縄と米

正直なキモチ

 ——その網の向こう側は、日本ここじゃない。



 沖縄には多くの米軍施設がある。

 ここ沖縄では米軍に関する事件が毎日のように起きている。


 米軍基地を辺野古ではなく県外へ、いや辺野古へ、という喧嘩も起こっている。


 最近では高江地域のヘリパッド建設に対する抗議運動がいつも新聞に載っている。



 ——でも、本当に米軍は迷惑なのだろうか。



 沖縄では米軍に土地を貸す(正確には国に土地を貸して国が米軍に貸している)ことでお金を稼ぐ人がいる。


 今となっては沖縄名物になっているタコライスも、もともと米兵のために作られた料理だ。つまり米軍がいなければ今の沖縄名物が一つ無かったことになる。


 私は浦添市うらそえしにある牧港補給基地まきみなとほきゅうきち、通称キャンプ・キンザーのクリスマスパーティーに何回か行ったことがあるが、あれはとても素晴らしい。


 クリスマスツリーは巨大だしパレードも豪華。


 何より某ハンバーガーチェーン店で300円で売っているようなサイズのドリンクが注文さえすれば飲み放題。


 私はこのときほど米軍施設があってよかったと思ったことは無い。(単に食い意地が張っているだけとは言わせない)


 しかし、もちろん米軍の戦闘機が飛んでいる音がうるさかったり、墜落するのは迷惑だ。


 米兵による事件が多発することもあり、米軍は沖縄から出て行けという意見があるのも事実だ。


 おそらくほとんどの人は沖縄と米軍の話で聞いたことがあるのはこんな話だろう。


 たしかに、沖縄にいる米兵が多いから米兵による事件が多いのも事実であるのだろう。




 そもそも沖縄に米軍施設が多いのは

 先の戦争第二次世界大戦の影響、ということは大抵の人が知っているはずだ。


 沖縄は唯一の地上戦が行われたこともあり被害が甚大だった。


 国立公園にも指定された渡嘉敷島とかしきじまなどの慶良間諸島けらましょとうでは、米軍の捕虜にならない為に手榴弾を使って家族で自殺する『集団自決』なども起こっていた。


 沖縄には6月23日を『慰霊の日』という休日として平和について考える機会がある。


 そんな沖縄だからこそ平和学習が盛んで、私も小さい頃から何度も話を聞いてきた。だが、



 ——飽きた。



 というのが正直な感想だ。


 小学生のときから毎年のように平和学習を繰り返してきたからであろう。


 私の中では平和学習のが無くなっている。


 平和学習で何を学んだか、と聞かれれば『命の尊さ』だの『今生きていることを大事にしたい』だのという意見がたくさん出る。


 私も一応同じようなことを言ってはいた。


 もちろん最初はちゃんと話を聞いていたが、しばらくすると「また平和学習か」という気分になった。


 他にも同じことを考える人はいるはずなのだ。絶対に。


 私は戦争のことを伝えないほうが良いのでは、と思ったこともある。


 戦争という概念が無くなることで戦争を無くす。


 こういう考えもある、という一つの意見として受け取ってほしい。


 まあ戦争に関する話を聞くのが面倒くさくなったから出てきた戯言ざれごとなのだが。




 ともかく。


 米軍施設が迷惑な人もいれば、あってほしいという人もいる。


 私はどちらとも言えない。


 前述した通り、米軍施設のアメリカサイズのドリンクは魅力的だが、米軍施設があることで平和の話ばかり聞かされることは嫌なのだ。


 逆に、沖縄以外の場所ではどうなのだろうか。


 平和学習に力を入れていそうなところというとやはり長崎や広島辺りなのだろうが、他はあまり平和に関するエピソードが思い当たらない。


 そのせいか沖縄の人には「本土の人間は沖縄の人間の気持ちなんて分かるわけない」と言う人もいる。


 その気持ちは分かる。


 つまり、、ということだ。


 これを読んでいる人。こんな風に思ってないですか?


 思ってるでしょ。だって。



 ——



 沖縄には愛着があるし、綺麗な海を守るのだ、埋め立て工事反対!というのも応援できる。


 けれど、意外と身近なものでも興味ないものってないですか?


 沖縄の人でも首里城に行ったことがない人はいます(例えば私がそう)。

基本観光客ばかり。


 それにゆいレール(沖縄のモノレール)だって乗ったことない人がいるはず(例えば私がそう、その2)。那覇市内しか回ってないしそれも那覇空港から首里城まで(ただし浦添市の一部まで繋げる工事は行われている)。それに沖縄は車社会だからね。


 こんな風に身近なものでも興味ないものは他の県の人でもあるでしょう。


 米軍のことに興味のない沖縄県民も普通にいます。


 だからといって考えなくてもいいわけではない。


 米軍施設が無くなったとして、もし日本が、沖縄が狙われたら自衛隊だけで果たして対処できるのか。


 でも米軍施設があることで迷惑を被っている人も大勢いる。


 このバランスをどうにかすることがこれからの課題であるが、この問題のせいで沖縄県が国に訴えられる事件も起こった。


 そもそも米軍施設が無ければこうなってはいなかった、と考えるとそれはすなわち戦争に勝っていたら、という考えになるのではないだろうか。


 もしもそうなっていたら今でも大日本帝国は残っていたか、あるいは別の戦争で無くなっていたかもしれない。


 もしかすると日本は丸ごと別の国になっていたかもしれない。


 別の国に併合されていたかもしれない。


 そう考えると今の状態で良かったのかも、と思える。




 どちらが優れているわけでもいけないわけでもない。


 結局のところ、この問題に決着をつけることは難しいのだ。


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