第5話教室の席順の秘密★
ナミがイチカにべったりになっていた。イチカの方も、ナミが10分に一度は「可愛い」を打ち込むものだから気持ちよくなっていた。
わたしがトイレなどの用事で席を立とうものなら、すぐにわたしの席はナミに占領されていた。仕方なくナミの席に座って授業が始まるまでの時間を潰すのだが、ナミの机は消しゴムのカスだらけで大変不快だった。しかもそれは、わたしの貸した消しゴムの残がいなのだ。
このナミとイチカの仲良しぶりを、『実際はお互い好きでもなんでもないくせに――』と哀れみながら見る。わたしは、ひとりぼっちになっていた。ナミの悪口をたしなめたせいだろうか。イチカが欲するお世辞を言ってあげないせいだろうか。わたしに何かを変える方法はなく、早く時間が過ぎればなどと、考えれば考えるほど長く感じる時間を居心地の悪いナミの席で過ごしていた。
そうはいっても授業中は二人の間にわたしの席があるのだ。
イチカがお絵かき交換ノートでわたしをつついた。
「これ!ナミちゃんに渡して!」
ナミがクスクス笑っている。今度は逆の流れだ。
「イチカちゃんに回して!」
今度はイチカが笑いをこらえる。
これが国語の時間に三往復。途中でノートを見たり、お絵かきに参加することも可能だった。しかし、意地なのかプライドなのか、わたしは余裕ぶった態度で授業を聞いてる振りをしてノートを回すのだった。
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