第23話 This Feeling この想い

23.


== 松本聖 ==



 今の私はまだどうするか目的も着地点も何も考えられ

ずにいるけれど、ひとまず身体を動かして行動出来るだ

けでもストレス発散になっていると思う。

しかしその一方で、美しいその女性を知った後

の自分の気持ちを考えると、それはそれで不安と恐怖が

襲ってきそうだった。



 時計を見ると17:20分、これからどうしようか。


 ビルの出入り口付近で彼女を待つしかないのだが、待ち場所で

どこかいい所はないかと思案している所へ、綺麗な女性が

ビルの出入り口から出て来た。


 はっきりとまだよく顔は判らなかったけれど、きれいだと

いうのは見てすぐ判ったので、彼女が三沢が教えてくれた

女性に違いないと思った。


 そんな風に考えていたら、何と彼女を追いかけるように

して出て来た男がいた。聖はめまいを覚えた。その男と

いうのが凛太郎だったからだ。凛太郎は彼女を呼び止め

封筒を渡し、何か懸命にいろいろと話かけていた。



 凛太郎のひとしきりの話を聞いた後で彼女は「ありが

とう。じゃぁ又明日。」と言って歩き出した。その姿を

凛太郎はしばらく見送った後、又ビルの中へ入って行っ

た。



 凛太郎さん、彼女に上げたモノは何ぁに?何かのチケ

ット?それともデートの誘い?心の中でさまざまな思いに

捉われた聖。幼い子供達を実母に預けて来た聖は、彼女

の住所を調べようとそのまま尾行した。三沢さんの言う

通りだった。


 遠目からではあるがプロポーションも良くてふわっと

ロングのへアーを垂らした綺麗な女性だ。この日実際に

彼女を見てしまった聖は、自分など適わない程の美貌の

持ち主に吃驚して泣いてしまいそうになった。



 尾行している間もどうしようと焦るばかり。「このま

まだと凛太郎さんを盗られてしまう!!」知らぬ間に、心

の思いが口から零れ落ちていた。




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