第11話 This Feeling この想い

11.


== 渡邉凛太郎 ==


 昨年の後半にも妻は確か、女友達と一泊での旅行へ行

ってたことに! 11月頃だったように記憶している。この夏

に聖はスマホの買い替えをしている。前の使わなくなっ

たスマホをどこかで目にしていたのだが、ハテ?どこで

だったのか。必要としていない時にはちょくちよく目に

するのに、何かで必要になった時に限ってその場所が思

い出せないといういつものアレだ。どこでだったか思い

出せず困った。


 妻は大抵家に居るので探すのは深夜か早朝だな、と考

えながら俺は深く大きくため息をついた。あ~、どこで

だっけなぁ~~~。少しイラつきながら子供達も妻も寝

静まった頃、お茶を飲みにキッチンに入った。


 なんとっ、なんとなんと、お茶を飲んでいる俺の視界

にそのブツが目に入ってきた。すごいなぁ~、これはも

う絶対昨年のメールを見ろっていうことかなどとひとりごち

て、そのスマホを手にした。たぶんそうではないだろう

と思いつつも、昨年の旅行は女友達と行っててほしいと

願わずにはいられなかった。しかしその頃の旅行前後の

遣り取りは元彼だった。


 出るわ出るわ古いスマホで旅行後楽しかっただの、又

来年も行きたいだの、付き合いの継続を匂わすメールが

見つかった。


 2人の付き合いの始りは、どうも元彼の方から連絡が

あったみたいだ。


「本当はずっと交際を続けたかったが家庭の事情と仕事

が半端なく忙しかった為、とても付き合いを続けられる

ような状況でなく、泣く泣く連絡を断った。別れ話を切り出

すのがあまりにつらく、だまったままになってしまい本

当に申し訳なく思っている。親に強く勧められるまま、

地元で今の奥さんと結婚したけれど聖のことを忘れたことは

一日もなかった。今回仕事で聖の住む街に出張が決まっ

た時は、天に感謝したよ。会いたい、もう一度だけ聖に

会いたいンだ」


 その文面は最後の方になるとラブコールが激しくなっ

ていた。ハッ!!読んでいて胸糞悪くなった。




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