二章
1
朝、
もしかして、もしかするとこれはあれなのか?
ラノベでよくある
軽く
夢じゃないんだ。
二次元ワールドからはしっかり帰還している。
そういえば昨日の夜、僕は美少女なお
四日前にこの寮に来てから
さて、
僕は少しの間、目を閉じたまま行動の
考えろ、僕。なにがベストだ?
ここは寝ぼけた風を
うん。まず間違いなく、死ぬな。
じゃあ、このまま寝たふりで今の感触を楽しむか……。
まぁ、それがベストな落としどころかな…………。
……? まて何か変だ。
この感触は中学時代に
なぜ模擬戦のことが今のパラダイスと
ん〜〜?
ビビリで理論ばっかの
「それだー!!!」
大声を出して、
いやそりゃあ思うでしょ!
男女で一つのベット寝て、起きた時に体にこんなソフトなものがくっついていたら期待するじゃん!
「お、おはよう。
「その言い方! 悪意こもってんだろ
「もぅ、エッチなんだからぁ!」
「やめて、やめて心が死んじゃう! まじで!」
「「レッツ、ハッスル!」」
「…………」
今日は
朝から心が
「ふあぁぁぁあ。真也、今何時?」
「六時
湊は起きた直後に友希さんに抱きついている。
仲のいいご
「
「あの二人は朝早いの」
「輝は朝は研究してるし、颯太はトレーニングしてる」
優果とアリサさんの言うことには、あの二人は努力家らしい。
三日間は朝起きてから、朝ごはんの声がかかるまでずっと部屋から出なかったから知らなかった。
明日からどっちかとご
昨日は緊張してなかなか
生活習慣の乱れは孤児院にいたころ最もきつく
ここにいる天才ども……おっと、天才な方々と才能あふれる僕はその例外に当たるレベルの技量を持っているのかもしれないが…………。
「
「あれ? いつもは一番遅く起きてくるんだけど……」
「あ……まさか……」
何か心当たりがあるかのように優果が
表情からしても相当やばそうだ。
「優果? どうしたの」
「リサ姉、やばいよ。たぶん朝ごは」
『みんなーー、ご飯できたわよー!』
「「「げっ」」」
「……。やっぱり……姉さんはこれだから……」
みんながなぜあんなに嫌そうな顔をしたのかは食堂に着く前に発覚した。
階段を降りて、角を曲がり食堂に面する
食堂の中での
準備はいいですか? のつもりで後ろを
優果がゴーサインを出しているようだ。
本来ならば慌てて角の向こうまで
僕の理想の主人公とはそういうキャラだからな。
決意を固めてドアを引く僕。
「優姫先輩! 朝ごはんいただきに来ましたー……あ?」
やばい、室内の匂いはさらに
毒ガス室かよぉぉお!
「真也くん!
なぜだろう美しくメイドドレスを
「はっ、はっ、はいぃ! 席に着きます。ごめんなさい」
「フフッ。どうして謝るんです? 真也さんなにも悪いことしていないでしょう?」
「
しまったぁぁぁ、恐怖でつい
もう引き返せないよこれ…………。
「あのこれはなんでしょう?」
「ご飯よ! 少し
「…………。……これは?」
「
「…………。いただきます」
「召し上がれ!」
数十分後、優果たちによって僕の命は救われた。
その一時間後、部屋で休憩していた僕のところへ、例によってバステトさんが迎えに来た。
食堂の換気がまだ不十分なので、今日の朝飯はテラスですることにしたらしい。
テラスは二階から繋がっていてかなり広い。
特寮に来た次の日に優果と輝に特寮の中を案内してもらったので、場所は覚えている。
この三時間もかかった特寮の案内でもいろいろあったのだが、面倒く……それはまた別の話。
すでに特寮の住民全員がテラスに集まっている。
「姉さん! ご飯は私に任せてって何回言ったらわかるの?」
「だって、だって妖精さん
僕の
「姉さん、人はあれを料理とは言わない…………」
優果はなかなか
「確かにあれは料理というより炭だな」
友希さんも容赦ねえ!
「あ、真也くん! ごめんね」
「いえいえ、気にしてないですよ。すんだことは仕方がないですし」
「あぅ。申し訳ない」
優姫さんその表情反則ですよ!
