第2話

間違い、という言葉は適切でないかもしれない。

もともと私が持っている趣味、まあ直接的にいうとフェチだ。

筋肉フェチとか、声フェチなんてどこにでもあるけれど、

私の場合、手フェチだった。

今でも話し始めたらきりがない。

あえていうと、女性のふっくらとした手とは違う、骨ばった感じが好きだった。


私のことは置いておいて、何が問題だったかっていうと、

その話題を図らずも彼に話してしまったことだ。

経緯は忘れてしまったけど、

正直先輩の変な趣味を知ってしまったことはいい気はしなかったはずだ。

なんというか、嫌われたとかじゃなくて、そのことに対しては軽蔑されてしまった。


ところで、全く名前が出てきていなかった。私と彼しか出てこなかったからかもしれないが、これから不便になっていくので、名前を出しておこうと思う。

私の名前で重要になっていくのは名字だけなので、名前は仮名にしておこう。

佐藤さとう はる。重要になっていく割には平凡な名字だ。

彼の名前は仮名にする気だが、どうしても彼の名前を気に入ってしまっているものだから、

一文字だけ取って、向坂こうさか拓隼たくととしておく。


軽蔑された後はどうなったかというと、簡単に言えば「半径五メートル以内に近寄るな」

とまで言われた。

恋愛の話とは思えないくらいひどい話だ。我ながらそう思う。

もうひとつ恋愛の話ではないことを言うけれど、

私は出会った彼に一目ぼれしたわけでもなかった。

ロマンに欠けることだが、この時の私には好きな人がいたし、

まあ、彼のことも、「嫌な後輩を持ってしまった」と、少し苦手意識を感じていた。


この状況が変わったのが今年の初夏だ。

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恋愛って難しい。 @haru_1022

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