第7話
ベットの上で目が覚めた俺は、知らない場所にいた。そこは、病院の様に
白一色で統一されており、俺が寝ているベット以外何もなかった。
「あれ?なんで俺、こんな場所に?」
あの後、気を失ってしまったのか、悪魔を倒したあとから記憶がない。丁度
その時、ドアがノックされ、礼偉が入ってきた。
「やぁ。頼飛君。おはよう。よく寝たねー。まる2日寝っぱなしだったんだから」
「えっ!そんなに寝てたのか?」
どうりで肩が重たいわけだ。
「うん。そうだよ。まぁ不完全とはいえ、神の力を使ったんだから
仕方ないけどね」
「神の力?」
「うん!神の力。これからその事について人間の中で1番偉い人に教えて
もらいに行くよ」
「わかった」
俺はベットから降り、礼偉について行く手前、大事な事を思い出し、尋ねた。
「そうだ!礼偉!代智は!?無事なのか!?」
礼偉は1回立ち止まり、しゅんっとした顔で振り返り、
「何‥言ってるんだい?代智君は‥‥すっごくピンピンしながら!この、大統領府
の中を走り回ってるよ!」
焦った!死んだとか言われたらどうしようかと、最初の演技に騙されかけた。
「後で、夕飯の時に会えるよ!」
してやったりと、はははと、笑いながら前を歩いて行く。っていうかすらっ
と礼偉が大統領府って言ってたが、凄い所に居たのかとびっくりするととも
に、代智も代智で、世界のトップの家の中を走り回るってどれだけ神経太いん
だよと思いながら礼偉の後についていった。
赤い絨毯が敷き詰められた長い廊下を歩き、たどり着いたエレベーターの中
の中に入り、500と付いた数字を礼偉は押した‥
「500!?500階ってなんだよ!」
「まぁこの間まで一般人だったもんね。頼飛君は。凄いんだよー!実は‥もうすでに
空飛ぶ車とか、瞬間移動出来る装置とかもあるんだからね!」
「まじかよ!?」
そこまで技術が進化していたなんて知らなかった。そして、なぜそれが、一般人
には公開されていないか問いかける。
「そんな良いものあるのに、なんで一般人は知らないんだ?」
簡単な事だよと、礼偉が答える。
「何でもかんでも便利にしすぎると、人は、動く必要がなくても良い様になるん
だよ。そうしたら、太ってしまう人は急増するかもしれないし、テレビなんかで
やってる事も全部、人工知能を持ったロボットがするだろうね。そんな
世界なんて面白くないじゃないか。だから言わないようにしてるのさ」
「なるほどな」
そんなことを聞いていると、ポンッと機械音がなり、ものの1分足らずで、目的地
の500階に着いた。
早すぎだろっ‥
「よしっ。僕はここまでしか行けないから、下で待ってるよ。あっそういえば、天世
さんもいるからね」
「えっ?そうなのか?」
「うん。頼飛君の看病をしてくれたのは、天世さんだからね」
そう言うと、エレベーターの扉が開くと、廊下とかはなく100人ぐらいは余裕で
入れるほど広い部屋に直接繋がっていた。そして、礼偉は、手を振りながら再び
エレベーターの扉を閉めて降りて行った。
「待っていたよ。頼飛君。久しいね」
広い部屋の奥にある書類が山積みになって、顔が見えないが若い男の声が聞こえ
てくる。そして、少ししてその奥から、人間の世界を治めているらしい大統領で
ある。
「久しぶり?ですか?俺は、テレビで見た事はあっても、直接あったことはないと思
うんですが?」
大統領はデスクの前にあった。接客用のソファに腰掛け、その反対側を指差した。
「まぁ。座りなよ。そうだね。そういえば会ったのはもうずいぶん前だったかな?