まぁ、もともと
「真也が許すならまぁ……」
「優果にしては
「(まだ出会って四日目なのに……いや、まぁ今回は真夜を
優果が漏らしたつぶやきは小声でもバッチリ聞こえていたけどここは
主人公とはそういうものだからな!
……でも、金髪残念ヒロインってこういう主人公の難聴にその場しのぎで許されて、最後に一番苦しんでるような……まあいっか。
「朝ごはんにしようぜ! 真夜、
友希さん、あんた良い笑顔でまとめてるど、隣で笑ってる輝と颯太と違って僕を見捨てた優果と共犯だからな!
「じゃあ食べようか!」
「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」
『先日、人工島セントラルで行われた
朝日の差す、ほんの少し
「まじかよ! 貿易封鎖? これはやばいんじゃないか?
「友希先輩の言う通り、
「輝? 本当なの?」
「は、はい」
うん、なかなかじゃなくて、
『はい。そうですね、今回のことはおそらく
「姉さんだ……」
「え? ほんとだ! 『
「おいおい、
「あはは、たまたまだよ……」
輝ったらたまたまに決まってるのに、なんか
確かに孤児院はしつけとか
たまたま僕たちの世代に天才が集まっていただけだろう……僕も含めてね!
「それに比べると真也さんはモブ感ハンパないですね! カッコ
「あ、
「ほっとけ! どうせ僕は主人公に
「
「うっさい、
「
「わかりました。お兄ちゃん!」
この二人は特寮に住む中学生で府中の生徒だ。
一人目は
名の通り、
変な名前だと思って
お兄ちゃんと呼んで
新中学三年生でそのまま来年は府高に進学するらしいが見た目はかなりロr……幼い。
二人目は
ちなみに天草は
彼の年の離れた兄が煌牙之宮の長女、つまり優果と
二人ともいい子である。
間違えた。一人はいい子だがもう一人は憎たらしい……。
あとなにげに
この子、悪口言ってる自覚ない上に、彼女の性格上、言い返しにくいから
「そういえばおれが前に大学に頼まれた
「
「そ、そうか?
「輝は
「優果、
「リサ姉! 本当のことじゃん! 礼称が
「へぇ、礼称に輝を取られたくないと」
「誰がっっ」
この言い争い止めたいのか、
礼称は輝が好きなのかね……輝はまんざらでもなさそうだけど。
「アリサ、さすがにそれはないから! おれはア……いやなんでもない」
「ちょっと、輝! それは私に失礼じゃないの?」
「先に失礼なことを言ったのは優果よ……」
「姉さんはだまってて!」
「あぅ」
「優姫先輩……優果言い過ぎだろ!」
「優果も輝も落ち着いたら? 二人とも顔真っ赤だよ…………あと、真夜、怒るところほかにもあるでしょ……」
「なっ、ばっ、ちがうし!」
「い、いやおれは別にアリサがどうとかではなくてだな……」
「優姫先輩を守るのが今の正義だろ!」
颯太のピュアピュア発言に二人はいっそう赤くなって俯いてしまった。
恐るべき無自覚クリティカル攻撃だな……。
僕は負けないがな!
