第12話
「うおぉぉぉぉぉっ」
試合開始の合図と共に、ライモンの巨体が突進してくる。それを迎え撃つために拳を、中段に構えようとした。だが、ライモンの腕が後ろに、大きく振りかぶられたかと思うと、俺にまだ全然距離があるというのに、俺に向けて拳を、繰り出した。その瞬間!場外まで吹っ飛びそうな爆風が俺を襲い、たまらず後ろに吹っ飛ばされる。
なんて力なんだよっ!なんとか空中で姿勢を立て直し、舞台へ着地。そして、そのままの姿勢で、ドヤ顔を決め込んでいるライモンに向かって全力で走り、一瞬でその差を埋めた俺は、ライモンのふところへ潜り込み、胴のど真ん中へ、わりと本気で拳を叩き込む。今度は、ライモンが後ろへ吹っ飛んだ。
「ふんっ!どうだ!」
俺と違って、着地に失敗したライモンは、痛そうに顔を歪めながら起き上がって来た。
「ははっ‥さ‥流石!ルミア様が認めた男だ!だが、俺とて負けん!!」
流石だ‥元王様なだけある。一発じゃ仕留められないか。
ようやく骨のある敵が現れたことの嬉しさで、自然と顔がにやけてしまう。
今ので、観客達が一気に盛り上がりを見せ、さらに騒がしくなって来た所で、次は俺から先に動いた。
再び距離を一瞬で詰めた俺は、できるだけ勢いを殺さずに右脚で、力強い上段回し蹴りを顔の側面へ当てに掛かる。だが、左腕でいなされ、俺より1回りも大きい拳を顔面へ殴って来る。それを間一髪、上体を反らし倒れるように避け、そのまま左足で顎を蹴り上げながらバック転をして体勢を戻す。これには、ライモンも顎に蹴りがあたりよろめく。そして、俺はそれを逃さず顔面を右拳で殴り、立て続けに体を数発殴った後、最後に、場外へ吹っ飛ばすべく渾身の蹴りを放つ。しかし、とっさに両腕をクロスさせて防御したライモンは、吹っ飛ばされはしたものの場外にまで押し出せなかった。だが、
「これで、終わりだな。その腕じゃもう戦えないだろう。降参しろ」
ゆっくりと起き上がって来ようとするが、途中で片膝を着いてしまう。そして、両腕ともだらんとしていて恐らく、手応えからして折れているだろう。
「はぁー。痛い‥痛い。まさか、ここまで強いとは思っていなかったな‥死ぬのはまだ‥ゴメンだ。降参する」
そこで、カンカンカン!と試合終了の音が鳴り響いた。
俺はライモンの元へ歩いて行き、肩を貸してやる。
「おっと、すまん。」
「良い試合だった。楽しかったよ」
そのままゆっくりと歩いていると、ピョンッとルミアが舞台の上に上がってきて、反対側を支えてくれる。
「ちょっと頼飛!やりすぎよっ!ライモンはもうおじいさんなんだから!」
すると、ライモンは笑いだし、
「はっはっは‥まだまだ若いぞ!俺は!次こそはまた王の座を取ってやる!」
俺と、ルミアを振り払い、にっ!と歯をのぞかせる。
「それにしても、ルミア様!良い、強い男を見つけて来ましたな!将来どんな子が見られるか今から楽しみです!」
ばっ!と赤面したルミアは、
「バカ!まだまだ早すぎるわよ!!」
怪我人のライモンを場外へ蹴っ飛ばしたあと、俺の方を振り向き、
「ばーっか!!」
何故か、俺も罵倒して武舞台を降りる。そして、その意味がわからないが、俺も武舞台から降りた。
その後、救護テントにライモンを運びこみ、ルミアと2人で再び武舞台の方へ戻ってきた。その時には、既に次の第二試合が始まろうとしていた。
「この試合どっちが勝つか‥」
1人はライモンの様な屈強な体づきをした悪魔で、もう片方は、打って変わって、俺で人間の平均身長ぐらいなのに、それよりもまだ少しばかりか小さく、体も細い。対戦相手とは、2回り近く大きさが違う悪魔。力量の差が明らかだ。
自己分析をしていると、隣のルミアから。
「たぶん。あの大きい方だと思うけど、最終戦で良く見るからそれなりに強いはずよ。マントの方は初めて見るけど」
そうなのか。じゃあ大きい方が勝つなら、どんな戦い方をするのか見ておかないとな。そして、試合が音と共に始まる。
まず、大きい方の悪魔が、ドタドタと音を立てながらマントの悪魔に走って行き、大きく右拳を振り上げ、殴る。が、それをすっと、左へ氷の上を滑る様に避けたかと思うと、一瞬で相手の懐へ潜り込み、右の掌を相手の胸に当てた瞬間!胸に大穴が空き、相手の目が見開かれたままその場に崩れ落ちた。
「は?大きい方。殺られたぞ?どうなってんだ?‥てか反則だろ?」
ルミアは首を振ると。
「ううん。反則じゃないわ。とにかく武舞台の上に立ってた方が勝ちなんだから。っていうかあのマント何者?」
そして、試合終了の音が鳴り響き、マントの悪魔はちらっと、一瞬だがこっちへ目を向けた後、武舞台を降りていった。
「前の戦いで‥‥あれ?どうやって残ってたか、覚えてない。ちゃんと見ていたはずなんだが‥」
どういう理由か、マントの前の試合が全く思い出せない。考えれば考えるほど謎が深まるばかりで、答えが出てこない。そして、驚きで皆が固まっていると、でかい声が響き渡る。
「次は、僕の戦う番だぞ!さっさと片付けろ!!」
苛立った声を上げながら武舞台の上へ飛び乗る。そして、死体が片付けられた後に、ルミアも武舞台へ飛び乗った。
「絶対勝てよ!見てるからな!」
ルミアに声を掛ける。すると、笑顔で振り向き。
「あったりまえじゃない!余裕よ!」
そして、真剣な表情に戻り武舞台の中央へ歩いていく。
「これに勝ったら城に戻ってきてもらうぞ!ルミア」
それにルミアは、鼻であしらい。
「上等よ!逆に私が勝ったら、2度と私に近づかないで!」
三回目の音とともに試合が始まる。
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