第20話 追いかけてくるもう一つの影

 後続。ソノイたち先行機体の後を追う灰色の降下艇。

 そのさらに後方の空から、黒い排気ジェットを吐き出しながら接近する複数の機体があった。

 火を噴く降下艇でわずかに生き残った対空砲台が後ろを振り返り、謎の機体とカートたちに弾幕を張る。

 迫りくる謎の機体に、生き残ったアンビギューターが穴から外を覗いた。

 ユーヤーがヘルメットを抑えコムリンクに手をかける。

「あれは味方機だ! 攻撃中止! どこから飛んできた!?」

『所属不明機、後方ヨリ接近中!!』

 抑揚のない声が廊下中に響き、対衝撃姿勢をとるよう通達を続ける。

 トカゲのバーヴァリアンが棒をとって振り回し、足下に転がる仲間の死体を踏みつける。ユーヤーは近くの取っ手を握り身構えたが、その瞬間に降下艇が舵を切り始めた。

 降下艇が姿勢を傾け、上下を逆さまにしはじめる。バランスを崩したカートやバーヴァリアンたちがその場でひっくり返り、爆発でできた穴から外に落ちていく。

その穴から、新たな乱入者の姿が見えた。

 謎の戦闘機の機銃掃射で、艦外に落ちたカートと大型カートが撃ち抜かれる。

「味方!? こいつ」

 ユーヤーは不安になった。味方機が撃った射線には今さっきまで、自艦があった場所だ。

「こいつで仇を!」

 近くのアンビギューターが武器をユーヤーに振りかざし、上下がひっくり返った廊下の上から武器を投げてくる。

ユーヤーは武器を受け取ると、スナイパーライフルを構えた。

「相手が誰であろうと、こいつで終わりだ!」

 味方のアーマーを貫き、赤く染まった腕から血を滴らせて身動きの取れなくなったバーヴァリアンの胸に銃口を向ける。

 バーヴァリアンは、かつての仲間を食らっていた。

 銃口を向けられ、観念したのか白い牙を覗かせ笑っている。

「き、効くのか……こんなバケモノに! こいつが効くのかァ!!」

 ユーヤーはトリガーを引いた。


 謎の味方機は六筋の黒煙を残して艦直近を通りすぎ、ついで九十度近い角度で上昇を初めて青空へと向かう。

 機体は三機だった。それぞれが黒い翼を翻して雲を突っ切ると、反転して機首を下に向け降下艇に対して急降下してくる。

 バーヴァリアンを撃ち殺したユーヤーは、翼を翻す謎の味方機たちの一連の動きを見た。

 白い太陽を背に、味方機の黒い影が覗いて脚と腕部を伸ばす。

 遠目に見ても分からないあの不穏な動き。ユーヤーはコムリンクのスイッチを入れた。

「敵だ! 対空砲撃て!」

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