「いったん落ち着け! あと、二年はそろそろ出発しようぜ。中三もな」
「「「「「はーい」」」」」
おぉ、友希さん強いな……ちょっと見直したかも。
「じゃあ、ごちそうさまでした」
「「「「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」」」」
二年生の友希さんと優姫先輩、中学三年の
不毛な論争はそのあと僕たちが府高へ最初の登校をするまで続いた……。
2
ガタンゴトンと電車にゆられはしないが、モノレールである天レールの通常列車に乗った僕たちは八人用の個室で
部屋にいるのは僕、
会話はほとんど窓から見える景色の説明に
僕たちは家を出たあと、まず車で
その後、電車を
「あれが海道町の
「へぇ……上から見ると湾に面していたんですねぇ……」
「そうそう、あれは
「うん」
「あそこに
「優果ちゃん、海菜様って?」
「最初の摂政の娘の一人で天神島の二人の
「すごい人だということはなんとなくわかりました……」
「ちなみにもう一人の創始者は
「
「
「ええっ? どういうことですか?」
「それ、天神島では常識なんだけど意外なことに公表されてるわけじゃないから島の外の人はあんまり知らないんだよなー」
「
また、自然化は
「でも、真也くん。それは死んでいるのとほぼ同じことなのでは?」
「ああ、だが実際、
「生きている」
「そうだ。颯太。このお二方は生きている。意識を保ったまま体の九割九分以上自然化したというとんでもない人たちなんだ!」
「けど、真夜。体の九十九パーセントが水とかになって意識を保つなんて可能なの?」
「できちゃってるんだからしょうがない、としか言いようがないな」
魔法士の多くは自然化するとそのまま体がその自然となって世界の一部になってしまうだけだ。
しかし
お二方はその
「体のほぼ百パーセントが水や空気になっても精神を止めているのだからな。大したものだよ。世界中を探してもそうそういないだろうな」
「真也……なんでそんな上からなの……輝でさえも敬意を払ってるのに……」
「おい颯太! でさえもっ、てなんだよ! でさえも、って」
「あれ? 上からだった?」
「はい。それはもう、『こいつら僕の弟子なんだよ。
「そこまで!?」
僕どこまで
「と、とにかくそういう人があの島に
「「(ごまかしたな……)」」
「なんだって? 聞こえなかったんだが」
こういうところはぜひアリサさんと優果にも見習ってもらいたいところだ…………。
「じゃあ、話を戻すけど、海道町はあの湾に沿うように半円の形をしているの。そして、特寮はその西の外れにあるわけです」
「ビーチは神殿とかあるけど一般開放されてるから夏にみんなで遊びに行こうな!」
「「ぜひ!」」
「いいな!」
「優果ちゃん、優果ちゃん。
「ほんとだよ、リサ姉!
「まてまて、
「
「真也まで……」
『まもなく、天神中央駅。デパート「ユグドラシル」、
「もうすぐか! セントラルターミナルはデカいからな、礼称とかは初めに特寮に来たときしか見てないだろ。そんときは緊張してて感動
「はい。
「改めて見るとすごいぞ。さすがに中学三年間ほぼ毎日見てた、おれと優果とアリサは
セントラルターミナル。
半径一キロもの広さの
その
そのスケールは
「うわぁ……。……優果ちゃんすごい。すごいよ! わたし、前来たときはなにも見えてなかったんだね! このボゥっとした雪みたいな光るものはなんなの?」
「それは世界樹の破片だな世界樹は日々成長しているけど、それを食い止めるように
「真也さん物知りなんですね」
「あー、孤児院でずっと兄さんに
「それはおれでも知ってるぞ」
「さすが、
「あ、あぁ……でも、なんていうか久しぶりなせいでおれまで圧倒されてるよ……」
「……今だけは
「やっぱスゲェよな!」
「「「「「はー…………」」」」」
天井へと伸びるエレベータは緑色に発光し、木の
「おーい、
「帰りに好きなだけ見ればいいから今は行こう。乗り
「「「「「はーい」」」」」
ちなみに世界樹の中でも
「
「そういえばおれも知らずに歩いてたよ」
「颯太も、
「十八番、四十八番か了解!」
「颯太、本当にわかってんのか? おまえこういうの苦手っぽいけど……」
「あはは……まあね。そのうち覚えるかなって」
「
「うん。わたし昔から物覚いいの」
「セルフの
「この時間帯は新入生がいっせいに登校するから、十八番線の昇降板を使うのは半数くらい学生生活区である海道町の生徒でしょ。学年の半数が
「ああ、優果の言うとおりだろうな」
半径二キロと聞くと乗り換えで一苦労、と思うかもしれないが実際はそこまで面倒くさくもない。
各ホームにある昇降板にのって開けている上方の空間を飛び、任意のホームへ移動できるからだ。
ガイダンスの言葉に従って専用に備えられた、
もちろん、
たまたま、居合わせた異能使いに同乗させてもらうのもいいし、ガイドさんのついている昇降板で移動することもできる。
僕たちにとってはガイドさんは必要ないのだが、駅員の中ではけっこう重要な役割である。ここセントラルターミナルにおいては、だが。
「僕が動かすよ。輝、みんな乗ってる?」
「ああ、よろしく」
「
『移動開始します。
「ああ、慣性軽減魔法、起動!」
『では、移動を開始します』
ガイダンスの声とともに音もなく昇降板は空中へ昇り、あっという間に天井とフロアの床の中間までやってきた。
昇降板はその全てがプログラムで管理されていて、同じ高さに同時に一機以上の昇降板が上らないようになっている。
高さが二キロもあるのはこのためなのだ。
「うわぁ、早いです! 高いです!」
「
「あぅ……すみません」
「フハハハハ! 人がゴミのようだ!」
「真也、バカなの」
『バカなのです』
「んなっ……おまえいつから僕の端末に戻ってたんだよ」
『ヘッヘーン! 端末? まぁいいや、
「聞けよ……。……まあいいけどさ」
「ちょっと、真也! 四十八番ホーム過ぎてるんですけど!」
「優果……なに言ってんだよ。ガイダンスにコントロールされてるんだから行き過ぎるわけないだろ……」
「いえ、真也さん。本当に通り過ぎています……」
「はぁ?
