ブスの、逆襲。

中め

ケンカを売りつけるブス。


 高校時代のクラス委員は、とてもマメな奴だ。

 

 パーティー好きの外国人気質なのか、面倒臭がるどころか、毎年クラス会を計画しては率先して級友に連絡をする様な奴だ。


 三十四歳になった今年も開催されるらしく、案内状が届いた。

 

 美容師という職業柄、十九時から行われるその会には途中参加になりそうなのだけれど、旧友に会うのは楽しみなもので、もちろん参加の返事をした。


 この歳になれば、まわりの人間も結婚して子どもがいたりする。

 

 自分はまだだけど、特に焦ってもいない。


  独身だし、お洒落にも気を遣う職業だから、よくつるんでいた仲間が加速度を増してオッサンになっていくのに反し、自分はまだ留まれていると思う。今も普通に女にモテるし。


 クラス会当日。十九時半。

 

 仕事を早めにあがらせてもらい、ダッシュで指定の居酒屋へ向かう。

 

 貸し切りの部屋の襖を開けると、もういい感じに盛り上がっていた。

 

 遅れてきた俺は、空いている席に座るしかなくて、とりあえず入り口側の隅っこに座ることに。


 運良く隣はクラスで一番可愛かった文乃。文乃は金持ちの経営者と結婚してセレブになった。


 そして俺の正面にいるのは…誰だ、このブス。こんな奴、クラスにいたっけ?

 

 思い出そうと首を傾げていると、


 「もう。馬場添さんの事、思い出せないんでしょう。本当に失礼な奴」


 文乃がパシンと俺の太ももを叩き、その手を叩いた部分に乗せた。


 最近の三十代は若く見える人が多い気がするが、文乃もそう。セレブで自分メンテにお金をかけられているからかもしれないが、三十四歳になっても綺麗を保てていると思う。


 だから、こうして触られるのは全然嫌ではない。


 男ウケの良いレースの白ワンピに、『今日の為に美容室行っただろ』的な気合の入ったヘアメイクの文乃とは正反対の、髪を後ろで一つに束ね、キッチリスーツの馬場添。


 …馬場添。馬場添。あ‼ いたわ‼ 思い出した‼


 遡ること十六年前。俺は進学校の落ちこぼれ高校生だった。


 中学まではそこそこ賢い方だったのに、高校デビューをしてしまい、勉強せずに遊び回っていたら、あっという間に成績が落ちた。


 その頃から洋服も好きだったし、ヘアアレンジにも気を遣っていた俺は、美容師を目指し、大学に行く気もなかった為、三年になっても遊び続けていた。


 高三になって、馬場添と同じクラス、更には隣の席になった。


 俺の隣でカリカリカリカリ脇目も振らずに猛烈に勉強していた馬場添泉。


 そんな馬場添はクラスの連中に『ガリ勉うんこ』というとんでもない呼び名を付けられていた。


 『うんこ』は苗字からで、別に馬場添が臭かったわけでも汚かったわけでもない。

 

 一時期、ふざけた男子が馬場添に『馬場添って、ババを添えるとかいて馬場添でいいんだよね?」とわざとらしく尋ねて、イラついた馬場添が殺し屋の様な目でそいつを睨み返すという事件が起き、『ガリ勉うんこ殺人鬼』と呼ばれていた事もあった。


