The beginning 2

 リビングでカップ麺をすすりながら

テレビをつけると官房長官が会見を行っていた。


「この度の武力侵攻に対し大変遺憾に思うと同時に我が国としましては、近隣諸国と協力し事態の改善を目指していきたいと思います」


 アジア諸国に訪問中の首相に代わってということなのだろう。


各報道局では現地の人間が取材を行っているが明らかにヤバい物が映り込んでしまっている。


 俺は吐き気に襲われた。内臓の飛び出た人間にモザイクが掛かっていないのだ。とりあえず水を飲んで落ち着かせる。初めて人間の臓物を見た。思い出してはいけないと思いつつも浮かんできてしまう。不謹慎かもしれないが気持ち悪いそれだけだった。


 でもなぜそんな状態になっているのだろうか。軍事侵攻と言っていたが軍隊がいるわけでもなく国境から離れた長閑な田舎に遺体が転がっている程度。弾痕もなければキャタピラーの後もない。本当にでっち上げなのだろうか。


 とりあえず、やることもないし気持ち悪いし寝ることにしよう。テレビ局への苦情を入れるか本気で悩んだが、チキンな俺にそんなことができるはずもない。


「アメリカ、カルフォルニア州銃乱射事件発生」

その報道は霞んでしまった。しかし、妙だ。犯人は射殺されたらしいが死人は犯人達だけ。自動小銃を使った休日のショッピングモールでの複数人による犯行でそんなことあり得るだろうか。撃たれた人間は意識が朦朧としていているものの奇跡的に無事。現在救命活動が行われているとのこと。なお犯人には人食思想があったらしく動けない人間を貪っていたそうな。


 軍事侵攻が暗いニュースならこっちは明るいニュースだろう。

まあ最近では軍事侵攻に関しての報道は落ち着いてきている。何も証拠が出てこない上に連邦が侵攻するメリットが無い。あるとしたらヨーロッパ諸国での暴動沙汰だ。各地で暴動事件が起きているらしい、軍を派遣しているということは報道されるが結末が報道されることはない。恐らくあまり人道的な鎮圧ではないのだろう。


それとヨーロッパでの新型ウイルスの発見だ。もう死者が出ているらしい。

こんなことがあってからヨーロッパの厄年なんて世間では呼ばれている。まるで他人事だ。損をする日本人がいるとしたら大暴落したポンドとユーロを沢山持っている人間と現地で暴動に巻き込まれた人ぐらい。俺にとってはどうでも良いことだ。


 国はヨーロッパ諸国への渡航自粛を呼び掛けている。

暴動は東ヨーロッパから始まり最近ではドイツでもあったようだ。多くの国が国家非常事態宣言を出している。暴動の元となる危険因子が移動するのにEUの政策が裏目に出ているのだろう。


 ヨーロッパでの暴動は毎日あるためニュースではほとんど流れなくなった。

西部の方でだけだがアメリカでも暴動が起きている。物騒な世の中になったものだ。


 それからWHOが東ヨーロッパへ調査のために医師たちを派遣するらしい。が、どの国も受け入れを拒否している。意味不明である。


 まあそんなことよりも俺にとっては備蓄のコーラとカップ麺を密林で発注することの方がよっぽど重要だ。



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