第10話 This Feeling この想い

10.


== 渡邉凛太郎 ==



 今まで妻のスマホを覗いたことはなかったのだが、学生

時代の友人と会うと9/9のカレンダーにハートマーク♡♡~

が付けられていること、一週間程前の休日に妻のスマホに

着信があった時落ち着きなさそうにし、俺の目の前で読

まず別の部屋へと理由を付けて移動したことから不信感を

持った。結婚後こんなことは初めてのことだったので、違和

感があったのだ。


 そして今日普段より早めに帰宅したのだが・・。食事

した後、風呂上りの下の息子が妻のスマホを俺の所に持

って来て遊び出した。妻は息子と娘を風呂に入れ寝巻き

を着せたところで、今度は自分が入っているのだろう。


 遊び飽きた息子は、スマホを俺の前に置いたまま他の

遊びに熱中している。無意識に俺はスマホを手にしてい

た。クロだった、真っ黒!妻は女友達とではなく、元彼

と会う約束をしていた。メールの送信者は倉本武になっ

ていた。紛れもなく元彼のフルネームだ。俺はその場を

離れTVの前に座り、ニュースを見た。


 果たして、風呂から上がった妻の様子は!顔はTVの方

を向いたまま、観察する。都合の良いことに息子が又、ス

マホを持って弄っている。息子よGood Job! 心の中で誉

めた。


 彼女がこちらを見たような気がした。俺はスマホのことも

息子のことも全く気に掛けることなく、ずっとTVに張り付い

ていた風を装っていた。そう、彼女と子供の居る方を一

度も見ないという方法だ。


 俺の見たメールでの遣り取りが初めてのモノなら、今

から何だかんだと理由をつけて9/9行けなくすればコト

には及ばず、ふたりの関係はひとまず未遂に終わるだろ

う。だが俺が2人のしようとしているコトを知らぬ振り

でいる限り、更に別のchanceを作るだけのことだろう。頭

が痛い。頭を悩ませている内に、俺はとんでもないことに

気付いてしまった。




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