第20話 This Feeling この想い

20.


== 渡邉凛太郎 + 南千鶴 ==



 誰か知り合いに会わないかと思っていたら、上手い具

合に同じ町内の人も家族で店に来ていた。これで聖の耳

に入るよう、近所で話して歩いてくれると助かるわ。笑っ

てしまうな、普通本当の浮気なら逆だよ。見付からない

ようにするわな。お洒落するのは面倒だが、まっ、今日は

ちょっと洒落っ気を出して洋服も時間を掛けてコーディ

ネートし、髪型もピシッと決めて来ましたよっと。


 南が余りに美しく着飾っていて、ちょっとドキっとし

た。


「夜でディナーデートなんかになったら、更に々ゴージ

ャスになれるわよンっ」


と、南は言った。女性は化けるねぇ~。


「会社の外でこうやって食事なんてしたこと無かったから

なんかぁ、変な気分。」


「そうだな。だけどさ、俺とはそうだけど南さん結構経

験値高いんじゃないの?」


「えっ、どうしてそう思うの?」


「いや、人のプライバシーをあんまりアレコレ言うのも

憚られるけど・・。別に注視していたわけではなくて、た

またまだからね。まぁ、その、たまたまが多くてさ。ア

レッ!何でだろうねぇ~」


「何の話、謎々みたいなことばかり言ってないではっきり

言いなさいよぉ。はっきりと」


「南さん、よく誘われてるよね?独身、既婚問わず」


「たまたまって何よン。よく見てらっしゃるではないで

すかぁー、えーっ。(少怒)」


 そんな話題で俺達は大爆笑した。


 彼女の話によると自分ひとりなら誘いに乗ってもいい

かなと思う男は何人かいたが、娘さん込みで考えると

及第点を取れた男は、今のところ1人もいないらしい。


 従って異性と1対1で外食なんて久し振りって言うのは

本当らしい。真面目な女性で良いお母さんなんだな。



 俺はあっちもこっちもっていうタイプじゃなくて大好

きな聖がいればそれでむ充分お腹一杯だったからなぁ~

既婚でありながらあわよくばと、それも同じ職場の女性

に粉かける男の気持ちは、正直理解できないししたくも

ない。それが本気であっても遊びであってもだ。



 この時、本気で南のことを健気でいじらしいと思った。


 今回のことに巻き込んでしまって、今まで清廉潔白に生き

てきた南にひょんなことから汚点を付けてしまうことになっ

たら申し訳ないなぁ~と、今頃になって自分の取っている

行動が浅はかなことに気付いた。




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