第5話

 教室へ入ると、いかにも体育会系です!と言わんばかりの、爽やかな

奴で、小学校からの幼なじみで親友でもある。魔翔代智ましょうだいちが、

奥の方から真っ先に声を掛けてきた。

「おー!頼飛ー。おはよう!相変わらず重役出勤だな。おいっ」

「朝は苦手なんだよ‥おはよう」

 そこで、おっ!?と何かに気付き近寄ってくる。

「誰だ?その可愛い娘?彼女か?」

 代智が俺にそう聞いた途端に、クラスの女子が一斉にバッ!と聞こえそうな

ほど速く、俺の方を振り向いた。えっ!何これ?びっくりした!

「いやいや。違う。彼女なんていない。天世だよ!クラスメイト

だろ?何言ってんだ」

 と、俺が彼女がいない事をと言うと、女子達は、再びそれぞれに話

始めた。

「うっそ!天世?ってあの暗い子だろ?え?だってこんな可愛かったか?」

 代智は、頭に??を浮かべながらジロジロと見ると、流石に天世は、

代智から逃げるように、俺をしてんに回り込んで、そのまま小走りで

自分の席へ戻っていった。

「代智君、女の子を怖がらせちゃダメじゃないか!」

 そう言って、俺の横から来たのが、高校に入り、ずっと3年間

一緒のクラスメイトで親友である。斉藤礼偉さいとうれいである。

こいつは一言で言うと、ホストとかに居そうな、大人の色気があり、

イケメンだ。

「ちょっと見てただけじゃんかよー!」

 代智は不満そうに口を尖らせる。そこで、2時間目のチャイムがなった。

「あっ!なぁ礼偉!2時間目の授業ってなんだ?」

「数学だよ。」

 数学か。教科書、学校に置いてたかな?思い出しながら自分のロッカーから

教科書を探すが、やはり、家に持って帰っていた。仕方なく自分の席に

着いて、隣の席の女子に見せて貰う事にして、机を寄せながら、

「悪い!教科書見せてくれないか?家に、忘れて来たみたいで」

「うっうん!良いよ!見てみて!」

「ありがとう」

 その娘は、少し顔を赤らめながらも、椅子も少し俺よりに寄せてくる。

そして、先生が入って来て授業が始まった。数学は、もう全て自分で

勉強をして、終わっているため、俺にとっては復習みたいなものだから、

眠くてしょうがない。うとうとしていると、そういえばと思い出し、

机の中を探ると、2つ折りになった紙が出てきた。それを広げ内容を見ると、

天世から、今日の昼休憩に話があるから、授業が終わったらすぐ

屋上に来て欲しい。との事だった。

了解っ‥と、つぶやき、手紙をポケットの中に突っ込んだ。

 そこから時間が過ぎ、3時間目、4時間目が終わり、昼休憩がやってきた。

俺の所に、礼偉と代智が近寄ってきて、

「頼飛ー!食堂行こうぜー!腹減ったー」

「混むからね。早く行かないと座るとこなくなっちゃうよ」

 昼飯に誘ってくれたのだが俺は約束があるので、

「ごめん!この後用事があるから、今日はやめとく」

 そう断ると、代智が、

「ちぇっ。ノリわりいなぁ。礼偉、行こうぜー」

 もう1度2人に謝ってから、教室を出て、階段を上がり、屋上のドアを開けると、

清々しい風が吹いていて、天世が既に待っていた。

「待ったか?」

 天世顔を横に振り、

「ううん。私も、今来たところだから」

 俺はそこで本題に入ろうと、喋りだそうとする前に、天世が、

「これっ!お弁当なんだけど!一緒に食べてください!」

 手に持っていた手提げ鞄を前に突き出した。

「うん。いいよ。丁度昼飯どうしようか考えてた所だったんだ」

 はにかむ様に笑い、天世は床に座る。その横に並んで俺も座った。

「話があるって昼飯くれるってことだったのか?」

 天世は弁当を広げながら、

「うっうん!食べて欲しくて‥」

 広げてくれた弁当は、色とりどりで食欲がそそられるほど

美味しそうで、量も多く作られていた。

「おぉ。凄いな!何から食べようか迷うな!じゃあ、からあげから

食べるか‥‥うん!うまい!料理できるんだな!」

 1口食べてから箸が止まらなくなり、次々に、口へ放り込む。

「ゆっくり食べてね。お茶もあるから」

 コップにお茶を入れたのをくれる。それを飲み干し、一息ついて、

一気に食べ終わった。

「ふぅー。ご馳走様でした。美味かったなぁ。ありがとう!」

「お粗末さまです。こちらこそ美味しく食べてくれて‥ありがとう」

 前髪を髪留めで横に留めていて、笑顔がはっきり見える。

「やっぱり、そっちの方が可愛いよ。」

「う‥うん。頼飛君がそういうなら‥」

 弁当を食べ終わった俺は、なんだか眠たくなってきて少し

横になる事にした。

「ごめん‥眠いからちょっと寝るわー」

「あっうん!チャイム鳴ったら起こすね?」

「頼む‥」

「おやすみなさい‥‥神‥様」

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