「ね、ねぇ真也、今ブレフォンのスピーカー機能オンにしてるの?」
「はぁ? 駅の中でそんなことするわけ無いだろ! 優果、僕のことなんだと思ってんだよっ。そもそもブレフォンの電源は今切って……あれ? オイ、
『昇降板のスピーカーですけど?』
「このボケェ、何が、ですけど、だ! ガイダンスは?」
『知らないですよ! そんなの私が割り込みかけた時点で止まったんじゃ』
「オイオイオイ」
「真也! 前!」
慌てて前を向くと他の人の乗った昇降板が前からせまってきていた。
乗っているガイドさんが慌てて
「「
「なっ! バカ私に任せなさいよ」
「今のはおれの方が早かったろうが!」
優果と輝の魔法が同時に昇降板に作用しようとして
魔法は
しかし、魔法士の干渉強度が同等の時、二つの魔法は互いに打ち消し合い、消滅するのだ。
結果、この場において現状は何ら変わらなかった。
「やべぇ、今度は落ちてるぞ!」
「
「
「何
「バカ、
「って、下、下!」
「真也止めろ!」
「つったって
「真也こっちは任せ」
「止まって!」
「静止しろ!」
「今度は
優果と
下の昇降板への激突は
最悪だ。
「落ちるぅぅぅうう」
「「「あぁぁぁぁぁああ」」」
「「「キャァァァァア」」」
バババッッッ、っという音と共に
僕たちの乗る昇降板を
マジで最悪だ……。
「……また君か…………。何か私に
「いえ……そのですね…………」
「なにか?」
「申し
はい。四日前と同じです。
軍の
てか、なんでまた僕一人なの!?
「よろしい。まったくよろしくないが……なら言い訳は?」
「はい。それがですね、またしてもこのポンコツAIが」
「了解した。ぶっ
「あ、ありがとうございます」
ふぃー……今回は早かったな。
入学式のおかげか……いや、今回の明らかにことは
「フッ……。何事にも
「鬼ね」
「鬼だな」
一時的に
「さぁ、
『しんy……さm……。たすけt………………ブッ』
僕のブレフォンから聞き覚えのある音声が流れたような気がしたが、僕は無言で音量をゼロにし、電源を切った。
僕の行いは少なくともここにいる誰にも
うん。みんな、たいがいクズだな………………。
3
通称、
しかし現在の
入学式に出るのは僕、
もちろん、小中学校には通っていたし、
小学校の入学式に出れなかったのは、
中学校の入学式に出れなかったのは、前日、ショッピング中に
僕が今いるのは新入生、三千人のひしめくきらびやかな
なぜかというと、三千人の新入生の首席、次席、次次席になった生徒は入学式で
三人が一人ずつ答辞を行うというのも変な話だが、
この前、戦闘機との戦いに巻き込まれた時、愛七の言っていた「当代最強の
異能科と普通科の
そして、僕が反例ではあるのだけれど、
さすが異能科総合学部というべきか、僕たち三人も
が、
「
「大丈夫だよ、優果。バッチリ覚えた」
「真也はもしかして超有名人なのでしょうか? お母様もお祖母様も真夜に負けた私を責めるどころか逆に仕方がないとまで言われたんですが…………
「ぶき……いや、有名人ではないと思う。少なくとも記憶喪失後は……。もしかしたら記憶喪失前は
「真夜、キ・モ・イ!」
「グサッ……」
「……真夜の心に一万の攻撃、効果は
「優果は嬉しそうにしている…………」
「ふ、ふふふふ。……そうか、もしかしてこれはあれなのか? ひがみなのプギャァァァァァア」
こいつら
