第6話 This Feeling この想い

6.

== 渡邉凛太郎 + 松本聖 ==




 季節が夏に変わった頃、俺は聖の教育係りから外れた。

聖の方に下心があったのか無かったのか真実は彼女のみぞ

知る・・だが、少なくとも俺の放った「困った時には頼って

いい」という言葉を信じて連絡をくれるようになった当

初は、俺と付き合うとかは考えてなかったンじゃないか

と今でも思っている。


 最初の2~3ヶ月は相談に乗るだけで俺からは一度も聖

に連絡はしていない。それは意図的に。聖が多少なりと

も俺のことを異性として意識していることことが判った

時点で行動を起こそうと考えていたから。


 教育係りとして4月から聖についていたんだが、その

頃は彼女が時々ため息をついてポツンと寂しそうにして

いる姿をよく目にしたものだ。又誰かさんを想ってるん

だなっていうのが良く判る落ち込みっぷりで、表情や態

度によく出ていた。


 

 聖は2~3日に一回位の割合でメールしてきた。電話出

来る程の俺との距離感が取れなかったのだろう。社食で

も一緒になることはほとんど無く唯一社内での挨拶と仕事

での絡み、そして聖からのメールで細々と繋がっている

関係が3ヶ月程続いた頃、課内での飲み会、まぁお疲れ

様会のようなものがあって女性社員5名と男性社員8名で

アフターファイブに繰り出した。


 何だろうなぁ~、もし以前と同じ気持ちのまま独身を

通すつもりなら相談係り以上でも以下でもなく何もコト

を起こさず、その内聖がフリーだということに気付いた誰

か他の男に彼女がかっさわれていくのを静観するのみで

よかったはず。


 過去にもあったことで今更のこと。自分に好意を示してく

れた女性達の行方を何度か諦観してきたこともあったからね。


だけど、聖との時は違った。

彼女は別に俺に告白してきたわけでもなし・・・


だが気が付くと俺の方の気持ちが動いていた。





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