第19話 This Feeling この想い

19.


== 渡邉凛太郎 ==



 こんな感じで南千鶴との契約が成立した。妻の浮気未

遂のコトに関して、彼女は深く追求して来なかった。そ

んな南に対して、やっぱりこの役は彼女に頼んで良かっ

たと、再認識したのだった。


 要は、妻に知らしめたいだけのことなので自宅の近くで

南とのデートをセッティングした。近所の人達にも見ら

れる可能性があるけれど、ホテルに入るわけでなし、食

事位ならご近所には幾らでも言い逃れは出来るだろうし。


 いや、逆に見られて噂になり妻の耳に入ればいいとさえ

思っている。


 聖に反省を促した日から2週間位経った頃、休日に南

とLunchデートをした。今まで俺がひとりで休日に昼食

はいらない外で食べるから、と言って外出することはほと

んど無かったので、妻はハッとしていた。


 浮気宣言はしてあったのだから妻からしてみると、半

信半疑にせよ、いつだろう?と警戒はしていたと思う。おそ

らくそれが妻の態度となって、出たのだろう。今

までならば、外での食事は家族で摂るというのが常だ

った。振り返ると、我ながらほんとに家庭第一の暮らし

をしていたのだなぁ~と思う。因みに他所の夫婦の話

を聞いていると、妻を大切にしている夫を持つ妻ほど浮

気する確立が高いような気がする。


 大事にされるのに慣れすぎると、浮気位見付かっても

やさしい旦那だから許してもらえるって思うのかもしれ

ないな。斯(か)く言う自分も結局許してしまってるもン

なぁ~。世の中には俺様で奥さんをちっとも大事にして

なくても奥さんから尽くされてる亭主もいるっていうの

に不公平だよなぁ~。いかんいかん、俺が落ち込んでど

ーする。


 聖を落ち込ませる為の休日Lunchデートなんだから俺

が落ち込んでたら本末転倒じゃないか!!恋人の振りを頼

んだっていってもちゃんと南と一緒に食事はするんだし

擬似にせよ本当のデートと思って、食事と会話を楽しん

でこよう、そう気持ちを切り替えて出掛けることにした。





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