第2話「自称魔道士の登場」
「勇者!!覚悟しろ!!」
これまたどこぞのファンタジーに出てきそうな魔法使いの恰好をした長髪の黒髪の男が教室の扉を勢いよくあけた。
教室の中に居た生徒の視線が魔法使いに注がれた。
しかし、魔法使いはそんなのを気にせずにずかずかと教室の中へと入り、今朝門の前で数学の先生とやりあっていた勇者のもとへと歩いた。
勇者の髪型はいつの間にか丸坊主になっており、いかにも昭和の匂いを漂わせるような優等生の姿をしている。
そんな勇者の姿を見て魔法使いは体をわなわなと振るわせて勇者の机を勢いよく叩いた。
「お前はそれでも勇者なのか?如何したんだ!!そのやる気のなさは!!長老からもらった大剣は如何した!!」
本気の涙交じりの声で魔法使いは言う。
すると勇者はゆっくりと顔をあげてまるで達観したかのような視線を魔法使いに送った。
「魔道士・・・・。俺はもう駄目なんだ・・・。」
力なく勇者は言う。
その言葉を聞いて魔法使いは勇者の胸蔵を掴みあげた。
「何が駄目だ!!お前のかけられたその金髪の呪いを一緒に解こうと言ったじゃないか!!」
すると勇者は顔を俯かせながら魔法使いの手の上に手を置いた。
「確かに・・・。そう言ったな・・・。でも、魔王の前では俺はなんの力もないただの人間だったんだ・・・。」
その言葉を聞くと魔法使いは勢いよく右手を振り上げて勇者の頬を叩いた。
「馬鹿野郎!!」
そのお蔭で勇者は吹っ飛び、後ろのロッカーに体を勢いよくぶつけた。
というよりも自分からぶつかりに行ったような気がした。
「お前、それでも勇者なのか?それでも、呪いを解く気があるのか?」
いつの間にか魔法使いの頬に涙が伝っていた。
教室の中に居た生徒達はその光景を黙って見つめている。
「どうやら、心の中まで魔王の能力に影響されたみたいだな・・・。もう、いい・・・。俺一人で魔王を退治しに行く。」
そう言うと魔法使いはみじめに床に項垂れている勇者に背を向けて教室から出て行った。
しかし、勇者はピクリとも動かない。
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