第32話 This Feeling この想い

32.


== 渡邉凛太郎 + 松本聖 ==



 その後、南とは連絡を取らずにいた。俺は1ヶ月程仕事

が忙しくなり、ほとんど妻や子供達とも一緒に過ごせず

にいたので、妻の様子に変化があったことに気付かずに

いた。


 仕事のほうが一段落(いちらんだく)ついて、改めて家

族の風景がはっきりと見えるようになると、まず最初に妻

がかなりやせ細り、やつれていることに気がついた。


 様子を見ていると、子供達のことは何とかこなしている

のだが、ボンヤリしていることが多いことに気付いた。


 「聖、痩せたんじゃないのか?食欲無いのか?」


 「うん、そうなの。自分でも不思議ぃ~。食欲が無いっ

てことはないよ!なんかぁ、気がついたら痩せてたって

感じ?」


 聖はちょっと困ったような表情でそう答えた。嘘をつ

いてるという風には見えないけど、気が付くと痩せてた

発言にはどう考えても同意できなかった。


 自分の仕事が一段落ついて、毎日定時とまではいかな

いまでも、早く帰れるようになると、妻の様子が、これ

までと違っていることに改めて気付かされた。まず、妻

から俺への会話がない・・というより、子供達にも

明らかに無関心にみえる。


 どうおかしいのか、言葉では表現しにくい。空気感が

絶対的に違う。まず、動作が違ってる。緩慢だし、オー

ラが暗い。そのせいか、子供達も精神的に不安定になっ

ている様子が伺える。


 俺が何か話し掛けても、返事はあるものの、話は全く

と言っていいほど続かない。続かないのか、続けられな

いのか。心ここに在らずっていうような表現が、一番合

ってるのかな。おかしい、聖がおかしい!


 一度、病院へ連れていったほうがいいのか。そう思っ

た瞬間、病院?病院でどう話して何を診てもらうんだ!

心を・・精神的なものなら、精神科なのか!心療内科か?







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