第4話

 夜が更けて、女はもう帰ってこないものだと思い始めたころ、玄関のドアがいつもより不器用な音を立ててゆっくりと開いた。暗い玄関に見えるシルエットは二つ。デカい女と女に担がれるように支えられているもう一人の人物だ。


 女は朝見たままの格好で汗をダラダラ流しながら吹いたら飛んでしまいそうな貧層な体格の男を部屋に運び入れた。男は泥酔状態でほとんどまともに歩けていなかった。女はベッドに男を寝かせ、ぜぇぜぇと荒い呼吸を整えようと俺の前にドスンと座った。汗にまみれた顔からはいつもの緩んだだらしのない印象は消え失せ、今は目つきの鋭い険しい顔が張り付いていた。


 少し落ち着いた女はキッチンに行き、冷蔵庫から水を取り出してペットボトルに直接口をつけてゴクゴクと飲み始めた。ペットボトルからブハッと勢いよく口を離すとそのまま冷蔵庫に戻さず無造作にペットボトルをキッチンの流しに置いた。そしていつものように着ている服を男がいるというのにばさばさと脱ぎ捨てて部屋の隅に投げた。いつものベージュのパンツ一丁の姿でこちらに向かってくる。また俺の前に来るのかと思いきや、女はベッドに行き、泥酔状態の男の上に跨った。男は気を失っているようでデカい女が上に乗っても起きることはなかった。


 俺の嫌な予感は的中した。女は満面の笑みを浮かべながら男が着ているシャツのボタンを上から一つずつ外している。

 

 俺は怖かった。これから起こることを想像するのが怖くて怖くて仕方がなかった。


 

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