2.彼女の咄

2.

「なんで?」

 消えかける彼女は言う。

「なんで、死ぬの?」

 アスファルトの上、目の前には、紅い色の水分を吸った服を着た、男の子が寝転んでいる。

 彼女の弟は、紅い服を着た男の子は言う。

「そういうことになってるんだよ」

 と。

 周りに人は居ない。

 居るはずもないか。ここは私の空想の中、現実とくっ付いているけどそれだけの世界。

 別に私は弟を消したいわけではない。

 話の流れでそうなったのだ。

 親を殺そうとしたら、必然的に弟を殺すことになった。

 もちろん私は、親を殺したいわけでもない。

 時を止める魔法は…と考えて居たところ、思いついたのが生贄を伴う魔法だった。

 何かの小説で出てきたものだったはずだ。

 空想の中で、私は親を殺すのを止めようとする弟を殺した。

 私が呪文めいたことを口にすると、世界を光が覆い、時が止まる。

 友達との関係はずっと変わらず、思い出は消えることがない。

 そして私は、空想の世界から追い出される。

 もう、そういうことになってしまっているから、その先が想像できないのだ。

 同じ日々が続いたら飽きが生まれ、きっと前の世界を望む。しかし、変わってしまうことを恐れて、前の世界には戻れない。

 どちらにしろ、時間は死んで行く。

 ならばいっそ、今を楽しもうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る