君が‥5歳か6歳ぐらいだったかな?最近物忘れが酷くてね」
俺も、指されたソファに座る。
「そんなに前なら流石に、俺も覚えてないですね。それに、大統領さんって確かまだ‥
36歳ぐらいでしたよね?」
俺の質問に、
「そうか!頼飛君は、私の本当の年齢を知らなかったんだったね!若いのは見た目だけで
ね。歳をとらない様に色々身体をいじってるんだよ。だから実際の私の年齢は‥‥何歳
だったかな?1000歳は軽く越していると思うんだけど‥忘れてしまったよ。」
「えっ!?」
1000歳!?そんなことが有り得るのか?驚く俺を、笑いながら見ている大統領はそれから、
「後、私の事は、悟士とでも読んで貰えたらいいよ。頼飛君のお爺さんにもそう呼ばれ
ていたからね」
「えっ!?悟士‥さん!じいちゃんの事知ってるんですか!?」
「もちろんだよ!君のお爺さんには良くお世話になったからね。私の1番の親友だった人
だよ」
「そうなんですか!?」
まさかじいちゃんが大統領と友達だったなんて、この日1番の驚きだな。
「うん。あの頃は楽しかったよ‥」
思い出に浸っている。悟士さんは、少しすると、手を叩き、
「さて、思い出に浸るのは後にして、本題に入ろうか」
少し前のめりになり話し出す。
「そうだね。何から話そうか。とりあえず、世界が神様によって3つに別れていた。
というのは知っているかな?おじいさんに聞いているかい?」
俺は、恐らくじいちゃんの昔話のことだろうと思い、頷く。
「はい。じいちゃんの昔話で‥話していたことですかね?」
「なるほど。そういうふうに聞いているんだね。ある程度は教えているのか」
少し悩む素振りをしてから、単刀直入に切り出した 。
「実は‥世界がまた一つに戻ってしまったんだよ」
「知ってます」
「えっ!?知ってるの!?」
悟士さんは驚いているが実は、悪魔との戦闘の時に、聞こえてきた声が
そう言っていたからな。あれが誰だったのかまではわからないが。
「そうかー。それなら話は早いね。世界が一つになった事で、恐らくまた、
『人間』『悪魔』そして、『天使』の三つ巴の戦争が起こってしまうと思
うんだ。神の座につくためにね。今の所は急いでそれぞれの境界線にシール
ドを張っているから、この間みたいに急に、低級悪魔が入ってくる事は、も
うないとは思う。でも、絶対ではないから常に警戒はしているよ」
「そうなんですか」
俺が頷くと話を進める。
「というわけで、とりあえず!頼飛君には悪魔を制圧してきてほしいんだよ!」
「え!?」
俺の聞き間違えか。とんでもないことを言い始めた。
「簡単に言ったら悪魔の頭領をぶっ潰して、言いなりにしてきてほしいんだよ。
頼飛君!!」
聞き間違えじゃなかった!
「ちょっと、待ってくださいよ!そんなことできる訳がない!」
それでも、悟士さんは話を続ける。
「いや、頼飛君ならできるよ」
「その根拠は?」
「君には、神様から受け継いだ万能で、最強の力がある。その気になれば、頼飛君
独りで、全て滅ぼせれる。絶対に!頼む。我々の平和のために」
なぜ俺がそんな事をやらなければならない!神の力を手に入れてしまったがためか、
冗談じゃない!