今から全校生徒の前に立つのに……。
「ああ、考えたら
「なんか、アレなのよね。真也って才能の割に自信がないっていうか、いやナルシストなんだけど……なんかナルシストぶってるっていうか」
「わかります。どこか無理があるんですよね……」
「ヘタレ?」
「そう、そんな感じがします」
「はぁ? ヘタレってなんだよ、誰だって緊張するだろ」
「え? これくらいの
「私の家では
「……断じて、おかしいのは、普通じゃないのはお二人であって僕じゃない!」
「……普通よね」
「……普通ですね」
「完全にアウェーだな…………」
『もうすぐ本番が始まります。移動してください』
「「「はーい」」」
スピーカーからの呼び出しに、僕らは誰にも聞こえることのない返事を返して舞台へと向かった。
「ふぅぅ……緊張した! 変じゃなかった?」
「
「内容が…………」
「何か変だった?」
「真也……ふざけて答辞の文章考えたわけじゃないよね?」
「優果、真也はどう見ても、ものすごく真面目だったよ……」
「そうだぞ、僕はこの上なく真面目にやったつもりだ!」
入学式が終わってクラスへ移動しているバスの中で、僕は優果と湊に
空から見ると円形に積み上がった
この形状は
しかし最下層の円の直径が五キロ程もあるため、移動は半分ほどバスで行う。
現在、僕たち
クラスメイトたちは皇族の名に恐れているのか五人がけの一番後ろの席を僕たち三人に
僕は孤児院の出だけど…………。
「で、あの内容なの?」
「あの、とはなんだよ! あれでも必死に考えて……」
「『学園生活には適度な楽しみが必要であるから読書タイムを設けるべき』?」
「『図書室には勉強に必要な本だけでなく軽く読める小説が必要不可欠』?」
「うん!」
「「………………」」
二人が僕の顔を見つめて、「コイツ、マジで言ってんの?」みたいな顔をしているけど、きっと気のせいだろう。
僕は大真面目だしな。
「『日本のオタクが育んできた文化は二十二世紀半ばとなった現在でも、日本の有する大切な文化で、私はそれを広めるためにこの学生生活を
「『かつては誰もが
「だよ!」
「これは
「優果……今度は全面的に賛成するよ…………」
「何が!?」
…………この時の僕は、今後一年の間、学校でオタク系の
4
「入学おめでとう! そして
「ありがとうございます、
「ありがとうございます、友希先輩」
「ありがとう、兄さん。兄さんが先輩っぽいなんて……」
「
『
運動系から研究系まで多種多様なコースがあり、府中から続けて同じ学科に入る人も多いらしい。
僕は府中生じゃなかったから知らないけれど……。
僕たちが今来ている学科は
サンクは完全
理由は
活動内容はスポーツから
「
「了解! 兄さん
「オレのデスクの右は
「私はあっちの机をお借りします」
「オーケー、じゃ真也、案内するよ」
「お、お願いします」
「任せろ! と言っても特に言うことはないんだけれど……。そうだな、えー、まず、真也は何かやりたいことはあるか?」
「僕、ですか……。そうですね、
「そかそか、なら一緒にやろう。ちょうどオレのグループで今、研究してることだしな!」
「そうなんですか! あー、僕足引っ張るかもしれないですけどよろしくお願いします」
「よろしく! 上の研究室借りて研究してるから、とりあえずそこに移動しようか……」
「はい。案内お願いします」
「おう! あと言い忘れてたけどこの部屋は
