第8話
深い森の中、俺はさまよっていた。
「どこだよ‥ここ‥」
時間は数時間前に戻る。
1日休み。とうとう行く前に、皆で一つの部屋に集まっていた。
「なんで俺はついて行っちゃダメなんですか!?」
代智が悟士さんに反抗して、困らせていた。
「はぁ。だからね?危ないんだよ。頼飛君は遊びに行くんじゃないんだ。何が
起こるかわからないし、下手をすれば死んでしまうかもしれない。だから君を
行かせるわけにはいかない!大人しく留守番をして、頼飛君の帰りを待つんだ」
それでも、まだ何か言いたげな目をしている。俺の方を振り返り、
「頼飛‥!俺は少しでも、お前の役に立ちたいんだよ。」
頼んでくる代智に、俺は少しキツめに言った。
「代智。すまない。正直に言って、今のお前は邪魔にしかならない。ここで待って
いてくれ」
そうすると、代智は何も言わずどこか寂しそうに部屋を出ていった。空気が重た
くなった中、気持ちを切り替えようと悟士さんは、これからの事を話始めた。
「さてっと、もう少ししたら頼飛君は、悪魔の領域のすぐ近くに移動してもらう。
そこからは1人でその先へ進んでもらいたい。そして!これが!頼飛君に着てもらう
最先端装備だ!」
奥の方から礼偉が、10cmくらいの2本の角と、暗い紫色の細長い尻尾を持ってきた。
これが‥最先端装備‥絶対嘘だ!
「流石にこれじゃバレるでしょう!!冗談も大概にしてくださいよ!!」
悟士さんは、礼偉からそれらを受け取る。
「大丈夫だよ!凄いんだよ!これ!尻尾は自分の意思で動くし、角には頼飛君が見たり聞
いたりした事を記憶する能力と、既にこちらで手に入れている情報を入れているから
角を付けるだけで!それを見る事ができるんだ!!それに、人間の手でしか取れない様に
なっているから外れる心配もない!凄いだろ!?」
どやっ!と自信満々に言ってくる悟士さんはそれにと続ける。
「頼飛君は強い!!悪魔は力が全てを決めているからね。力ある者には逆らえないさ」
「まぁバレないなら何でもいいですけど‥」
渡されるそれを、今は信じるしかないかと無理やり納得させた。
「さて、もう時間だ。そろそろ行こうか」
「はい!」
「着いたよ!」
「え?」
横から礼偉が説明してくれる。
「この部屋自体が、瞬間移動できる装置になってるんだよ。だからドアを開けてご
らんよ」
ドアを開けろというから、俺はドアを開けた。そうしたらそこは、廊下ではなく
すぐ目の前には深い森が広がっていた。
「本当だ‥!やっぱりあると便利なものだな‥」
感心しながら森を見回す。
この森を歩いて‥行くのか‥たどり着くまでに死ななきゃ良いけど‥
「本当に‥行くん‥だよね?」
天世が隣まで歩いてくる。心配そうにしている天世の頭を撫でてやる。
「心配しなくてもいいぞ。すぐ帰ってくる。天世も待っていてくれ」
そして、見つめ合う。
コホンッとわざとらしく悟士さんが咳をして、天世は恥ずかしくなったのか慌て
て目を離す。
「じゃあ。頼飛君!この森を真っ直ぐに進めば、今の悪魔を統べている悪魔の城下町
に着くはずだ。頼んだよ!」
俺は、深呼吸をして、
「いってきます!!」
と、一言だけ言い。森へと足を踏み入れた。
そして、今に至るわけだ!
真っ直ぐって言っていたから真っ直ぐ進んでいるつもりなんだが、一向に森が開け
る気配がない。さらに、空は赤黒い色をしていて辺りは若干暗いし、
入っていきなり途方に暮れる俺は、もうそこら辺の邪魔なだけの木をぶっ倒しなが
ら進もうかと本気で考えて、木を強めに揺すってみる。その途端に、木の上からか、
何かドンッ!と音を立てて落ちてきた。
「いったぁーい!!‥ちょっと急に揺するなんてひどい!!」
そこには、褐色の肌、頭にはちょこんと生えている小さな角に、くりっとした目が
印象的な、背丈が俺の半分くらいしかない、可愛い小さな少女の悪魔がいた。
「えっと‥ごめん?」
とりあえず俺が悪いみたいにだから謝るが、なぜ木の上なんかに居たのか聞いてみる。
「でも、なんで木の上なんかに?」
すると、悪魔は答えた。
「寝てたの!ここって静かで気持ちいいから!」
こんないつ何が出てきてもおかしくない所でよく寝れるなと思う。それから、悪魔は
起き上がり、ふてくされてどこかへ歩いて行こうとする。そこで、俺は慌てて呼びと
めた。
「あっ!待ってくれ!」
悪魔は振り返りながらじろっと俺を睨む。
「何?」
「いや‥その‥街まで連れてってくれないか?道に迷った」
予想外の答えが返ってきたのか数秒固まりその後笑われた。
「あははははっ!おっかしい!面白いねあんた。馬鹿じゃないの?だってほらっ!」
馬鹿だと言われたがまぁ仕方ないだろう。自分の領地で迷子になる方が珍しいのだか
ら。そして、悪魔が指さした方向を見てみると。すぐ近くに、見上げるほど大き
な壁があった。
「あれ?さっきまであんなのあったっけ?」
またツボったのか悪魔は一息笑うと、手招きしてくれる。
「あんた本当に変だよね!?最初からあったでしょ?下ばっか見ながら歩いてたんじゃないの?
