第4話 This Feeling この想い
== 渡邉凛太郎 + 松本聖 ==
4.
社風とまでは言わないが、大抵教育係りが独身だと指導
相手の新入社員と仲良くなり結婚まで辿り着く者、途中
で進路変更する者、様々とはいえ恋人同士に発展するの
が大方の常であった。
そんな中聖に恋人います宣言されてしまい、密かに周
りの男性社員達からは残念な年に折角の教育係りだなと
凛太郎は哀れまれていたのだった。
聖は控えめでどちらかというと大人しく、決して器用
ではないけれど仕事はコツコツ真面目で丁寧にこなすし
年配の上司からの受けが良かった。目上をちゃんと立て
ることの出来る女性(ひと)だった。
誰からも誘ってもらえないとは言ったけれど、彼女の
今までの様子から自分に対しても言えることなのだが、必
要以上に男性社員に媚びて好かれようとかの厭らしい素養
も無さそうだ。
この時凛太郎が感じたものは、「何、この生き物、可
愛いヤッちゃ!」だった。しかしながら大きな問題がひ
とつあった。仲良くなれるはずの指導する期間が、ほど
なく終わろうとしていたのだ。「う~ん、どうすっかな
ぁ~!!!」すでに捕獲する気満々の凛太郎は悩んだ。
「そっかぁ~、そういうことなら確かに寂しいよねぇ~。
松本さん、じゃあ僕が誘ってあげるよ。丁度今日の仕事
も終わりだし、何か食って帰ろう」
何故かタカピーな誘い文句でニッコリ優し気に微笑ん
で、凛太郎は聖を誘った。
一瞬ポカーンだった聖、「はいっ」と嬉し気な返事
が返ってきた。
その日から残り3日間、いつも帰りは一緒に食事した。
最後の日は、別れ際にちゃっかり余裕でメールアドレス
と電話番号の交換をし、凛太郎は聖に言った。
「困っ時や寂しい時には連絡しておいで。指導する期間
は終わったけど僕は松本さんの教育係りだからね。これ
からの仕事に支障が出ないようにサポートするのも僕の
仕事だから遠慮しなくていいンだよ。相談事なんかも僕
を頼ればいいからさ」
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