「わかりました。また遊びに来てみます」
「よし、行こうか!」
「はい」
「第四研究室はサンク専用の
「大きいですね……」
「
「へぇ……。貴重なものが多そうですね……」
僕は
ちなみにサンクには特寮の
颯太は剣術部とのことだ。
「この
「オレを
「少ないですね……。いや、研究内容から考えれば当然かもですね」
「ああ、オレももう少し人手が欲しいとは思うんだが使えそうなやつはみんな他のことやっててな……。班員も専属でやってくれてるのは
「まさかの全員身内ですね……」
「それだけ特寮のレベルが高いということだな」
「でも、
「あいつの知識は使えるから頑張ったら使えるかも……という希望で
「本人がわかっててやってる
「ありがとうな。オレは気弱になっちゃうのが悪い
「気弱ですか……そうは見えませんでしたけど?」
「ならいい、っと着いたぞ」
「ここが……」
「ああ、ウチの学科の第四研究室で現在は
「「「ようこそ、魔導式研究班へ!」」」
「よろしくお願いします」
「まあ、いつものメンツだけど……。改めてよろしく」
「はい。頑張ります」
「よろしく、真也うちの班に入るんだ……」
「よろしく、
「うん。でも気にしないで、これは真也のせいだから」
「
「あー、はいはい。オタ君うるさい」
「オタ君!? なにそれ?」
「真也知らないの? 朝の
「それが、オタ君?」
「うん。ププ、まぁ、その、ドンマイ!」
やばい、泣きそうだ……。
高校に入ったら夢のスクールライフが訪れると信じていたのに、初日から何か選択肢を間違えてしまったようだ…………。
「それにしてもかなりの量のコレクションですね……。全て
「うんうん、そうなの。魔導資産のギミックを魔導式に起すことで、魔導資産なしで同等の効果を得られるようにするのが私の研究なんだよ!」
僕は大人だからくだらないケンカをするつもりなどないのだ。
あと、ぶっ通しで開けているはずの研究室の向こうの壁どころか、横の壁も見えなくなっている原因の物品たちが気になるというのもある。
と言うか、それがメインだ。
「コレ全部を
「そうだよ!」
「スゴイっすね……」
本当にスゴイ。
有名どころでは
そして、
これだけの量を集めるにはかなりの
部屋を
「この部屋にある
「
「一昨年の夏休みにノリで
「
別に
あくまで所有権は国にあるのだが、
「あぁ。今度また研究資料を取りに行く予定だから、真也も一緒に行こうぜ」
「あ、はい。ぜひお願いします!」
「んじゃ、今日の活動を始めるか……」
「はい!」
「「もう始めてたけどね……」」
「
「それなら
「それほどでもないわ、兄さん。兄さんこそ魔導式開発については右に出る者なんていないでしょう」
なんなんだ? この
「魔導式の開発を兄が、改良を妹が
「照れるなぁ……まぁ、オレと
「に、兄さん! なに言ってるの! ししし、真也!
…………
見てて腹たってくるというか、消化不良を起こしてなんか胸がムカムカする感じがするっていうか……本当なんなのこの兄妹!
「……じゃなかった。そういうことは一ミクロンたりとも考えてませんよ。それとも、
「なななな、なに言ってるの真也! そんなわけがないでしょう! 私と兄さんは健全な関係です」
そんな顔真っ赤にして顔の前に腕を突っ張ってブンブンしてるようでは全く信用できないんだけど…………。
なんとなくツッコンで聞いてしまってるけど、大丈夫だよね?