 イジメで指導を喰らっても仕方がないようなニックネーム。愛称でもなんでもない。


 仲良くなりたいとは思わないが、隣同士だし、クラスメイトとして普通に接したいなと思い、馬場添に声を掛けた事があった。


 その頃にはもう、全く勉強が出来なくなっていた俺は、


 「【ババゾエ イズミ】ってさ、なんか濁点まみれの名前だよね」


 と、本当は『濁点が多い名前だね』って言いたかったのに、何となく馬鹿にした印象の悪い事を言ってしまった。


 『あれ? 何かニュアンス違うかも』と自分の言った言葉を反芻した時には既に遅し。馬場添のキラーアイズが俺を捕えていた。


 「……調子に乗ってんじゃねぇよ」


 馬場添の声が重低音の様に下っ腹に響く。


 「え?」


 「ちょっとモテるからって勘違いしてんじゃねぇよ‼ この雰囲気イケメンが‼ 髪型と服装で誤魔化してんじゃねぇよ‼」


 轟く馬場添の罵声。


 カチンときた。なんで俺がこのブスに、みんながいる教室で馬鹿にされ、辱められなければならないんだ。


 「お前よりましじゃ‼ ガリ勉うんこ殺人鬼が‼」


 「貴様、覚えておけよ‼ 一生許さないからな‼」


 馬場添と掴み合いになったところをクラスの奴らに止められて、それ以降は卒業までガリ勉うんことは一言も喋らなかった。


 あの馬場添か‼ ばーばーぞーえー‼


 蘇る忌々しい記憶。馬場添の事はシカトして飲み会を楽しもうと心に決めた。


 しかし、どうして思い出せなかったのだろう。馬場添は今までクラス会に来た事がなかったのだろうか。それとも俺が馬場添の存在に気付かなかっただけなのか?


 …どっちでもいいや。馬場添とは関わらない方が身の為だ。

 

 最早隣しか向かず、文乃とだけ会話をする。


 「最近ね…旦那の帰りが遅いんだ。なんか怪しいの。淋しいんだよね、私。辛い。苦しいの」


 文乃が甘える様に、俺の太ももに置いていた手を動かし、指を這わせた。


 誘われているのは分かる。誘って欲しいんだという事も分かる。


 文乃は今も十分綺麗。可愛いと思う。だけど、面倒な事に巻き込まれたくない。既婚者は俺の中では完全にナシ。


 文乃の手をそっと避けようとした時、


 「フッ」


 俺らの様子を見ていたブス馬場添が、感じ悪く鼻で嗤った。


 「…何?」


 文乃が怪訝そう顔を馬場添に向ける。


 「いえ。別に」


 馬場添は、人を馬鹿にした様な笑みを浮かべると、グラスを手に取りビールを口に含んだ。


 「まだ旦那が浮気をしているかどうか分かんないんだろ? 悩んでも仕方がないじゃん。思いつめるのは良くないよ。元気出せよ、文乃。止まない雨ない。辛い事はずーっと続くわけじゃない」


 若干イラっとしつつも、馬場添の事は気にせず、文乃を元気付けながらそっと文乃の手を避ける。


 「ねぇ。止まない雨がないと何で辛い事はずっと続かないの? その二点にどんな関連があるの?」


 馬場添が今度は俺を馬鹿にしながら笑うと、串盛りの皿から焼き鳥を一本取り、一番上に刺さっている肉を口で引き抜いた。


 「え?」


 「アンタさぁ、どこかの誰かが聖書を独自解釈して作った『神様は乗り越えられる人間の前にしか壁を作らない』とか何とかいう名言風の言葉に感銘を受けるタイプでしょ」


 そして、焼き鳥の串で俺を指す、失礼なブス・馬場添。


 「それ、不慮の事故死を遂げた人間にも言える? 乗り越える前に死んじゃってるのに? 更に悲しみに暮れるその遺族に『アナタの家族が死んだのは、神様が乗り越えられると思ってアナタに与えた壁ですよ』って言う事出来る? 私には、自分の目の前に壁を作るような奴を神様と崇められるその神経が理解出来ないわ。脳内がパラダイスすぎるでしょ」


