第6話 恵比須餅舗の花生克林卡
夏用のスリッパが長持ちする。
暑くなったなと感じてから冬用と交換するのだが、実質使っているのは7月下旬から10月といった短期間だ。廊下を歩く時しか使わない上に、一週間の内5日は仕事で外出しているのだから、まったく傷まない。冬が長いのだから仕方がないのだが、買い替えのタイミングがわからない。今年はさすがに買い替えようかなと思い、いつもなら乾燥剤を入れて仕舞い込むのだが、まだ出したままだ。だって、来年もまた夏は短いのだ。
夏が長い場所では、こんな悩みなんてなくて、意外とすぐに傷んだりするのかもな。
ところで、夏が長いというと、台湾。
そう、本日のおやつも台湾お菓子だ。
有難いことに、友人は少量ずつたくさんの種類を送ってくれた。なんというか……わかってるな!という感じだ。本当に有難い。
今日は、先日花蓮薯という、花蓮名物をいただいた恵比須餅舗の花生克林卡というお菓子だ。
これは、初めて食べる。
調べても、一体どんな食べ物なのかわからない。
そうなると……まず食べてみなければ!
大きさは、手のひらほどの丸いものだ。だが、大きさの割に、軽い。
第一印象は、「大きなマカロン」だった。マカロンに似ている点は、他にもあった。マカロンと同じように、同じ大きさのお菓子でクリームをサンドイッチしているのだ。
逆にカロンと違うのは、その色合い。カラフルなものではなく、薄いベージュ……そう、色はまるで最中のようだった。いや、多分マカロンにもそのような色合いもあるのだろうけれど、なにせマカロンと言えばカラフルという印象がある。
とにかく、これはマカロンぽいものなのか? それとも、最中っぽいものなのか? さて、どちらだろう? そう考えながら、あむっと一口。
ん? これは……。
結果からいうと、マカロンでも最中でもなかった。
それは、ダックワーズぽいものだった。
実は、私はダックワーズが好きだ。
色々なものを好き好き言い過ぎて、逆になにが嫌いなのと言われそうだし、実際言われるが、とにかくダックワーズは大好きなのだ。
私が住んでいるのは、かなり田舎ではあるが、町の中心部に出ると、ケーキ屋さんがある。しかも、本場フランスで修業してきたという本格派だ。本格的なフランス菓子が食べられるなんて嬉しい!と思う反面、「都会の方が商売は遣り甲斐があるだろうに……」とも思ってしまう。
そのお店で、初めてダックワーズと出会った。高校生の頃だ。カリっとしてるような、ふわっとしてるような、でもそのどちらでもない軽い食感に、甘いクリームが美味しくて衝撃的だったのを覚えている。
あれから何年も経った今でも、ほんの少し寂れた感がありつつも、地元で頑張っているそのケーキ屋に行くと、必ずダックワーズを買う。それほどに、好きなものだ。
その食感がしたのだから、「うんま!」と私は思わず声に出したほどだった。
しかも、中のクリームはねっとり濃厚なピーナツクリーム。外側の軽やかなスポンジがそれを引き立てている。
ああ、美味しい。
今回、袋に貼られたシールで、発見したことがある。
日本ではピーナツのことを“落花生”と言うが、中国語では“花生”と言うのだそうだ。
同じ食べ物、一文字足りないだけの漢字。それなのに、言葉から浮かぶ印象は真逆だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます