第10話
また大通りを通り、一際目立つ、大きいルミアの家の中へ入り、何畳
あるんだよって感じのリビングへ通される。
「すまないな。泊めてもらって」
適当にソファに座って謝る。
「良いのよ!1人だとちょっと寂しい家だし‥そうだ!お腹減ったでしょ?ご飯
作ってあげる!」
ルミアはそう言って、エプロンを着て、肩に掛かる髪をゴムで後ろで結び、
キッチンへ行く。そして、料理を鼻歌混じりに、作り始めた。
女の子がキッチンで飯を作ってくれるのってこんなに幸せな気分になるの
かと感じながら待っていると、疲れが溜まっていたのかうとうと眠たくな
ってくる。
ちょっと寝るか‥。
どれだけ寝たのかわからないが、良い匂いに目が覚める。すると、すぐ鼻
が当たりそうな位置にルミアの顔がある。目があう。
カァーッとどんどん赤くなるルミアは、バッ!と飛び上がり、いつの間にか
料理が並べられていたテーブルの反対側に、着地。
「起こそうとしただけだから!何にもしてないよ!」
「あぁ。ごめん。寝てた」
俺はあくびをして、テーブルに並べられている豪華な料理に目を移す。
「凄いな!うまそうだ!」
「当然よ!伊達に長いこと一人暮らししてないもん!」
「そ‥そうか。じゃ、いただきます!」
食べてみると、どこか異国風のような変わった味付けだが、全然いける。
「うまい!女は皆、飯作るの上手なんだな」
「ふふん!当たり前よっ!あたしが作ったんだから!」
自信満々にドヤ顔でもっと食べろと、次々に俺の皿へ料理を盛っていく。
そんな、ルミアに気になっていた事を聞く。
「そういえば、両親はいないのか?」
すると、少ししょぼんとした顔になる。
「いるわよ。田舎の方で仲良く過ごしてるみたい。たまに、野菜とか
色々送ってくれたり、手紙くれるから。一緒に住めば良いんだけどねー。
っていうか!どうしてあんたがそんなこと聞くの!?」
少し身を乗り出し、しょんぼりしてたのが、ほんの少し頬を赤らめ、
怒るように聞いてくる。
「いやっ‥1人で暮らすにはでかい家だな。と思って」
あっそう。期待してなんかないんだから‥‥
「ん?なんか言ったか?」
顔を横に振りまた、俺の皿を山盛りにしていく。
それから、どんどん盛られていく料理を、腹が痛くなって来るくらい
までいっぱい食べ、今は、これまた広い露天風呂に浸かっていた。
「はぁー。いい湯だー‥」
疲れが一気に取れる感じがする。
ガラガラガラ‥ピシャ‥‥ぺたぺた‥ちゃ‥ぽん。
この家には俺と、ルミアの2人だけ‥つまり!
「ルミア!!何入ってきてんだよ!先に入って来いって言ったのお前だろ!?」
湯気が立ち込めていて、ぼやけているからはっきりとは見えないが、
その小さな体形は一目でルミアだとわかる。
「汗が凄いから、先に入ってって言ったけど‥どうしても我慢出来なく
て‥あっ!こっち見ないでよねー!」
まったく、何を考えているのかわからないルミアに、ため息をつくと、
俺は今日の予戦が終わり、最後の方の城から出てきたやつを思い出す。
「なぁールミア。最後に城から出てきたやつって、今の悪魔の統率者か?」
少しして、返事が返ってくる。
「はぅぅーんー。お風呂最高ー!‥えっとなんだっけ?‥‥そうそう!あれが今の
エレイン王様で、あたしが生まれて初めて負けた人!あいつにしかまだ負け
たことない!」
そうなのか。やっぱり、ルミアもルミアで負けたやつが1人しかいないって
流石、王様やってただけあるんだな。そんなルミアを、負かした相手か‥一筋
縄では行かなさそうだな。と考えていると、今度は、俺がルミアに聞かれる。
「頼飛も相当強いよねー。あたしの一撃まともに当たってもピンピンしてたし、
第1予選で弱いのばっかだったけど、あの数をほとんど1人で半分くらいやっつ
けちゃうし、なんでもっと早く武闘会に出なかったのー?」
そう聞かれても、当然人間だって事は絶対言えないし、神の力を受け継いでます。
