閑話
「で、結局例の司令部に入ったんだね」
数日後の昼下がり、大通りに面した純喫茶で向かい合うオスカーと橙介。
まあな、と言って女給に珈琲を注文する
「ところで、その
君の家も関わっているみたいだけど……」
「ああ、そういやお前には話してなかったな」
忘れてた、と手を一つ叩き、少しばかり長くなるが、と話し出す。
内訳はこうだ。
――皇華五家。明治維新以前は
つまり皇族に仕える華族であるから『皇華』であり、天上の
その任は秘密裏のものとされ、人々の妖魔に対する恐れが
「陰陽寮の廃止までは土御門が筆頭だったんだがな。先々代殿が
まあ、雅咲の当代、
柊城はそもそも俺も親父もそういった事には興味ないから、順当だな」
そう言って橙介は
「そんな、魔術とか呪術とか……。
確かに君から色々と聞いてはいたけれど、まさかこの
「だから、その非科学的ってのは
それにほら、英国にも有ったろうがよ。
『魂の重さは二十一
橙介が呆れたように言うが、オスカーは首を横に振る。
「マクドゥーガルの理論は信憑性が薄すぎる。
標本数は少ないし、測定も
学者としての答えに、橙介はそんなもんかね、と鼻を鳴らすが、ふと何かに気付いたように椅子から身を乗り出す。
「というか、お前今まで俺が散々説明したにも
なら、俺のことは何だと思ってたんだよ」
「……
いや、光彩が
間髪入れず、けれど言い訳交じりに返された答えに橙介は頭を抱えた。
「英国の
「うう、ごもっともです……」
的確な指摘にがっくりと項垂れるオスカー。
そうは言われても、彼にとっては幽霊神魔の類よりも、日の下を歩ける白皮症の方がまだ
そんな不毛なやり取りをしていると、純喫茶の窓からひらりと紙のようなものが橙介の手元に舞い込んでくる。
よく見ればそれは、青い千代紙で折られた鶴だった。
右の羽には何らかの捺印がされており、誤って滑り込んだという雰囲気ではなさそうだ。
「青の鶴に捺印された桜と二振りの太刀、てことは千宮の紋だな」
紋をなぞり、鶴を開きながら橙介が言う。
そのまま千代紙の裏に書かれた内容を読み、深く溜息を吐くと神を無造作に畳む。
「なんて書いてあったんだい?」
オスカーが聞くと、橙介はひらりと紙を振って
「少将閣下から逢瀬のお誘いだよ」
とにんまり笑った。
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