第2話 This Feeling この想い

2.


 

  毎日のように指導で一緒に一定の時間を過ごす凛太郎

はやさしいが、自分のことを異性としては見てくれない

ようで一切のお誘いが無いまま、指導ももうすぐ終わり

そうなのだ。


 そう思ったら聖は気が付くと凛太郎がまだ隣に居ると

いうのに知らず知らず涙を零していた。凛太郎が特別な

異性として自分のことを見てくれないからと言って、そ

んなのちっとも変じゃないのに私はバカだ。


 仕事が出来てやさしくて知らず知らず人を惹きつけて

しまう不思議な魅力のある凛太郎に恋人のいないはずが

ないのにそんなことも思い至らず、自分は特別な異性にな

れないって嘆いているおバカな私。周りに居る女子はそ

れぞれ男子社員からのお誘いがあって毎日楽しそうに過

ごしているのに、私だけ何で毎日こんなに寂しい日々を

送っているのだろうかと、嘆くだけの生活。


 これからはちゃんと仕事を覚えてしっかりと社会の一

員として働かなければならないのに異性のことや人のこ

とばかり気にして、私は一体何をしているのだろう、そ

う思うと聖はまた泣けてしようがなかった。



  

 「松本さん、どうした?僕の教え方でまずいところ

あった?」


 「いえっ、いえ・・違うンです。なんか一緒に入社

した同期の子達は楽しそうだなって」


 「松本さんは楽しくないの?」


 「誰からもお誘いがありません。女子はそれぞれ男

子社員との付き合いで忙しいみたいだし、男子社員か

らの誘いも私だけ無いしぃ」



 返事を返さない凛太郎は、しばらく何かを考え込ん

でいる風だった。




 「ひとつ、聞いてもいいかな? 確か君は新入社員

歓迎会の時に、大学生の時から交際している恋人がい

ると皆の前で公言していたと思うんだが、恋人がいて

も会社の男子社員からの誘いが欲しいってこと?それは

それこれはこれっていうことなのかな?」


 凛太郎の質問の口調には少し呆れた感が滲んでいる

ような気がした。





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