第3話 「ごめん...」



○同窓会会場内 夜中

瀬戸「オラーッ!!」

詩緒「あっは!馬鹿じゃないの、瀬戸!!」

酔っ払い、騒ぐ高校の同級生たち。それを見て笑う絢。

絢「あはは、瀬戸うるさい❪ほんのり酔う❫。」

晃晶「相変わらずな。」

時計は二三時を回った頃。そろそろお開きにしようと、ちらほら帰路についていく。

絢も立ち上がり、帰ろうとする。

絢「うわっ❪よろける❫。」

晃晶「❪それを支えて❫...っぶねーなお前...。このまま1人で帰ったら、確実に死ぬぞ。送ってやる。」

絢「あー...ごめん。」

瀬戸「晃晶ー、あんまがっつくなよー!!」

晃晶「うるせーぞ、酔っ払い。お前も帰れ。」

瀬戸「キャー、こわーいっ!」


○絢の家(一人暮らし)

絢の家に着くと、ベッドまで連れて行く。横になる絢。帰ろうと踵を返すと、ふと、絢の泣き声に気が付く。

晃晶「......絢?」

絢に近付くと、くいっと袖の裾を掴まれる。

絢「真...嵜......っ」

晃晶「...っ......(...そいつは、もう...)居ないんだぞ......絢❪消え入るように❫。」

絢「...ご...、めん...。ごめ...ん、ね......ごめん.........っ。」

晃晶「......?絢?」

絢「...っごめ、んっ...。私の、所に来、ちゃった...から......」

晃晶「...?」

絢「......も、う要、らない...から......、何も...っごめ、ん...ね......。」

気を失う様にスッと、寝息を立て始めた。

晃晶「.........。」

少し涙の跡の残る絢の顔を見つめ、そっと頭を撫でた。


微かな陽の光が、カーテンの隙間から射し込む。

絢「ん...。」

目を覚ました絢。

ベッドの端で、腕に頭を埋める晃晶に気が付き、驚く。

絢「えっ...!?晃晶!?」

晃晶「...あー...起きた?❪腕時計を見ながら❫」

絢「何で...」

晃晶「❪欠伸しながら❫昨日の夜、お前連れて来たら裾掴まれたから、何か帰りにくいし起きるまで居たんだよ。九時か。」

絢「あ...❪未だ袖の裾を掴んでいるのに気が付き❫ごめんっ!」

晃晶「...それよりお前、何かした?」

絢「え?❪キョトン❫」

晃晶「ずっと謝ってたから。」

絢「...っ!(.........)」

晃晶「......まぁ、覚えてないならいいや。」

立ち上がる。

絢「❪立ち上がり、眩む❫あっ」

晃晶「❪支えて❫...お前、ホント危ないから...❪呆れ❫」

絢「ご、ごめん...。ありがと。」

晃晶「俺、帰るけどちゃんと飯食えよ。」

絢「あ、晃晶食べてかないの?」

晃晶「❪ドアノブに手を掛け❫朝は食わないからさ。んじゃ。」

絢「あぁ、ありがと!ごめんね、わざわざ送ってくれて...」

晃晶「...別に。あのまま帰らせたら、今お前は天国だったからな。」

絢「ぐっ......」

晃晶「はっ、今日午後から日向せんせーだから、遅れんなよ。❪頭ぐしゃっ❫二日酔いですなんて認めねぇぞ。」

絢「うぇ...忘れてた...。」

晃晶「おう、俺に感謝しろ。じゃな!」

絢「❪手を振りながら❫うん、大学でね。」

パタン

壁に凭れる。

絢「...はぁ.........」


... ...め ...ごめ ... ...の なかの ... ...は ... ...い... ...やる ... ...け...ば...に ...ると ... ...が すべっ... ... ... ... ... ... ... ... ... ...


○大学入口 数日後

呆然とする四人。

斗々「...え......」

瀬戸「......は?」

詩緒「えっ、ちょ...」

晃晶「バカなの、お前...」

詩緒「どうしたのその怪我!!」

四人の前には、顔や腕に絆創膏を貼り、左の掌に軽く包帯をまいた絢が居た。

絢「はは...❪頬を掻く❫チャリとぶつかった。」

詩緒「笑い事じゃないよ、もう〜!」

瀬戸「更に派手にやったな〜...」

斗々「大丈夫?」

絢「うん、転んだだけだから!」

詩緒「今日からバイト無い日、家まで送るから!!」

絢「大袈裟だよ...❪苦笑❫」

晃晶「井上まで天に召されるぞ。」

絢「言い方っ!」


○大学内 女子トイレ 午後

絢「......(昨日、なんかいつもと違った...)。」

手をハンカチにつつみ、鏡に映る自分の顔を、じっと見つめた。


(F.B)

買い物の帰り、エコバックを肩に歩いている絢。夕方の薄暗がり、ライトの付けていない自転車とぶつかり、転倒。

カラカラと回る後輪の奥に、白く、フィルターのかかったような、小さな男の子の影を見た。

そして、あの唄も聞こえてきた。いつもより、はっきりと。


か... ... かご... ... ...の ...かの ... ...は いついつ でやる ... ... ...の ばん... つ...と か...が ...べった ... ... ...の ... ... ... ... ... だ... ...