 馬場添が、俺を名言風の言葉に感銘を受ける人間と決めつけながら、俺の神経を疑った。


 「馬場添さん、性格が捻くれすぎじゃない? 貝谷は私を励まそうとしてくれただけなのに」


 文乃が俺を庇いながら、また俺の腿の手を置いた。


 「アナタ、『まだ自分は女としてイケている』とか思ってる? 三十四なのに? 確かにあなたは綺麗よ。でも【綺麗な三十四歳】なのよ。もしかして周りから『えー。全然三十代に見えなーい』とか言われて、変な勘違いを起こして『童顔で困っちゃう。こう見えて三十四歳なの』とかおかしな受け答えしてないわよね? こう見えても何も、どう見てもしっかり三十四歳だから。自分の二十代を思い返してみなさいよ。三十代の女を見かけたら、呼吸する様に『若ーい‼』ってとりあえず言っていたでしょうよ。三十代ってそうなのよ。周りに気を遣わせる年代なのよ」


 焼き鳥の串を横に持ち、またも歯で噛り付きながら肉を抜き取ると、更に露わになった串を文乃に向ける馬場添。


 「私は馬場添さんと違って嘘は吐かないから。私は本当に若く見える人にしか言わなかった」


 文乃が負けじと言い返す。

 

「ふーん。じゃあ、自分はその【本当に若く見える人】と同じだと言いたいわけだ。アンタさぁ、ここに可愛い二十四歳が紛れ込んでいたとしても貝谷の太ももに手を置いた? 二十四歳に勝てる自信ある? 他じゃ勝算なからって、三十四歳しかいない同窓会で女を出そうなんて、随分落ちぶれたものね」


 馬場添が蔑み笑うと、文乃は俺の腿に置いていた手をパッと引っ込めた。


 「馬場添‼ お前…「皆さーん。折り貰ってきましたー。食べきれないヤツ、詰めちゃいましょう‼」


 馬場添のあんまりな言い方にブチ切れそうになった時、実日子が店から貰ってきた使い捨ての透明容器を手に、部屋に入ってきた。


 実日子は文乃と違い、二十歳で下町の八百屋に嫁いで三人の子どもがいる。『大手スーパーに押されて経営が楽ではない』と苦笑いを浮かべていた実日子は、『子どもたちのお弁当のおかずにする』と言って、同窓会で食べ残される料理を毎回家に持ち帰っていた。


 「このお皿、箸つけてないから良かったらどうぞ」


 馬場添がエビフライが乗った皿を実日子に差し出した。


 「え。いいの?」


 「遠慮なく。私、お酒飲んでいる時はあまり食べられないから。お持ち帰りもしないから、私の折りも使って」


 俺たちへの態度とはうって変わり、実日子には親切な馬場添。


 「子どもたちが喜ぶわ。どうもありがとう」


 実日子が嬉しそうにエビフライの皿を受け取った。


 「実日子さんのお子さんっていくつなの?」


 文乃と俺にはあんなにも刺々しかったくせに、実日子とは世間話までする馬場添。


 「小学生二人と幼稚園児。一番上の子が来年から中学生で…。ますますお金が掛かると思うと、旦那との仲は普通に良好だけど、籍だけ抜いて母子手当を頂こうかと考えるくらいに結構ギリギリ生活」


 実日子が『はぁ』とため息を吐いた。


 「旦那と別居しないなら籍を抜いたって貰えないでしょ」


 馬場添が『気持ちは分からなくはないけど』と実日子を見つめる。


 「でも、周りにそういう人いるよ?」


 『子育てって本当にお金が掛かるから、そうも言っていられないんだよ』と苦笑いを浮かべる実日子。


 「まぁ、綺麗事を並べてばかりもいられないわよね。でも、バレたら詐欺罪よ。世間って案外狭いからねー。誰がどこで何を見ていて、いつチクられるか分からないから、子どもを想うなら親はクリーンでいた方がいいと思うわよ。店を畳む気がないのなら、民事再生とかそっちの方を考えた方がいいんじゃない?」


 昔から頭の良かった馬場添が、ちょっと良く分からない話をし出した。


 「民事再生?」


 実日子も理解していない様子。


 「経営破綻に陥った企業を倒産させることなく、事業を継続しながら会社を再建することを目的とする法律の事。今はそこまで深刻な状況でなくとも、経営が完全に行き詰まる前に行動しておいた方が良いと思う」


