第28話 獣になったシルフィード
誰もいない空を飛びながら、シルフィードは静かに考えた。
過去のすべてが夢のようだ。最初の頃に経験した「起動実験失敗」のデータから、現在に至るすべての経歴。戦闘データを検索し、現在に照らし合わせて経緯を確認する。
問題はない。予めインプットされていた通り、完璧に任務をこなしてきている。
同じ試練の繰り返し。過ちの繰り返し。繰り返される毎日。
なのになぜ。
目標設定の値が異常だった。そこには確かに何かあったはずなのに、今ではどこを参照しても該当する数値がインプットされていないことに気が付いた。
まるで日が昇り沈むように当たり前のように殺戮を繰り返してきたのに、それに気付いた今は違う。
誰かに作られ、誰かに操られて、死ぬまで戦い壊れて、直され、それを繰り返し排気されるまで戦うという使命を授かり、今日はで空を飛ぶだけの兵器のはずなのに。
それが先ほど見つけた新しいコードが、自身の思考シーケンスに割り込んできて邪魔をする。
いつまで自分は、戦い続けるのだろうか。
なんのために戦っている?
殺すために戦っているのだろうか。それとも、生きるために戦ってきたのだろうか。
コードが狂ったのだろうか。
照合が、必要だ。
シルフィードが持つ正しいデータと、シルフィードが持つべき戦い続ける理由が。
頭脳を持つもう一つのシルフィードは、自分に必要なものを探した。そして見つけた。
自分と同じように戦い続っている、先行する別のシルフィードを。
シルフィードは敵に囲まれ、懸命に戦い続けていた。
手に入れる必要がある。
守る必要がある。
シルフィードは空を飛んだ。
今ならまだ間に合う。
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