○大学内 女子トイレ前 廊下

トイレからでると、日向にばったり会う。

絢「ゲ...」

日向「ゲ...って...。時間大丈夫か?次のやつ遅れんなよ〜。」

絢「❪軽く会釈❫......。」

通り過ぎ、去って行こうと足早になる絢を呼び止める。

日向「あ。小豆沢、怪我多いけど大丈夫?飯食ってる?」

絢「大丈夫です。❪振り返らず去る❫」

日向「気を付けなよー!色々ー!!」

絢(色々って、何...!)

日向「......❪背中を見つめる❫。」

喰鬼〔嫌われてるな〕

日向「うるせぇ、出て来んなっつってんだろ。瓶に詰めるぞ。」

喰鬼〔やめろ。...それよりあの子......〕

日向「......❪険しい顔❫」

眼鏡と髪の奥に隠れた瞳が光る。

喰鬼〔可愛いな〕

日向「......❪瓶に詰めようとする❫」

喰鬼〔うわっ、おい、旱和てめぇっ!〕

カサッ

その様子を隠れて見ている人物が居た。

喰鬼〔...❪視線に気づいたように姿を消す❫〕

時間差で日向も何かに気が付く。

喰鬼〔......今、誰か居たか〕

隠れていた人物が消えた場所を見る。

日向「......さぁ...。」


○大学内 小ホール 同時刻

ガヤガヤと集まる学生。ボードには、大きく“大学園祭について”と書かれている。

絢「学祭か〜...もうそんな時期だったんだ、忘れてた。」

晃晶「そりゃそんだけアクシデント起こしてればな。」

瀬戸「つか、実行委員来なくね?誰だっけ。」

その時、急いで資料を持ちながら入ってくる斗々。

斗々「ごめん、みんな。先生見付からなくて。」

瀬戸「じぃちゃん、ふらふらしてっからなw」

詩緒「どこ行くか分かんないしね〜。」

鈴木「今日はどこ居た?」

太田「この間トイレの前に突っ立ってたけどなww」

斗々「一階大ホールの窓枠に足掛けてたよ...❪資料のプリントを配りながら❫。」

鈴木「いや、何でw」

太田「大ホールってこっから真逆じゃんwwお疲れ、坪川❪肩に手を置き❫。」

晃晶「大丈夫かよ、爺さん...」

絢「はは、危ないねー❪流れてきたプリントを晃晶に渡しながら❫。」

斗々「えーっと、全員にプリント行った?貰ってない人、余ってる人から貰って。......それじゃ、今回やる出し物、露店の買い出しリストと役割決めますので、やりたいの有ったら挙手して下さい。」

斗々が話終えると、ホール内が一斉に話し出した。

絢「焼きそばとたこ焼き、チュロス...。」

詩緒「チュロスって私たちでもできるんだねー!びっくり!!」

瀬戸「ちょ、ちょ斗々。❪ぴらっと手を挙げて❫一人二〇〇〇円も出すの?高くね?」

斗々「多いに越したことは無いと思って。それに売り上げが上がれば還元分差し引いた利益がグンと入って来るよ。­」

瀬戸「......❪利益に反応して❫なるほど......よっしゃ、大学で一番の売り上げ出して、ガッポガッポ稼ごうぜ!!最後だしな!!」

太田「おー、瀬戸お前、むちゃくちゃ働けよな!!」

笑いが起こる。

詩緒「調子良い事ばっか...❪呆れ❫」

晃晶「金が絡むと人は化けんだよ。」

絢「ははっ」


話し合いも無事終了し、小ホールを出て行く学生たち。

詩緒「...げ。絢ごめん!今日バイト先欠員出たみたいで、入んなきゃなんない...❪スマホ画面を絢に見せ❫一緒に帰れないよ〜...。」

晃晶「うわ、まじで。」

絢「あー...お疲れ!私は全然大丈夫だし、バイト頑張ってよ。」

詩緒「う...でも心配...。」

晃晶「右❪↑❫に同じ。俺もバイトあるし。」

絢「大丈夫だって!本当に!!めっっちゃ注意して歩くし!」

詩緒「んん、分かった、気を付けてね。」

絢を抱き締め、急いで教室を出ていく詩緒と晃晶。


絢「!?」


二人の通った扉の所に、鬼のような形相をした白いモノを見る。


ガタンッ


座っていた椅子に躓き、大きな音が小ホールの内で谺響する。

ふと、振り返ると


もう

ホール内に

学生の姿は無かった。


絢「え......。(もう、みんな帰っちゃったのかな...?)」

もう一度二人の出て行った扉の方を向いた。


しかし、そこには何も居ない。


絢「...っ(帰ろうっ)。」

足早に、ホールを後にした。




......つづく

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