きっといつか

@koryu01kirito

第1話

小学校を卒業してはや4、5年になった。

私は中学受験とかで、その4、5年前から東京の女学校に通っている。


そんな私の家は北習志野の近く。北習志野の聞いてピンと来た人がいるだろうか。

いや、地元民とよっぽどの鉄ヲタ以外は絶対いないだろう。

北習志野は大手町から直通(東京メトロ東西線と東葉高速線の乗り換え無しを果たして直通と……)ほど約1時間すれば着く何処にでもありそうな小さな駅。


これはそんな小さな駅にいつも通り帰ってきた私の何でもない日の物語だ。


「あれ、彩夏?」


「……は?」


私は人の顔を覚えづらい。だからこうやって名前を呼んでくる茶髪の女子高生を見ても、何も、浮かんでこない。


「えーもうやだー!陽菜だよ!」


「陽菜……陽菜」と何回か呟いてやっと思い出した。


「習1の?うわ、懐かし!」


「習1」とは北習志野から数分歩いて交番の手前を曲がれば見えてくる、かなりのサイズを誇る「習志野台第1小学校」だ。第1と言うだけあって、もっと遠くには「第2小学校」がある。

両方とも通称は「第1」とか「第2」。

使い方としては第1の子供が「第2と野球してきたけど負けたわ!」とかそんな感じだ。


「陽菜何でここいるの?」


東葉高速線北習志野を使うことが無ければ出会うことの無いだろうデイリーヤマザキ近くで会うとはまさか、


「あ〜私ね、高校は東京の共学選んだんだ。」


「へぇ〜そうだったんだ!」


一緒に魚次とは反対方面の階段を登ると、やがて牛丼の香りとパチンコの騒々しい「チャラ〜ララ〜♪」という音が聞こえてくる。


思えば北習志野も変わったものだ。

「エキタ」という小さいビルがあるが、それが出来る前の新京成線の北習志野は「田舎か」とツッコめるタイプの駅だったのだ。

東葉高速線だって緑とオレンジの掲示板から、いつの間にか色とりどりで鮮やかな電子掲示板になった。


あとTSUTAYAが来た。


「でもさ、驚きだね」


「ん?」


「なんかさ、習1の西校舎工事みたいなのしてて。耐震なのか変えちゃうのかよく分かんないんだけどね。」


習1の西校舎は音楽室やPTA室、そして竹馬や一輪車が置いてあるなかなかバラエティ溢れる校舎だ。そして何の利用価値があるのか謎の和室もある。


「そっか、北習志野ってさ、結構変わってきてるね。気がついたら船橋アリーナが千葉JETSの本拠地になってたりとか。」


「そうなの?今度Bリーグで船橋アリーナ使うらしいよ。」


バスケットボールとは縁遠い人生を歩んできた私の耳は、Bリーグという単語の意味を掴めなかった。

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