「俺、やらないですよ。そんな事」
だが、と悟士さんは言う。
「頼飛君がやらなければ多くの犠牲が出ることになるよ。シールドを解かないといけ
なくなる。そうなれば悪魔や、天使も攻めて来るだろ。そうなれば、頼飛君の友達も
死んでしまうかもしれない」
その言葉を聞き、俺は怒りを覚え、悟士さんを睨む。その途端、ゴゴゴゴと地鳴りの
様な音と、足元が揺れる。
「冗談でも、そんなことを言うな」
額に脂汗を浮かべる悟士さんは、
「すまなかった。冗談が過ぎたようだ。収めてくれ」
はっと、俺は我に帰り謝る。
「すみませんでした。」
揺れが収まり、ふぅーと悟士さんは、一息つく。
「どうかな?やってはくれないか?」
恐らく俺は、断れない。この状況からして、考えすぎかもしれないが、ここには代智
と礼偉そして、天世もいる。断ったら殺されるかもしれない。1人2人の命より、大勢
の命の方が重たいわけだ。つまり。やれ!やらなきゃお前の大事な人を殺す。と言ってい
るんだよな。
「最初から‥俺に拒否権なんてないんですね」
すまないね。というふうに苦笑いを悟士さんは浮かべる。
「わかりましたよ!なんでもやります!」
「よしっ!そうと決まれば、まずは、悪魔達を倒してきて欲しい」
半ば投げやりになりながら、
「どうやってですか?正面からぶっ飛ばして行けば良いんですか?」
と、聞くと、悟士さんは、首を横に振り。
「いや。この間の君が殺した悪魔から仕入れた情報なんだがが『武闘会』明後日開く
らしいんだよ。頭領を決めるためにね。本当は、10年に1回らしいんだが、今回は、
世界が一つになったからとかでね。それに、出て欲しいんだ」
死んだものからでも記憶を読み取れるのか。凄いな。なるほどと頷き、でも、と俺は
尋ねる。
「俺、人間ですよね?悪魔にバレるんじゃ?」
すると、自信満々にドヤ顔で悟士さんは言う。
「それなら大丈夫だよ!私らの技術を舐めてもらっては、困るねー。頼飛君には、悪魔の
格好をして貰って、出てもらう」
「あっはい」
「それにね。頼飛君。君は、まだ神の力を1割程度しか、引き出せていないんだ。だから
それも含めて、力を100%引き出せれるように、なるためにも丁度良いんだよ。」
「え?これでもまだ、1割なんですか?」
「あぁ。100%引き出せているなら。今頃、私達は頼飛君を、崇めているよ」
どれだけ強いんだよ神の力ってのは‥!俺はもう人間じゃないなと、落胆した。
よしっ!と悟士さんは腕時計で時間を確認しながら立ち上がった。
「もう19時だ!話は、ここまでかな?用意は明日やれば良いから夕飯にしよう。礼偉が
準備してくれているよ。他に聞きたいことはあるかな?」
礼偉が?あいつ何やってるんだ?
「大丈夫です。ありません」
「じゃあ。下に、降りようか」
「はい」
それから、エレベーターにまた乗り込み、100階のボタンを押したかと思うと、すぐに
着いた。
扉が開くとそこには、凄く長い縦長のテーブルの上に、色々な料理が置いてあった。
そして、既に料理を食べている客が1名。
「なんだ!元気そうじゃねぇか。よく寝れたかぁ。頼飛も早く食えよー。礼偉の料理
上手いぞー」
そこには、何事もなかったかのようにむしゃむしゃと食べている代智がいた。
「お前こそ‥良かった」
それを見て一安心した俺も、腹が減ってきた。すると、横から。
「頼飛君‥」
ちょっと心配そうな顔をしながら天世が近づいてきた。
「ごめんな。迷惑かけたみたいにで。ありがとう」
俺は頭を撫でてなだめる。
「ううん。無事で良かった」
心底嬉しそうに、涙目で笑う。
やばい‥!可愛いな。小動物を見ているような感じだ。抱きしめたら怒られるだろうか?
そんなことを考えていると、悟士さんが、
「よーし。さぁ。頼飛君も早く座っていっぱい食べなさい!」
と、笑いながら俺を押して、代智と反対側の椅子に座らされ、その隣に天世も座った。
「残念だったねー。頼飛君。あと少しで抱きしめて、ちゅっちゅできたのに」
そんなことを横から礼偉が耳打ちしてくる。
「うるさいぞ。別にするつもりもなかったし‥」
はははと笑いながら肩を叩いて、礼偉は代智の方へ座る。
そして、1番奥の方に悟士さんは座り、ワインか?お酒を持ち上げ。
「我々の平和のために!乾杯!!」
それぞれ乾杯をして、夕飯を食べ始めた。いつの間にか俺も笑っていた。
つい最近まではこれが普通だったのだろうが、これからは違う。こんなふうに笑って
飯を食べられる日が早く来るよう、俺は、戦うことを自分の意思で、決意した。
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