第9話
ルミアと2人で、手を繋いで人混みに揉まれながら数十分、そろそろ悪魔たちの大きさも見慣れて来た頃やっと会場に着いた。
「ここか?」
「そう!ここが予選会場!」
そこは、俺が思っていた。ザ・コロシアム的な円形状の闘技場ではなく、奥に城があり、その前に凄く広い荒地が広がっていた。
「これだけ広かったらどれだけ暴れても大丈夫そうだな」
まぁね。と返しながら、ルミアはすぐ近くのテントを指差し、
「受付行かなきゃ!忘れてた!」
俺を引っ張って走り出す。
テントに着き、いかにも強そうな、いかついおっさんがいた。そして、そこへルミアが近づいて行った途端に、そのおっさんは目つきを一変させて、媚を売る様な顔つきになった。
「これはこれは!ルミア様ご無沙汰しております!」
「久しぶりー!相変わらず元気そうじゃないの!あっ!今回も出るから宜しくねー」
「はい!了解です!期待してますよー!」
ルミア様!?どういうこと直接本人に聞いてみる。
「なぁ。ルミア!様って?どういう事だよ?」
ルミアが答えるよりも先に、目の前のおっさんが机に乗り出した。
「おまえ、何いってんだ?まさかルミア様を知らないで一緒にいてやがるのか?
手まで繋いで?とんだ世間知らずもいたもんだなぁ」
手をずっと繋ぎっぱなしだった事に、今更気づいたルミアは慌てて手を離す。
「ちがっ!はぐれると悪いから!繋いでただけ!」
顔を真っ赤にして喚くルミア。
「あっそうだ!俺も、参加したいんで宜しくお願いします」
「お前もか!?大丈夫かぁ?死んでもしらねぇぞ?」
それはもうわかりきっている事だ。だが、俺は死なない!
「覚悟の上だ」
ほー。と感心したという声をもらした。
「良い目してるじゃねぇか!よしっ!良いだろう。がんばれよ!」
そう言って、おっさんは1枚のシールをくれる。
「一応説明しといてやるとだな。そのシールを服でも何でも良いから、
貼っておけ!それを奪われずに100人の中に入っていたら、第2予選へ進める。
それでその第2予選でも勝ち抜ければいよいよ本戦だ!わかったか?簡単だろ?」
俺は頷いて、
「あぁ。楽勝だな」
と、笑って見せた。
「よしっ!それならあと1時間もすれば予選が始まるから。準備してろ」
俺とおっさんが話している中隣でずっと何か喚いていたルミアを今度は
俺が引っ張って連れていく。
そんなことよりも、さっき聞きそびれてしまったことを聞いてみる。
「なぁ?ルミア?なんで様づけだったんだ?」
簡単な事よっ!と胸を張り。
「1000年ほど前までは、私が王様だったからよ!‥500年ほどしか続けれなか
ったけど‥負けちゃったから‥」
「1000年って!お前何歳だよっ!?」
「え?1857歳だけど?」
悟士さんよりも年上だと!?こんなちっちゃいのに?見た目はどう考えても15
歳ぐらいだろ?しかも王様って!?こんなちっちゃいのに?
俺は絶句していると、心を読まれたのか、
「どうせこんなに小さいのに‥とか思ってんでしょ!!」
ぶんぶんぶんっと首を横に降る俺。
それから、1時間はあっという間に過ぎ、いよいよ予選が始まる。
「じゃあ、ここからは敵同士だからね!第2予選で会おうねー!」
そう言って、ルミアは向こうの方へ歩いていった。
よしっ!やってやる!意気込み、シールを上に着ているタンクトップの胸辺りに貼る。
周りを見渡すと、1000人以上の参加者がいるのにそれでも、まだまだ空きがある会場。そこで、一つ気になる点を見つける。
なぜだか知らないが、さっきも言った様にまだまだスペースがあるにも関わらず、俺の周りにばかり悪魔が集まって来ている。囲む様に。
そこで俺は、すぐ近くにいた悪魔に話しかけた。
「なぁなぁ?なんで俺の周りにいっぱいいるんだと思う?もっと場所あるだろ?」
その悪魔はかすれ気味の声で、
「えっ?それは‥‥」
と、答える前に始まりのゴング鳴り響く。すると、突然周りを囲んでいた20人程度の悪魔が、一斉に俺の方を振り返り、一斉に叫びながら突撃してくる!
「お前が1番弱そうだからだよ!!」
なるほど!さっきの答えが返ってきて納得すると、俺は下段に腰を落として構え、悪魔達をぎりぎりまで引きつける。
「弱くなくて悪かったな!!」
言葉と共に、躍動をつけて上段回し蹴りを前の悪魔達数人に当て、吹っ飛ばしたかと思うと、すぐ後ろまで近づいて来ていたのをまた同じ様に吹っ飛ばす。さらに、下に転がっていた悪魔の両足を掴み、勢いをつけて前へ放り投げると、そこらへんにいっぱいいた悪魔を吹っ飛ばしながら飛んでいく。
いやー。気持ちいいな!清々しい気分になりながらスイッチが入った俺は、近くに居る悪魔を次々に、殴ったり蹴ったり、時には投げたりしながらどんどん進んで行く。そうこうしているうちに、いつの間にか周りには倒れている悪魔だけしかいなかった。そして、終了の鐘が鳴り響いた。
「おーいっ!頼飛ー!」
振り返ると、ルミアが手を振りながら走って近付いてくる。
「頼飛やっぱりやるじゃん!頼飛がほとんどぶっ飛ばしてくれたおかげで私も楽できたし!」
「もう終わりなのか?悪魔ってのも大したことないな‥」
「あんたが強すたなだけよっ!」
話していると、受付のおっさんが近づいてきた。
「やるじゃねぇか!お前!見直したぜ!流石!ルミア様が連れてきた男だ!」
わははと大きな声で笑うおっさん。
「第2予選と本戦は明日やるからしっかり寝とけよー!」
そう言って離れていったおっさん。
日は、もうだいぶ傾いていて暗くなってきていて、闘技場から皆帰っていく中急に歓声が聞こえてきた。城の方から誰かがこっちを見ているようで、そいつは誰かに話し掛けるようにこう言った。
「僕の座をまた全力で奪いに来い!!」
一言いうと、マントをひるがえして、また城の奥へ帰っていった。
すると、ルミアは、一言。
「もちろん!絶対潰してやる」
城の方を少しの間睨んでいたルミアは、その後俺の方を向き、
「よしっ!それじゃあ帰ろっか!どうせ寝るとこもないんでしょ?仕方ないから
今日だけ泊めてあげる!」
何事も無かったように歩いていくルミアの後をついて行った。
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