第24話 もうひとりのシルフィード

 風を切り裂き雲を引いて、謎の未確認機がユーヤーたちの降下艇に急接近する。

 渦状に回転しながら飛行する勢いを増し続け、開いた脚部ハードアクチュエーターが前方に立ち尽くす障害物と敵機たちを蹴り上げる。

 グレイブのトマホークは避けた。

 だがカートにのっとられた旧式トマホークたちはもろに白い機体の蹴りを受け、吹き飛ばされそのまま風に流され降下艇の後塵に巻き込まれて消えた。

 周囲にいるトマホーク達も同様だ。突然の新手来襲に混乱している。

「あれはシルフィードじゃないか! なぜ!?」

『シルフィードだと! あの小娘、地球一周でもしてきたか!』

「いや違う!」

 完全な人型に変形した赤いシルフィードが自在に空を飛び、次々と旧式たちを撃ち落としていく。

 脚を曲げ、残された敵トマホークの下半身がずるずると風に飲まれて後方へと落ちていく。

 そこへ颯爽と、シルフィードが脚を伸ばして甲板上に着艦した。

 シルフィードは人型になれたか?

 塗装が剥げ、整備不良で劣化した間接部がぎりぎりと嫌な音を立てる。

 それに、あの細長い肩にマーキングされた文字には見覚えがあった。

「初期タイプの、シルフィード……まさかこいつも!?」

『だったらどうする? このまま良い子になって黙ってりゃ、情けをかけてくれた敵さんが俺たちを助けてくれるとでも思っているのか? 俺たちは、死ぬまで戦って死ぬために作られた兵器だ!』

 大佐のトマホークがにじりよる。シルフィードは、大佐のシルフィードに向き合いブレードソードを繰り出した。

『俺たちへのオーダーは、腰の抜けた人間共の代わりに繁栄と平穏を世にもたらすことだ! 俺たち作られた兵器は、争いのない世界へ人類を導く! 俺たちサテロイドフォースはその尖兵となり死ぬ。我らを天上へと導き給え、敵も、味方も、全ての生きとし生ける者共を!』

 天を突き抜けるようにしてそびえ立つ塔がのぞく。

『邪魔する奴は俺が許さん!』

 全てを見抜き、丸く見開かれるシルフィードの一つ目は赤かった。

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