第3話☆ナミと仲良しになる☆

 イチカと微妙な空気が出始めた頃、ナミとよく話すようになった。ナミは小さくて体が弱く、体育でも見学が多かった。しかし、とにかく毒舌だった。わたしはそこが面白くて仕方なかったのだ。


「与田の授業ウザくない?あたし与田嫌いーーー」


 小声でいたずらっぽくナミが話しかけてきた。わたしは「わかるぅー」と顔をクシャクシャにして見せた。担任の与田は英語の先生で、英語を読むたびに変な勢いのついた発音をするのでなぜかイライラした。それは他の子も同じらしかった。それが英語の本当の発音なのかは判断がつかないが。それに、席替えにしてもそうだが、「勝手にやれ」というのが教育方針らしく、『自由』だとか『自己判断』だとか、偉そうな演説をしてはクラスをドン引きさせていた。


ナミとはいろいろな悪口で盛り上がった。


「○○目立ちたすぎ!うっざい!○○嫌いー!」


「○○の黒板汚くて読めないし!○○嫌いー!」


「あいつの声やだ!○○嫌いー!」


「○○嫌いー!」


その対象は、先生からクラスの男子、目立っている女子などなど。ナミの毒舌は止まらなかった。そして、それはわたしも少なからず思っていたこととよく当たっていたので、ナミに話を合わせるのは学校の一番の楽しみにさえなっていた。


「あたしイチカ嫌い!知らねーってのにアニメの話してくるし!ネムちゃんなんで仲いいの?」


ついにナミの『嫌い』がイチカにも向けられた。わたしは血の気が引くのを感じた。それまで一緒に嫌い嫌い盛り上がっていた勢いと隣の席の友人イチカへの義理立て。わたしは勝手に板ばさみになっていた。


たしかにイチカとは微妙な時もある。ムカつく時もある。しかし、このままナミと一緒に陰口を言ってイチカを悪者にするのも気が引ける。


「イ、イチカは隣の席だし、わたしもアニメ好きだからなー。たしかにナミの言うこともわかるけどねー(笑)」


ごまかしつつなんとか主張した。


「ふぅーーん」


ナミは気にも留めない風なそぶりで受け取り、話題をテレビ番組に変えた。



ともあれこんなふうにナミとは仲良く過ごした。

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