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「いまのは撮れたか?」
無数のテレビ・モニターが光る中、高倉ケン太はささやいた。このトーナメントを中継するためのテレビ・スタジオにある、モニター・ルームであった。
はい、ばっちりですと背後のスタッフのひとりが返事をする。モニターには島でのあらゆる出来事が映し出されている。美和子と勝の争いもまた、テレビのカメラは捉えていた。
「いまのはつかえるな! トーナメントの初戦としては絵になる」
ケン太のつぶやきに、背後のスタッフから賛意があがる。このトーナメントは高倉コンツェルン主催で、テレビ番組として全国に放映をしている。さっきの戦いも、わずかな時間で編集され、ハイライトとして全国に流れるはずだ。
「視聴率が出ました。現在、八十パーセントを越えています」
うおおお、というどよめきがスタッフの間からあがる。番組は大成功である。ケン太はそのどよめきに眉をしかめた。
「そんなことで浮かれるな! この視聴率をいかに維持することが大事だぞ」
ケン太の言葉にスタジオ内に緊張がはしる。
かれは美和子にも見せたことのない、独裁者の顔をあらわにしていた。
ケン太の椅子の背後には、洋子がひかえていた。
いまは彼女はメイドのお仕着せになっている。
彼女の目は無数のモニターのうち、ひとつに吸いつけられていた。
画面には太郎が映し出されている。カメラのアングルからすると、相当高い場所から見下ろしているようだ。飛行船の船首にあるカメラが望遠レンズで太郎を狙っていたのだ。
洋子の視線を追ったケン太は、にやりと笑った。
「只野太郎か、美和子についてきたんだな。さすが執事学校の卒業生はどんなときでも忠実だ」
「それが教えですから」
ふむ、とケン太は肩をすくめた。
と、かれは興味津々といった様子でモニターを食い入るように見入った。
太郎の側にひとりのガクランを着た男が近づいてくる。あきらかに太郎を標的としていた。
ケン太は座りなおし、結果やいかにと待ち受ける。
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