連れてってあげるから早く行くよ」
そんなことは無いんだけどなぁとあまりの大きさに驚いて固まっていると、悪魔は
痺れを切らし、またムッとした顔でスタスタと歩いて来て、腕を掴まれたと思った
瞬間には、いとも簡単に引っ張られそのまま悪魔にぶつかりそうになる。
「キャーー!こっち来んな!」
「なんて理不尽なー!?」
声にならない声を出し、ぶつかるっ!と思ったがそれよりも先に、悪魔のビンタが左
から飛んできたかと思うと、左頬にクリーンヒットし、木を何本もなぎ倒しながら
吹っ飛んだ。
痛い‥悪魔ってのはビンタでこの威力なのか‥というか確実に、この間のでかい悪魔より
遥かに強く重たい一撃だった。この先本当にやっていけるのか不安になりながらも、ここ
まで吹っ飛ばされても体に傷がつかない俺も普通ではなかった。
「ごめーん!やりすぎた!死んじゃったかな‥?」
「簡単に殺られてたまるかよ」
傷一つ無く普通に起き上がった俺を見て、おぉっ!と声をもらした。
「凄いじゃん!あれで絶対死んだと思ったのに!あんた結構やるじゃん!」
「めっちゃ痛かったけどな‥!」
「だからごめんって謝ったじゃん!早く行くよー!置いてくぞー!」
今度はどこかウキウキした感じで前を歩いて行く悪魔に歩いてついて行くこと
数分で、壁の前に着いた。
「着いたー!さてと、ここのボタンを押してっと‥」
悪魔はつぶやきながらボタンを押したかと思うと、ガラガラガラと人が通れる程度の
穴が開く。
「えっ?門までは行かないのか?」
悪魔は頷き、
「うん。だって今日は武闘会の予選日だから人多いんだよね。あたし埋もれるの嫌い
だし」
小さいもんな‥とは声に出さず、穴の中へ俺も入っていく。
その中は、塀で囲まれていて、下には、芝生が広がっている。そして、奥の方には家
の勝手口があった。
「ここあたしの家ね!」
「お前‥なんでこんな広くて良い庭があるのに、森で寝てたんだ?」
そこで、悪魔はため息をついて、
「だーかーらー!武闘会があるからその祭りの音がうるさいから森に行ってたの!それから、
あたしの名前はルミアっていうの。覚えておいてね」
そういえばそんなことを言ってたな。うるさくて眠れないって思い出しながら俺も名乗る。
「俺は、頼飛だ。道案内ありがとうな」
「ラ、イ、ト?わかった!覚えといてあげる!」
ニコッと太陽の様に眩しい笑顔。可愛いな。
思わず頭を撫でてしまった。
「頼飛。どういうつもり?」
「あっ!いや‥つい」
むっとしているが、頬は赤く染まり恥ずかしさも混じっているようでそれがまた可愛
いく見えて仕方がない。
そういえば!と絶対聞かないといけないことを思い出し尋ねる。
「その武闘会の予選会場ってどこにあるんだ?俺、それに出ないと行けないんだ。その
ためにここまで来たわけだからな」
ルミアは、驚いた顔をして、
「えっ?頼飛も出るの!?あたしも出るから丁度良いし、一緒に行こ?」
「そうなのか?あぁ。頼む」
「うん!」
それから、ルミアの家から出ると、すぐそこには大通りがあって、ほとんどが2m超の
身長で、中には家とほぼ同じぐらいの奴らが、道を埋め尽くしている。
「凄いな!この数!」
確かにがやがやと騒がしいしく、少し大きめの声で話しかける。
「当たり前よ!!次の王様が決まる大事な祭典なんだから!」
この人混みじゃはぐれそうだな。俺は、横に立っているルミアの手を握る。
「はぐれると悪いから!手!握っとくぞ!」
「あっ!うん!」
ルミアは、顔を下に俺から見えない様に隠した。
「じゃっじゃあ!行くよ!」
「あぁ。よろしく頼む」
そして、会場へと向かった。
それにしても‥‥確か悟士さん、この角に情報が入ってるって言ってたけど‥何にもわか
らなかったな‥‥。絶対!入れ忘れてやがる!帰ったらただじゃおかない!!
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