第三席 事件簿

序 言

ごきげんよう。崔浩である。


ふと作者が自らの性分を思い出したようである。

「論文の概要を書いて満足し、本文を書かない」。

おおっと、である。まさに当講座の現状である。


当解説は論文ではないし、

概要のみで十分なのだが、

とは申せど、やはり一通りの事件に

踏み込んでおかねば体裁が整うまい。


よって、牛歩にて当席の拡充を進めて参る。

予定する事件簿は以下のとおりである。



メインライン


八王の乱(公開済み)

 五胡十六国時代の幕開けがクソアンドクソであることをしらしめる素敵イベントである。


石勒(公開済み)

 永嘉の乱以降、と言いたいが、そもそも永嘉の乱の時点で石勒の存在感は普通にビッグネーム扱いである。どう考えても石勒という埒外にはひと項目を設けるべきである。


東晋黎明(公開済み)

 永嘉の乱を生き延び、その後南朝貴族として蟠踞した名族どもの腐臭の淵源を辿る上でも、東晋黎明期のクソ貴族どもを把握するのは意外と益少なからぬ振る舞いであろう。つーか南朝貴族死ね。


冉魏春秋(公開済み)

 劉聡、石勒の皇統レースはそれでも案外機能した。だが石虎と、「汚物は消毒だァー!」などと言いだした冉閔が割と全てをぶちこわしに掛かる。元々カオスなところに更にカオスを振りかけた冉閔は、やはり一代の英傑である。


苻堅上-新三国時代

 冉閔排除後のうつくしき世界を巡る争いは、苻堅桓温慕容という、どう考えてもおいしすぎる鼎立を作り上げた。慕容が割とわちゃわちゃしていてオチ要員として機能している辺りさすがである。


苻堅下-淝水

 前項の実質的な勝者である苻堅のオモシロ滑落記。結果だけを眺めればいくらでも苻堅を笑えるのだが、どう考えても東晋の抵抗がおかしい。赤壁よりも遥かに帰趨に納得が行かぬのがこの戦いであろう。そして後年の人間が納得行かぬような戦果を上げた東晋軍は、やはり、おかしい。


東晋滅亡

 淝水以降の東晋の崩壊の物語。ほぼ劉裕のあらすじとなるわけであるが、それもまぁ良かろう。


北魏台頭

 東晋がどうおかしかろうと、道武が覇権を握ったのは遠からず淝水のお陰である。即ち案外東晋は道武の恩人である。道武明元太武の覇業を追い、東晋のことを忘れて我らが北魏の栄さかなるを称揚せよ。



サブライン


前涼

 乱世の能吏、張軌が端を開いた前涼は、ある意味では乱世の生き延び方を指南してもくれている。と言うより張軌以下張駿に到るまで名君祭過ぎるわ、名将謝艾の活躍が見事に衰運とリンクするわで、物語としてはかなりおいしすぎるのが、この前涼であろう。


成漢

 李特一族対張欽、羅尚の年代記が熱い。李雄が一族の悲願である羅尚を打倒したのがまさにクライマックスである。ただし、以降はいかに桓温の噛ませ犬と化したかを綿々と綴ることに成り、別の面白さを提供するようになる。


北涼春秋

 晋書を編纂したのが唐太宗李世民であり、またその李世民がこのパートのいち地方領主に過ぎぬ「李暠」を先祖と論っているのがとても面白すぎる。そう言う目線で後涼に端を発する涼州回りのドタバタ劇を眺めると意外と面白いのではないか、とは思っている。恐らく六鎮の乱の辺りの動機としても面白く読めるのであろう。

 が、とりあえず五胡十六国クラスタ的には地方自治体のオモシロ連鎖自爆という印象である。



 様々な方に五胡十六国殺戮カーニバルを体験して頂きたいものである。

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