勇者戦記
雨季
第1話「覚悟しろ!魔王!」
何時もと変わらない日常が広がる・・・。
そう虚ろな瞳をして香也は真っ青な空に向かって右手を差し出して、まるで雲をつかむような仕草をして見せた。
このありふれた日常が堪らなく嫌だった。
そんな思いが心の中を支配していく。
そんな事を考えているといつの間にか心の中心に冷めきった自分が無表情で立っている。
そして彼女はいつも決まって正論を言って私を苦しめる。
‘それが幸せな事に決まってるだろ?”
「先生、分かって下さい!!それを奪われると魔王を退治することができないんです!!」
学校の正門を俯いてくぐろうとしたそのとき、非日常的といえるような言葉が耳に入った。
「魔王って、お前ゲームのしすぎだ!!それにその服はなんだ!!ちゃんと制服を着てこい!!」
ふとその会話のする方に視線を向けると、よくファンタジーゲームなどで見かける勇者っぽい男が必死に頭が固いで有名な数学教師に向かって言っていた。
「わ、分かったぞ!!実はお前、魔王の手下だったんだろう!!」
そう言いながら勇者はポケットから黒くて野球ボールぐらいの小さな玉を取り出した。
「これでも喰らえ!!」
そう言って勇者は先生に向かってそのボールを投げようとしたが投げる前に腕を掴まれ、軽々と取り上げられてしまった。
それが意外だったのか勇者は驚きを隠せない様子を見せた。
「くそ・・・。長老から直々にもらった幻の飴玉がとられてしまった・・・。」
先生は攻撃をしてないのにも関わらず、勇者は攻撃を受けたように体をヨロヨロとさせた。
「これ、どう見ても食べ物には見えないが・・・。それよりも、その金髪!!何とかしろ!!」
先生は勇者の髪の毛を指差しながら言った。
勇者は血を吐くようなマネをした。
「く、くそ・・・。これは最初の村で戦ったときにボスにかけられた呪いだ・・・。卑怯だぞ!!呪いなんか使うなんて・・・。男なら剣で勝負しろ!!」
そう言いながら腰のあたりを勇者は探り始めた。
先生は勇者から奪った体験を肩に担ぎながらその光景を見ている。
「あれ?おかしいな・・・。腰にさしていた筈の剣がない・・・。」
そう言いながら勇者は先生を見て大きな驚いた声を出しながら先生が持っている大剣を指差した。
「あー!いつの間に!!」
「お前の記憶能力は相当低いのか?」
眉間に人差し指を当てて、溜息を吐きながら先生は言った。
「お前、後で生徒指導室に来い。」
先生はそう言うと勇者の顔面に向かって紙を貼り、また朝の挨拶運動を始めた。
そんなとき、勇者と目があった。
勇者は香也の手をいきなり取った。
「姫、ようやく見つけました。やはりあいつが魔王だったんだ。」
そう言いながら勇者は数学教師をじっと睨んだその時、チャイムが鳴った。
今まで挨拶運動をしていたあの数学教師が二人に近づいてきた。
「君たち、チャイムなる前に校舎の中に入ってなかったから遅刻ね。」
そう言って先生は黄色い紙を二人に渡そうとしたとき、勇者が私の目の前に立った。
「貴様!!姫に何の呪いをかけるつもりだ!!それに、弱い奴から狙うなんて極悪非道だ!!」
真面目な顔をして勇者は言った。
「あのな・・・。」
そんな二人を見ていると何だか面倒なことになりそうだと思い、教室へと向かった。
二人が話し合いに熱中しているおかげで遅刻しないで済んだ。
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