このままいってもとんでもない秘密を
「プラトニックなお付き合いをしていると?」
「そうで……違いますっ! そもそも付き合ってません!」
「りょーかい! 了解! わかったから落ち着いて
「っ……誰のせいで…………。落ち着くのよ湊! これも真也の
罠って……。
どう見ても自分で
「わ、私たちのことはいいから! さっさと見せなさいよ真也の魔導式。どうせろくなもんじゃないでしょうけどね!」
あからさまに話をそらされたけど、僕もこれ以上、変な情報を聞かされる前に話を変えたかったのでありがたく乗っからせてもらうことにする。
それが、魔導式である。
「まぁ、自信作ってわけでもないんだけれど、これです。『
「ふむふむ。工程は二つ。また雷ねぇ……雷魔法といい真夜は雷に何か思い入れでもあるの?」
「いや、固有魔法が雷魔法だからこそ、雷のイメージが普通の人よりもしっかりしてると思うんだよね……」
「なるほどね。固有魔法で感覚的に慣れてるから、気象イメージなんていう強大な
「うん」
「魔術だけでもデタラメな技ね……。でも、第二工程のこれは……少し
「うーん、どこらへん?」
「第一工程で自身を擬似的に雷として、その速度でも体が
「でも、
「
「うん。わかってるなら言うまでもないだろ? 体が
「うん。だからこそ、だよ。真夜は第二工程を組んだ時にこう考えたでしょ? 体を固定しないといけないから、
「あっ、そういうことか!
「よろしい!
「グッ……。
「あはは、そんなことないよ。あ、残りの二つを一工程にまとめられる魔法は
「前半が棒読みなのは置いておくとして、どういうこと?」
「情報の固定と思考速度の固定だと、この魔導、結局加速中に本人ができることはほとんどないから剣を構えて超速で串刺し、みたいな使い道がないでしょう……ま、十分強いんだけど…………」
「意外と
「うーんと、そうねぇ……。例えば
「うーん……。体全体の加速って体に相当な負担がかかるんじゃないの?」
「あー、確かに……。ごめん、今のはなしで……。最近、魔導式によってユーザーにかかる負担とか無視してばっかりだったから、真也は普通の人だもんね……」
「
「ごめんごめん! 忘れて……。じゃあ、思考速度のみの加速が
「了解! ありがとうな、
「どういたしまして。今度また何かおごってね!」
「ハイハイ……」
5
「
「グサッ」
「ほんと、女子から大人気なんじゃないかしら、オホホ」
「
「
「そ、それくらいは知ってます!」
「痛っ……何するのよ、
「
「……颯太!? 何それ?」
「真也まだ知らなかったの?
「知らないよ! なんかムカッとしたらぶっ飛ばせ!? 意味不明なんですけど!」
「四方院の現当主様が若い頃に作ったらしい……。百項くらいあるらしいけど……。颯太はそれを全部覚えて忠実に守ってるのよ」
「マジですか……」
入学式が終わって
今は徒歩で
南区はその中でも最も、学生が遊ぶに向いている場所で、ゲーセンや買い食いできるファーストフード店、勉強のできるカフェなどが多く立ち並ぶ。
今日は
結果、第四研究室に取り残された僕は
教科書を受け取ったためカバンがものすごく重い。
まず、科学技術による飛行はもちろん、
引っ越し中に戦闘機に
また、
僕や同年代の六大財閥子女にとっての
軍のサーバの演算容量を僕のわがままで使わせてもらうわけにもいかないし、戦闘機の一件から国境は
そもそも、今朝の件で
「
「
「うん。うちも真也が特寮に来る前から知ってたよ。姉から電話があって……一応、安否確認で。まさか、今日来る入寮生が巻き込まれてるなんて思ってもいなかったけれどね……」
「二人は知ってるみたいだし、もしかしたら僕より深い事情も知ってるかもしれないけど……、僕が聞いたのは、
実際、
その子息が親から聞かされているかは家によって差があるようだけれど……。
「死傷者がいなかったのは真夜のおかげかもね……。それと、うーん……中華皇帝国、か…………」
「優果、気にしてる?」
「颯太もストレートね……」
「ごめん。でも大切な友達が一人で抱え込んで特攻したりしないか心配だし……」
「……。……ありがと。でも、無茶はしないし大丈夫だよ」
「ならいいよ。おれのほうこそ変なこと聞いてごめん」
「気にしてないよ! さ、帰ろう!」
「何のこと?」
「しし真也くん! 今のは流す流れでしょ!」
「え? ごめん気になって……。何がボケてばかりの優果を
「真也くん、空気読もうよ……」
