間章

 白いてんじょうの白いへやで僕は目をさました。

 僕の体にはたくさんのチューブがつながれている。


 とりあえずおきようとしたけれど、体がいうことをきかなかった。

 へやのまどから見えるそとの空はまっ青でにゅうどう雲がモリモリと青をかくすためにがんばっている。

 僕はどうしてこんなところでねているの?

 僕はどうしてチューブにつながれてるの?

 僕はどうしてうごけないの?

 僕はどうして…………僕は……


 僕はなにをしてたんだっけ?

 僕はきのうなにしてたっけ?

 おとといは?

 おととといは?

 あれ?思い出せないや……


 お父さんどこ? あれ? お父さんてどんな人だっけ?

 お母さんどこ? あれ? お母さんってだれだっけ?

 兄さん? 姉さん? 妹? 弟?

 なんだ、気のせいか……そんな人いないじゃないか、だっておもいつかないもの…………


 そういえば何かたいせつなことをしてたような……

 い……の…………り……………………?

 なんだかかなしいや、なみだがでてきちゃった。


 そういえば僕ってなにがすきなんだっけ?

 僕ってなにがきらいなんだっけ?

 なにが夢だっけ?

 なにがほしかったんだっけ?

 なにを……

 そういえば、僕ってだれ?

 僕ってなに?

 え?

 あれ? あれれ? なんで? なにもわからないや。




「……の記憶をもどすのはかなり難しいと思います。意識が戻ったったためにもとの人格とは別の人格のようなものが形成されて新たに進み始めています。仮にもとの……が戻ってくるとしても数十年はかかると思われます。無理に記憶を戻すのははっきり言って危険です。精神に深刻なダメージを負いかねない。そうすれば……の持つ魔導の才能はもちろん、魔法の才能も失われることを意味しています。このまま見守るのが一番なのは言うまでもないのですが…………」

「あいつの立場的にそれは難しい。治す手立てがないならむしろその立場から解放するほかない。幸いこのことは私たち以外に知るものはいない」

「……を解放されるのですか? しかし、それも難しいのでは? 」

「いや、可能だ。……は死んだことにして世界に公表する。父上と私とお前たちの秘密だ。あいつには悪いが、これがあいつのためにもなるだろう、一族の運命から解き放てるなら記憶ぐらい安いものだ」

「後悔しますよ。苦しむのはあの子もそうですがあなただって……やめるなら今しかありませんよ」

「かまわん、……の髪を染めろ。魔導的にだ。絶対に同一人物だと悟られないようにしておけ」






 白いへやですごして三日目くらいたったときにはじめて僕は人にあった。

 ふたりの人が、おじいさんとおじさんがへやにはいってきたのだ。

 おじいさんは言う。

「君はね記憶喪失っていう状態になったんだ。なにも思い出せなくなることだよ」

 おじさんは言う。

「すまない。君は公務の最中に起こったトラブルに巻き込まれて怪我を負い記憶を失ったのだ。我々のも君が誰かはわからなかった。私から君にできるのは名前と家族を与えてあげることぐらいだ。今日から君は真夜と名乗りなさい。苗字は天神、これはこれから君の家族になる人たちの名前だ。わかるかい? 今日から君は天神真夜だ」

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