運命の交錯
ガヤガヤザワザワ
(………
身体を駆け回る鈍い痛みと、自身に刺さる薄気味悪い視線、そして耳を貫くとても耳障りな声に浮遊していた意識が現実に呼び戻された。
(…………
必死に現状を把握して一刻も早くその場から逃げ出そうとするが、逃げ出せない様に腕を拘束され、身体には筋肉弛緩剤が少量投与されているのか指の先さえも、自分の意思で動かせない。
(…………困った事になったな……)
とても危ない状況に居るとは思えない程、冷静に青年は状況を把握していた。
傍には誰も居ないが、遠くの方で何かを競りに掛けている声が聴こえる。恐らく自分も
その為にここまで頑丈な枷で手首を拘束し、更に猛獣を入れる様な檻に閉じ込めてあるのだろうし。
(大事な金儲けの道具が逃げたんじゃどうしようも無いだろうしな……)
今迄確認した所、今の己では到底逃げ出せそうに無いと思った。
「!?」
ふいに身体が宙に浮く様な感覚を覚えた。どうやら前の競りが終わり、いよいよ俺の番らしい。
暫く気持ちの悪い浮遊感に揺られた後、明るい場所に引き出された。
何故『明るい場所』と曖昧な表現を使っているのかと言うと、目隠しをされている為あまり周りの様子が解らないのだ。
「さァさァ皆様お立会い! 世にも奇妙な瞳をした人間だよ! 珍しい赫と黯の瞳を兼ね備えた人間だ! とくと瞳を御賞味あれ!!」
耳障りな声と共に目隠しが外される気配がする。
目隠しが外されてまず目に入って来たのは、仮面を付け顔を隠した人間達。そして不躾に俺に注がれる、好奇と畏怖の視線。
「おぉアレが……」
「確かに深紅と漆黒の瞳だ……」
「紛い物では無いのよね?」
(
「では初めは五万から!」
青年のそんな思いも知らず、競りは着実に進んで行く。
「おぉ! 三億が出ました!」
此処で終わりかと思いきや、遅れて誰かが入ってくる。
「遅れたな。……支配人今何億だ?」
「…………三億か……ならその倍の三十億で」
後から来た青年二人が驚愕の三十億で俺を落札する。
暫し呆然としている俺の手枷の鍵を支配人は二人の青年に 渡し去っていく。
「ヘェ〜コレがあの……」
「本当に深紅と漆黒の瞳だな」
青年二人は車の中でまじまじと俺を……と言うより俺の瞳を見て嬉しそうに言った。
「…………アンタら馬鹿何じゃねぇの」
「おや口の聴き方を知らない奴だったみたいだな、
「まァ良いんじゃない、コレから地道に躾れば。俺らの腕の見せ所でしょ
俺の言葉に呆れた一人が本を捲っている相方に話し掛け相方が返事をする。その二人の言い種は、俺がこの二人の所有物になった証だった。
「だな。コレからお前の
「…………同じく
「……………………レイハ、だ……」
二人の名を聴いてほぼ無意識に自分も名を言う。二人は俺の名を聴くとニィっと笑った。
まるでこれからの事を暗示する様に……。
フッと意識に靄が掛かり、目の前が暗転する。どうやらあまりの出来事に、頭が付いていけなかったらしい。
「御休みレイハ。良い夢を」
「…………Have a good sleep tonight.」
「…………」
二人の
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