生存者が彼女で良かった。何せ強い上に食料で釣れるというお手ごろさ。とりあえずカップ麺の消費速度が上がってしまったため近いうちに食料の調達を行うことにしよう。
最期の街 森田ムラサメ @morisinn
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