なんて言ったら笑われるんだろうし、悩んでいると、
「まっ。どうでもいいけどー。色々あるんだろう事はあたしでもわかるし」
興味がなくなったのか、鼻歌を歌いながらごきげんで風呂を満喫している。
「声も可愛いよな‥ルミアってー」
俺が唐突にそう言うと、バシャーンと水音を立てて起き上がったらしいルミアは、
「突然!なんなのよ!もうっ!‥恥ずかしいじゃん!」
と、叫び俺に、大量の湯をぶっかけてくる
「げほっげほっ‥本音を言ったんだけど?」
俺は、咳き込みながら言う。そうしたら。
「もう知らない!」
と言って、上がって行ってしまった。
「はぁー。そろそろ俺も、上がるか」
そして、ルミアが用意してくれた服を着てリビングへ戻ると、可愛いらしい
ピンクのパジャマを着たルミアが、湯気のたった飲み物を飲みながら待っていた。
「出たわね。さっ。明日に疲れを残しちゃいけないから寝よ寝よー」
眠たそうにあくびをするルミア。
「あぁ。俺はどこで寝れば良い?このソファ借りていいか?」
「何言ってんの?そんな所じゃ疲れがとれないでしょ?仕方ないからベット貸して
あげるから一緒に寝るわよ!ベッドも広いから十分寝れるはずよ!」
一瞬俺を男と思っていないんだろうかと思いたくなってくる。
所変わってベッドの上。
「なぁ。俺、男だぞ?本当に良いのかよ?」
「しつこい!良いのよっ!どうせ何もできないでしょー。したとしても‥ぶっとばす
から良いの!」
俺に背を向けるルミアに少し怒って、意地悪をすることにした。
俺は、ルミアに覆いかぶさり、顔を近づける。
「自分のベッドに入れるって‥誘っているのか?」
猫みたいにくるっと丸まって寝ていたルミアの目がカッと見開き、右の裏拳が
俺の顔にわりとマジなほうで飛んでくる。それを俺は、手がじんじんと痛くなり
ながらも受け止め、ベッドに押さえつける。
「すっ好きにすればいいじゃん‥!あっ!でも‥やっぱり‥優しく‥して?」
火が出るんじゃないかと思わせるほど顔を真っ赤にして、目をぎゅっと瞑る。
そのまま俺は、ルミアに顔をもっと近づけて‥行く前に!可愛さに思わず本当に
襲ってしまいそうになりながらも、理性を取り戻し、ルミアのすぐ横に転がった。
「悪い悪い。ちょっとからかいたくなっただけだ。冗談だ!」
まだ、目を瞑ってるルミアの頭をを撫でて、自分からした事だがなだめる。
すると、ルミアは、
「バカバカ!バーカ!!」
そう言ってまた俺に背を向ける。それから少しすると、寝息を立てて寝始めた。
もう寝たのか?早いな!
俺も眠気が限界まで来て、眠った。
朝、鳥か何かのチュンチュンと鳴いているのが聴こえる。朝日が窓から
差し込み、俺は目をしょぼしょぼさせながら起きようと、体を起こそうとするが、
思い何かが乗っていて、起き上がれない。
「なんだ?って‥ルミア!?」
なぜ重かったかというと、俺を抱き枕の様に抱きついてルミアが気持ちよさそ
うにすーすー寝ていたのだ。
大の大人が4、5人ほど寝ても余裕があるベッドの上で俺にくっついてるって
どれだけこいつは寝相が悪いんだ!俺は仕方なく、ルミアを揺らし、起こそうと
するが、むにゃむにゃと言うだけで、逆に締め付けてくる。
痛い!女の子なだけに、所々がもちもちしていて柔らかいのだが、これでも悪魔
流石に力を入れられると、痛い。
「ル‥ミア!早く起きてくれ!つ‥潰れる」
限界まで来た時に、ルミアがやっと目覚めてくれ、そのまま俺を数秒眺める。
「お‥おはよう」
「おはよー。ん?」
ようやくルミアはどうゆう状況か把握したらしく‥‥
「なっ!まさか!頼飛!本当にしたの!?あたしが寝てる間に!?信じられない!初めて
だったのにー!!」
と言って、思いっきり誤解したまま俺をまた締め付けてくる。
「ち‥ちがう!誤解だ!お前が俺に‥‥」
そこで、俺の意識が飛んだ。
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