第4話
生徒会室は、教室のある棟の4階の1番端にあり、そこへ
着き、天世が着替え終わるのをドアの前で俺は、待っていた。
「もう。入って来ても良いわよー」
仲野会長が中へ入るよう、ドアを開けてくれたからそれに従い
中へ入ると、中央には長机があり、その奥に大きいデスクが
1つあって、周りに資料棚があるだけで、シンプルな部屋だった。
そして、その長机の左側の椅子に、天世と仲野会長が並んで座っていた
からその向かい側へ俺も座った。
「はい。どうぞ。本当にお茶しかないんだけど、我慢してね」
「‥うまいな!このお茶‥」
思わず、口に出してしまうほど渋くなく、美味しかった。それを
聞いた仲野会長は微笑みとドヤッと顔に出ていた。
「当然よっ!私が淹れたお茶なんだから。それはそうと、どうして
天世さんは、水をかけられたの?」
仲野会長が天世にそう尋ねると、天世はさっき、俺を助けてくれた
ような大きな声ではなく、小さな向かい側の俺にぎりぎり届く
ような声でチラチラ俺を見ながら話し始めた。
「えっと‥その‥私がルールを破って‥頼飛君に手紙を書いて、
机の中に入れたから‥」
それを聞いた仲野会長は、
「え?ルール?それだけ?」
そう聞くと、天世は頷いた。そこで俺が気になっていた
そのルールを聞いてみた。
「で?その俺に手紙を渡しちゃいけないってルールってなんなんだ?」
その答えにまたしても俺は、驚くことになった。
「その‥頼飛君の‥ファン‥クラブの‥ルール‥で」
「ファンクラブ!?俺の!?」
なんだそれ、そんなものが出来ていたなんて今まで1度も
聞いたことがなかった。それを聞いた仲野会長は、
「ファンクラブ‥ねぇー‥ってことは、君っ!全然関係なく
ないじゃない!何が無関係よ!」
と、俺をキッと睨んでくる。怖っ!なんでそんなに怒って
るんですか!今にも飛びかかって来そうな仲野会長に対して、
少し後ろに下がり、距離を取る。
「まったく‥はぁ。ファンクラブなんてものがあるなんてちゃんと
把握していなかった私も悪いけど、君も!自分の事に関すること
ぐらい知っておきなさい!」
そう怒られる俺は、知っている。実は、仲野会長にも男子の間で
秘密裏にファンクラブが存在しているらしい事を!だが、それを明確に言って
しまうと、また拳が飛んできそうな気がしたから辞めておく!
でも、少しムカついたから、やっぱり少し耳に入る程度に言うことにした。
「あっはい!すみませんでした。まぁでも、仲野会長も自分の周りの
事をもう少し調べた方が良いと思うけどなぁ‥」
「何よ!それ!どういう意味かしら?」
「さぁー。どういうことなんだろな?」
そこで、話が元に戻り、
「天世さん。もうそんなファンクラブなんて抜けなさいよ!
次がないように、私も努力するけど。今度はなにされるかわからない
じゃない。わかった?」
仲野会長に対して天世は小さく頷いて、
「わかりました。自分で頑張ります」
なぜか、後半部分は俺を見ながらそういった。
それで、仲野会長は続ける。
「君も!そのファンクラブを解散させとくように!」
「えっ!俺が作ったんじゃないのに!?」
「そうよ!君が元凶なんだから!なんとかしなさい!」
学校に来て早々に面倒ごとが増えてため息をはいた
俺だった。
そこで、1時間目の終わりのチャイムが鳴り、お開きになった。
「はい!ここまで!今日みたいな、いじめがあったらいけないから明日から
アンケートとか生徒会が調べて、対処するわ」
俺はお茶を飲み干し立ち上がると、仲野会長が
「ところで、個人的な事なんだけど、君‥頼飛君だっけ?あなた
強いのね。私もだいぶ警察官の父親の影響で護身術習ってたんだけど
全然ダメだった‥悔しい‥」
「あっそうなんだ。どうりで、1発1発が重たいと思った‥っていうか!
護身術って殴るためにあるものじゃないよな!?まぁ俺は男だし、
小さい頃から鍛えてるから、大丈夫だったけど」
そう俺は、小さい頃からじいちゃんに武術を習っていた。なぜじいちゃんが
武術を知っていたのか、じいちゃんは死んだし、母さんと
単身赴任で全然帰ってこない父さんに聞いてもわからなかったんだが。
結果として、じいちゃんのいい思い出として残ってるから良かった。
「わっ悪かったわよ!ほらっ!早く出ていきなさい!」
押すようにして生徒会室を、天世と一緒に出された。外はもう
休憩時間で、がやがやと、うるさく音を立てていた。
「よしっ教室へ行くぞー」
俺が歩きだそうとした時、天世が俺の袖をつかみ止めた。
「あっあの!頼飛‥君、その‥手紙、机の中に入れてるから、読んで‥
くれる?」
ぱっつんで長い前髪の奥から潤んだ瞳で上目で見てきた天世は、
凄く可愛く、もっと可愛いんだから髪を避けたら良いのにと
俺は、天世の前髪を少しかき分けながら、
「もっと前髪、短くするか、分けたりしたら良いのに。顔‥
可愛いんだからさぁ‥あぁ。読んでおくよ。よしっ!
完璧!行くぞ!授業が始まる。本当はめんどくさいから出たくないけど‥」
髪を分け終わり、可愛い顔が明るくなった所で、俺は3階に
ある教室へ歩き出し、その後を、天世は若干頬に笑みを浮かべ
顔を赤くしながら着いてきた。
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