空席
新菜と二人で買い物の途中、ファーストフードで休憩をすることになった。けれど、休日の昼過ぎだからか、席がどこも埋まっていた。
「ねぇ、どうする?他の店行く?」
「でも、せっかく来たんだし、空くの待とうよ」
そんな会話をしながらレジで並んで待っていると、ちょうどわたしたちが会計を終わったときに店を出ていく人がいた。
「あ、ちょうどいいじゃん。あそこ、席空いたよ?」
新菜はそう言って急いで席を取りに行った。
でも、ちょっと待って。確かに空いてるけれど、一人分、だよね?隣の人、まだ食べてる途中、だよ?どうするの?
そんなことを考えながら新菜の後を追ってその席へと向かった。
新菜はわたしのことを気にする様子もなく、その席に座ってドリンクを飲み始めていた。
わたしがどうしたらいいのか分からず、その場で立っていると、
「光も早く座りなよ。ほら、ここ、空いてるよ?」
と、自分の太ももをポンポン、と叩きながら新菜は言った。
え?ちょ、ちょっと待って。それって、わたしが新菜の膝に座る、ってこと?え?本当に?いいの?すごい嬉しいよ。でも、わたし、新菜みたいに細くないからきっと、重いよ?って、そこじゃない。こんなたくさんの人がいるところで?もしかしたら、新菜に後ろからぎゅっ、て抱き締められちゃうんだよ?すごい、嬉しいけど、恥ずかしい!
「光ぃ、早くおいで」
わたしが悩んでいたら新菜は急かすようにそう言った。
わたしは、恐る恐る新菜に近付いて、
「失礼します」
そう言って新菜の膝に腰を下ろした。
全身で新菜を感じる。心臓がすごい、ドキドキしてる。新菜に聞かれちゃう。
新菜はきっと、わたしのことをただの友達としてしか見てない。でも、わたしは……。
そんなことを考えていたら、新菜がわたしをぎゅっ、て抱き締めてくれて……。
「彼氏じゃなくて、わたしでごめんね。でも、光に彼氏ができるまでは光はわたしのもんなんだからね」
「ねぇ、新菜は?」
「ん?」
「新菜は彼氏、とか作らないの?」
「わたしは今は光と一緒にいたいから、そういうのはいいかな。でも、光は占いの恋愛運とか気にしてるし、欲しいんでしょ?」
違う。わたしは彼氏なんか欲しくない。わたしは新菜と一緒にいられれば……。
でも、そんなことは言えずに、新菜に包まれながらわたしはドリンクを口にした。
この瞬間が永遠に続きます様に、と願いながら――――
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