第3話幼馴染

砂利を走る音。国道の車の音。

(若林)「電話ボックスはと、あ、あった」


ダイヤルの音。着信音。

(児玉の声)「はい児玉です」

(若林)「児玉か?若林や。昨日帰ってきた」


(児玉の声)「おお、若林!生きとったんかいの?

ハア死んだとおもっとったがの」

(若林)「何とか生き延びてる。ところで柴山のことやけど」


(児玉の声)「ああほうよ。お前にも手紙を出したんじゃがの。

急性の白血病での、入院して3ヶ月よ。葬式にゃあ広島におる

川合、土本と宮本さん増田さんが出席してくれたんじゃがの。


死に顔が綺麗での。あいつよう見たら美人じゃったのう。

ほいでの、柴山の親父さんがの、あの時・・・・・・・・」


読経の声が聞こえてくる。

(杏子の父)「児玉さんですか?」

(児玉)「え、あ、柴山のお父さん、このたびは」

(杏子の父)「若林さんはお見えじゃないですか?」


(児玉)「あいつ海外で、3年は帰ってこんとか」

(杏子の父)「そうですか。3年ですか・・

3回忌には是非お会いしたいものです」


(児玉)「なにか?」

(杏子の父)「いやなに。杏子が小学校6年の時、

若林君が1度我が家に立ち寄ってくれたことがあって、

彼の事はよく憶えているんですよ」


読経の声遠のき消える。

(児玉の電話の声)「そういうことがあっての、ちょうどこの

20日が3回忌じゃが、どうする?墓参りするか?」


(若林)「ああ、墓参りする。お前も何人か当たってくれ」

(児玉の声)「よしわかった。柴山の親父さんにも伝えとくけえの」

電話を切る音。


(若林のN)「柴山杏子とは小学校以来の幼馴染だ。中学高校と

離れ離れになり、中3の同窓会で1度会ったきりで受験の時期を迎えた。

若林は京都の1期校に二度失敗し、二期校の伏見の学芸大に通いながら


翌年最後のチャンスをかけて毎日学内の図書館で受験勉強をしていた。

柴山が偶然この大学にいることに気付いてはいたのだが。

それどころではなかった」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る