第31話 熱い吐息

 崖に激突したシルフィードは、なおも虚空に腕を伸ばしもがき続けていた。

 激突した衝撃でどこかに負荷が生じたのか、機体のあちこちから白い煙が沸いて出てくる。

「まだ生きてる」

『そりゃあねー』

 ソノイたちとシルフィードは上空で安全を確認すると、ゆっくりと倒れたシルフィードの前に降りた。

 見えない何かを掴もうとして、機械仕掛けのマニピュレータが何かに手を伸ばす。

「……なかに、誰かいるのかな」

『誰が?』

 ソノイは操縦桿先のフィンガーポケットにゆっくり指を差し込むと、繊細な操作で目の前のシルフィードのコクピットを開けてみた。

 機体の周りに、じわりと黒い影が広がっていく。

「燃える……」

『燃えてるねー……って、ちょっと本気?』

「誰か中にいるなら、なんであんなことしたのか聞いてみたいじゃない」

 ソノイは注意深く、シルフィードの外部操作パネルカバーを開いた。

 ソノイのシルフィードは、ソノイの指示通りに細やかな作業をこなす。

 周りに揺れる白い湯気が、熱気に照らされて徐々にその揺らぎを大きくしていく。機体のすぐ後ろで小さな火が着いたかと思うと、燃える火は炎となってシルフィードの周りを覆いだした。

 シルフィードの操作パネルを見つけ出したソノイだったが

「だ、ダメだロックがかかってる」

『むー』

「……紅炎、あなた確か外部から機体中枢にアクセスできたんだったよね?」

『へえ? い、いやーたしかにできた気はするけど』

「じゃあ今しなさいよ」

 ソノイは操作パネルにあるジャックを見つけ、シルフィードの指先で穴をさした。

「ついでよ、ついで。この子がどこで何をしてきたのかも知りたい」

『あああたしに、こんがりキツネ色になれっていうの!?』

 地面に広がる黒いシミに、赤色とともに青色の炎も混ざり出す。

「キツネ色? 電子妖精が?」

『うっさいっ!』

 燃えるシルフィードに指を当て、ソノイたちは専用回線でシルフィードへのアクセスを試みる。

 キツネ色に燃えてしまう前に、なんとか中身を探り出せればいいけれど。

 ソノイは注意深くシルフィードを操作した。

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