優秀な駄メイドちゃん

@YuzuTf

第1話 いらっしゃい駄メイドちゃん

「こんにちは。貴方がアキ様で御座いますか?」

整った人形のような顔立ちに桃色のショートヘア。小柄な背丈にスカートの丈が短いメイド服を着たその少女は、僕の家に何の前触れもなく現れた。

「そうだけど……」

僕が答えると、少女はスカートの裾をつまみ、軽く礼をしながら自己紹介をする。

「貴方のお父上、ハルト様より仰せつかり、貴方のメイドとして仕える事となりました、パメルと申します。以後お見知りおきを」

その一言一句を理解するのには、少し間が必要だった。おそらく、間抜けな表情で驚いてしまっていたのだろう、パメルは僕の顔を不思議そうに眺めていた。

「えっと……パメルちゃんだっけ?うちの父さんが何かやらかしちゃった?」

僕の父、ハルトは現在、海外を飛び回るビジネスマンだ。その先々で何が起こっているのやら、僕には皆目見当がつかない。もしかすると、何か厄介な事に首を突っ込んでしまったのではないだろうかと不安になり、パメルに尋ねる。

「いいえ。私の父、ロスがあなたのお父上の執事としてお仕えしております。その父に主であるハルト様が『息子をニッポンに一人で住まわせているのは心苦しい。誰かが傍で世話をしてやってほしい』と仰られたところ、私以外の適役がいなかった為、メイド修行も兼ねて行ってきなさいと荷物を纏められ、空港まで送られた次第です」

要約すると……

「締め出された……と?」

「ニュアンスが少し異なりますが、大方その認識で間違いありません」

表情を変えず、パメルは答える。

父さんが何をやらかしたのかはさっぱりわからないが、ここで無下にあしらうのも心苦しい。兎も角、重たそうな荷物で足が小刻みに震えるこの少女を、僕はひとまず家に上げることにした。

「とりあえず上がって。どこから来たのか知らないけど、長旅だったでしょ?荷物をおいて、ゆっくり話をしよう」

「お気遣い感謝します。では、失礼します」

「あ、ただ……」

家の中に入ったパメラは、呼び止められて振り向く。

「日本は土足厳禁だから、靴を脱ごうね」


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