 「そんな法律があるんだー。いよいよダメになったら破産するしかないと思ってたよ。ちょっと調べてみようかな。良い情報をありがとう」


 馬場添の話に耳を傾けながら、折りにエビフライを詰め終えた実日子が、自分のいた席に戻ろうとした時、


 「待って、実日子。この大皿のからあげも誰も食べないから持って行くといいよ。私のエビフライもあげる」


 文乃が呼び止めた。


 「イヤ。別にいいんだけどさぁ。いい人に見られたいのも分かるんだけどさぁ。からあげ、何で【誰も食べない】ってひとり決めしているの? それにアナタ、エビフライの皿に箸をつけているじゃない。実日子さんに失礼だとは思わないの? 実日子さんに親切にして優越感に浸りたいんだろうけど、はき違えもいいところよ。勤倹力行している実日子さんは立派よ。金持ちと結婚して、旦那に浮気されて、同窓会で男を漁るアナタの方が極めて悲惨」


 やはり馬場添が文乃に掛ける言葉は憎々しい。


 「エビフライ、一本しか食ってねぇだろが。『まだ二本残っているからどうぞ』っていう文乃の優しさだろうが」


 馬場添があまりにも腹立たしくて、文乃に加勢する。


 「ねぇ、どういう了見しているの? 論点ずれていて話にならないんだけど。

 箸をつけたものを人に差し出すのであれば、『箸をつけてしまったけれど、構わなければどうぞ』くらいの一言をつけるマナーもないのかって話でしょ。上から目線の【恵んであげている感】が癇に障るって言ってるの」


 「……」


 腹は立てど、馬場添の言っている事に間違いはなく、返す言葉を失くす。


 「は…箸をつけていようが、半分食べられていようが、有難くもらうよー。なんかごめんねー。ありがとうねー」


 俺らの殺伐とした空気を察知した実日子は、手早くエビフライを折りに詰め込むと、俺らから離れて行った。


 実日子がいなくなると、馬場添はまた焼き鳥を片手にビールを飲み始めた。


 「馬場添さんって性格歪んでるよね。私、別に上から目線なんてしてないけど」


 止めておけばいいのに、腹の虫が治まらない文乃が馬場添に文句を言った。

 

 「へぇ、そう。私には懸命に働いて子どもを育てる実日子さんを見下している様に見えたけど。私からしたら、未だに女で勝負しようとしているふてぶてしいアナタより、実日子さんの方が潔くてカッコイイと思うけどね。

 なんだかんだ男なんて若い女に弱いのよ。男が守りたいのは年増の女じゃなくて、若い女子。ババアは男に守ってなんかもらえないんだから、図々しいと言われようが、逞しくなるしかないのよ。それが正解なのよ。

 アンタみたいに相も変わらず男に縋りたがってか弱い女アピールする色ボケババア、目も当てられないわよ。

 いい? 男が守るのはか弱い女子だけ。か弱いババアはただの老いぼれ」


 「ババアババアって、アンタも同じババアでしょうが‼」


 文乃が、飲んでいた烏龍ハイを馬場添の顔面に向かってぶちまけた。


 「……」


 一瞬で空気が凍った。静まり返る室内。


 周りで騒いでいた奴らも動きを止め、俺らの方を見ている。


 馬場添がジャケットのポケットからハンカチを取り出し、顔にかかった烏龍ハイを拭き取ると、 


 「そうですよ? 私はしっかりババアである自覚がありますよ? アンタが一つずつ歳を取るのに戦々恐々としている最中、私は今か今かとババアになる日を心待ちにしていたのよ。

 外見に優劣が付くのは若いうちだけなのよ。歳を取ってしまえば、綺麗だろうが汚かろうが、傍から見たらババアはババアなのよ‼」


 両手を腰に当て、王様のように高らかに笑った。

 