「礼称だけには言われたくなかったな…………」
「いいよ、礼称ちゃん。真也には感謝してるし……。真也、私の両親はね、中華皇帝国に殺されたの」
「………………そういうことか」
「うん。そういうこと……まぁ気にしないで、もし私が暴走したら止めてね」
「ああ、約束するよ。悪かった」
「うん」
「じゃあ帰るか」
「まって、なんかあんまり今の話的に言いにくいんだけど……」
「礼称?」
「向こうに見える赤い
「それがなんで言いにくいのよ」
「う、うん。それがですね……中華系の
魔術による現実の改変にはしばらく
それにしても、その魔術の系統までわかるのは
「戦闘機の襲撃の時に墜落したパイロットが逃げ込んだとかかな?」
「礼称ちゃん! どっち?」
「あそこのお店の
「スーパーチキンか……。礼称、あれはそういう名前のファーストフードのチェーン店だよ」
「そうなんですね! そのすーぱー……チキン? の隣です」
「って優果は?」
「もう、スパチキの前まで行ってるよ」
「礼称は
「はい。どのような魔術かはぱっと見でわかります! あとじっくり見れば、使った人の精神の
「よし、行こう」
「中国の
ファーストフード店の前に座って
術式解析はそもそも、高校生が
しかし、
「へー、で相手は
「
「真夜は考えすぎなんじゃないの?」
「優果、もし本当にこれが中華軍のものなら深入りは危険だ!」
「優果ちゃん。いったん引き上げようよ」
「わかった、わかりましたよ。私が止めてって言ったんだしやめておくけど、家族には報告するし、忘れるわけじゃないからね」
「ありがとう。正直、人の気持ちも知らないくせにでしゃばらないで! とか言われると思ったよ」
「それは心の中で思ってる」
「おぅ、聞かなきゃよかった……。そういうのは心の中にしまっといてくれよ」
「
「まぁ、何も言われないと罪悪感が残ったかも……本当、ありがとう」
「ドMね」
「真夜くん…………」
あれ? どうしてこうなった?
優果は冗談って分かってるけど、礼称がガチで引いてるように見えるのは気のせいか? 気のせいということにしよう。
「そうでもしないと心折れるわ!」
「え? 真夜くん、もう今日の学校の女子の
「やめてやめて! せっかく忘れてたのに!」
「オタ君……」
「グフッ」
「あれ?
「あっ……あんなところに!」
颯太は
「何やってんだあいつ?」
「私なんとなくわかるんですけど……」
「「?」」
「とにかく、連れ戻さないと!」
……こんなところで魔法を使う羽目になるとは…………。
先行する
こんなことで魔法を使う羽目になるとは……。
演算補助なしの魔法を行使したため頭に
颯太は「四方院家家訓、その三十一、怪しい物はとりあえず
「優果、礼称、とりあえず特寮のみんなに連絡しておこうと思うけど、いいよな?」
「うん? どうして聞くの? もちろんだよ」
「私も問題ないよ」
「優果への確認の意味が大きかったけど、いいなら問題なし! 輝に連絡
「私が連絡しとく」
「よろしく、優果」
「もしもし、
『ああ、その声は
「その声は、って電話登録してるんですし名前表示されてるでしょう?」
『細かいことはどうでもいいだろ……要件は?』
「要件がなければ連絡してはダメですか?」
『彼女か! 気持ち悪いわ! そういうのは
「いや……その返しはおかしいです…………」
『?』
「あれ? ガチ?」
『嘘をつく理由はないだろう?』
「…………要件なんですけど、今日の帰りに
『はぁ、それが? 誰かが浮かれて魔術使ったんじゃないのか?』
「いえ、それが……礼称に
『なるほど、浮かれて、ということはなさそうだな。いたずらにしては手が混みすぎているし、この前の中華帝国の
「やっぱり、
『あ、ああ、あくまでもしかしたらだぞ。とりあえずオレの方で調べておくから気にするな』
「はい? 危険なことはしないですよね?」
『もちろん』
「大丈夫ですよね? 一人じゃ危ないからしばらく付いて行きましょうか?」
『お前はオレの母さんか! 彼女なのか母なのか後輩なのかはっきりしろや!』
「
『----通話は終了しました。----通話は終了しました。------------』
「…………あれ? 世話がやける甘えん
「真夜、友希先輩となに話してんの……………………」
「好みのヒロインの話をしてた。あ、あとさっきの話もついでに」
「「「…………ついで?」」」
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