めんそーれ! 沖縄へようこそっ!

柊 剣

飲んでは歌え、食えば笑え

暑い。

私は愛知県在住のしがない社会人だ。愛知県は暑い。独特のじめっとした空気が肌を舐め、ぬるい風が頬を撫でる感触が嫌いだ。そこで以前から話があった沖縄旅行に夏の長期休暇を利用して向かったのがこのエッセイを書くきっかけとなっている。

セントレアから那覇空港へ着いた途端に、真夏の太陽が私を照りつけた。だが、不思議と暑いと感じない。沖縄はカラッとした暑さで何処か心地よい風が吹いていた。

元より田舎好きである私はより一層沖縄への期待を込め、沖縄に住む知り合いの車へと乗った。


さて、沖縄といえば観光スポットとして幾つかの建造物や施設がある。今回は一切触れないので興味がある方は今すぐチケットを買ってもらいたい。

私が沖縄に求めたのは酒だ。

酒、飲まずにはいられない。とはよく言ったもので、私は最高にハイな状態で夜の沖縄へ繰り出した。今回話す居酒屋とバーは二軒とも北谷ちゃたんという沖縄の本島にある盛んな所にある。

夜の北谷は賑やかであった。米人も歩くストリートにはもちろん外国のお店もある。小心者である私は取っ掛かりとして馴染み深い居酒屋へと足を運んだ。

「よぉにいちゃん、かけなかけな!」店主は人当たりの良い笑顔でカウンター席を指した。促されるまま席へ座ると、肌の白いもやしっ子である私は旅行人であると直ぐに看破された。


うまい酒を飲ませて欲しい。なんとも上目線からの物言いで私は店主に問う。

店主は何も言わず、カウンターに瓶を置き、グラスへと酒を注いだ。ーー北谷の銘酒、北谷長老熟成古酒である。古酒独特の香りが鼻腔をくすぐり、触発された私はグラスを引っ掴むとグイッと胃へと流し込んだ。古酒の仄かな甘味が口に広がり、度数とは裏腹にまろやかな喉越しが感嘆の息を生み出す。店主の語る泡盛の何たるかとゴーヤチャンプルーを肴にチビチビと飲んで、沖縄に来て良かったと早々に思っていた。


いろいろと泡盛を堪能していると団体客が押し寄せてきた。どうやら顔なじみのようで、店主と軽く挨拶を交わした後私の後ろにある三卓を囲むと音頭を取り始めた。

ちょっと待って欲しい、席が足りず座れなかった人たちが立ったままグラスを交わしているではないか。心苦しくなった私は最後の一杯を飲み干すと、店主に勘定を渡し店を出ようとした。

「何だぁにいちゃん、せっかく満席なんだ。もすこしゆっくりしていきなや」音頭を取っていた男が私の方を見やりニヒルに笑う。

むしろ満席だから出て行くのだが……。これが沖縄と内陸の違いか。考え方が真逆と言っていいだろう。酒はみんなで飲んだ方が楽しい、それが例え知らぬものだろうと。そういうことなんだろう。

生憎と私はこの後バーに行かなくてはならない。また明日来ますと伝え名残惜しくも暖簾を潜った。店を出るとおばちゃん三人が仲よさげに私と入れ替わりに居酒屋へ入ろうとする所だった。扉を開けたまま、私はどうぞと三人を譲る。

「お兄ちゃんこんばんは、もう帰るさ?」

「え? あ、はい。これから知り合いの店へ行くんですよ」

残念。そう言って中へ入っていく三人。知り合い? と他のおばちゃんが私へ声を掛けたおばちゃんに聞くも「知らんよ。でもイケメンなにいちゃんなら大歓迎でしょ?」とあっけらかんと言っていた。

これは沖縄に住む知り合いに聞いたが、こういったことは当たり前なんだとか。気兼ねなく接するのが沖縄スタイルらしい。内陸の冷たい空気とは大違いだ。


気を良くした私はそのまま知り合いの経営するバーへと向かう。北谷でも都市部のそこは観覧車があり、直ぐ近くにあるどでかいマンションはエグザイルのメンバーが最上階の部屋を買ったとかなんとか。バーは入り組んだ建物の二階にひっそりとあった。周りもバーやクラブが多いようで、すこし怖い。

知り合いが経営してなければバーに来ようとすら思わなかった私だが、中に入ればネガティヴな発想は吹き飛んだ。

ここでボスと師匠と紹介しよう。2人ともこのバーで知り合った年上の男性だ。第一声が「こっち来て飲めよ」である。この二人とはすぐに意気投合するのだが、それは割愛させて頂く。一瞬惚けた私だが、すぐにテーブルに着くと料理に酒とじゃんじゃん持ってこられた。

さて、沖縄は先述した通り海外のお店も立ち並ぶ。故に酒も海外仕込みのものも多い。

マスターはどれにするか悩んでいた私に、メニューには載せていないという珍酒を持ってきた。中でも私が好んだのはベルギーが産んだ悪魔デュベルである。ビールにしては珍しくアルコール度数が8.5%あり、渋めの味と泡の甘味が程よくマッチングしていた。愛知に戻ってきてからも探し回って見つけた酒屋でデュベルを購入するほど、私は気に入っている。

時間は零時を回る。営業時間は零時までのはず。ほろ酔い気分ながらおや? とマスターを見るとすでに卓につき酒とチーズを頬張ってるではないか。こんなことは日常茶飯事ならぬ日常北谷事。グラスの交わる甲高い音、野郎同士特有の下の話、洒落怖な怪談。夜のビーチを眺めながら、テラス席で野郎どもは明け方まで騒ぐのだった。


正直2千字程度では表せない事が5日の間に起こっている。このエッセイはその一端であり、一番私の心に残っている出来事だ。

初対面でもフレンドリーな沖縄の人達、そこに酒というフレーバーを入れる事で心も胃も暖まる。決して沖縄の観光地を蔑ろにするのではないが、こういった良さも沖縄にはあるということを知って欲しく私はこのエッセイを書いた。


そこにはうまい酒に料理、良い人良い土地、何でもある。皆さんも是非、沖縄へ行ってみてはどうだろうか?

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