 なんで馬場添の存在を思い出せなかったのか、今分かった。


 馬場添はみんながオッサンとオバサンになるまで、わざと同窓会に来なかったんだ。


 「可哀想なのはアンタの方よ‼ だから未だに結婚出来ないのよ‼ このドブス‼」


 怒り狂った文乃が馬場添に掴みかかった。


 「私は誰かに頼らなくても、自分の稼ぎだけで十分に暮らしていけるもの。アナタは旦那に相手にされなくなったからって、安易に離婚なんかしないでしがみつくのが賢明よ。旦那がハリウッドスターでもない限り、慰謝料の額なんてたかが知れているし、財産分与って言っても、知らない間に会社名義の株にでも替えられていたら、取り分激減よ。アナタ、今更働ける? 自分の力で生きられる?」


 そんな文乃を可哀想な子でも見るような目で馬鹿にする馬場添。


 「あらあら良かったわね。馬場添は結婚した事がないから、離婚の心配ないものね。誰からも愛された事がないって哀れね。恋愛で悩む事がないなんて羨ましいわ」


 文乃が馬場添を馬鹿にし返す。


 「周りは仕事に子育てに大忙しなのに、よくこの場で恥ずかし気もなく恋愛を語ろうと思ったわね。ドラマの見すぎ? ラブソング聴きすぎ? 何かショックな事があったからって、傘もささずに雨の中をずぶ濡れになりながら一人で歩くとかやめてね。アレが許されるのはドラマの中だけよ。実際にやったら変質者。やっていいのはせいぜい、波打ち際を歩きながら貝殻拾って耳に当てて、目閉じながら瞼の裏でどれだか分からない【あの夏】でも思い出して黄昏る程度ね。あ、誰かに会いたくなって震えが止まらなくなったら即刻教えて。それ、何かの病気。若しくは老化。いい病院紹介してあげるよ」


 馬場添が、ドラマや歌で出てきそうなシチュエーションを、あたかも実際に文乃がやっているかの様に話し、ディスった。


 「…よく喋るブスだ事」


 文乃がなけなしの悪口を絞り出す。


 「ところでセレブさん。私はドラマのヒロインを気取る気なんかないので、濡れたまま帰りたくないんですけど?」


 馬場添が白々しく執拗に濡れた袖をハンカチで拭い、びしょ濡れを強調した。実際、グラスに三分の一だけ残った烏龍ハイをかけられただけだから、そんなに濡れてもいないくせに。


 「まぁ大変。もちろんクリーニング代をお支払いするわよ。ごめんなさいね、馬場添さんの一張羅を汚してしまって」


 文乃がバッグから財布を取り出し、『ブランドスーツだからこのくらいかしら』と言いながら。お札をわざと多めに取り出した。


 馬場添が、『してやったり』と口角を上げたのが見えた。


 「おやおや。こんな仕事帰りのスーツ姿が一張羅に見えるだなんて、程度の知れたセレブさんね。私はアナタみたいに着替える時間も、同窓生とどうにかなりたい下心もございませんから、年甲斐もなく白レースワンピなんて着て来られませんで、ただの普段着で参った次第ですが?」


 「…この‼」


 文乃が握っていたお札を馬場添に投げつけた。


 「もう、根っからのセレブさんなんだから。てゆーか、vシネ好き? 『ほら、拾えよ』的な? 拾いますよー。私は一般市民ですから、お金は大事ですもの」


 大笑いするほど面白い事など何も起こっていないのに、馬場添が肩を揺らし、これ見よがしに笑いながら近くに落ちたお金を拾った。


 いい加減腹が立つ、馬場添の態度。


 「なんなんだよ‼ お前‼」


 俺の声に、馬場添がチラっと俺の方を見た。


 「それは、私が何者かという事でしょうか? であれば…」


 馬場添がスーツのポケットから名刺入れを取出し、一枚抜き取るとそれを両手で俺に差し出した。


 「どうも。弁護士の、馬場添泉です。お困りの案件がございましたら相談に乗りますよ」


 馬場添が、偉そうに自身満々にニヤリと笑った。


 ガリ勉うんこだった馬場添は、勉強をしまくって弁護士になっていた。

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