第21話 追いすがる影

 降下艇が舵を切って姿勢を傾け、操舵の勢いで死んだカートやバーヴァリアンの死体が割れ目からバラバラと地面に落ちていく。

 生き残った大型カートの翼を、黄色い火線が貫く。カートは血しぶきと肉片だけを残して爆発して吹き飛んでいく。

「大佐! 敵襲です! 新手の敵!」

『了解だ、今すぐそいつらを排除してやる! お前らはこの艦を死んでも守りきれ! 死守だ!』

「イエッサー」

 新手の敵が艦に飛び乗り、ぎちぎちと音を立てて頭をもたげる。

 赤い目、白い装甲板、かつての味方が敵となって自分たちの前に立ちふさがる。

降下艇のカーゴハッチから、グレイブ大佐のトマホークが出てきて敵対兵器群の前に立った。

『ふふふよくやった。あとは俺がやる。お前は死守だ』

『了解です』

 ユーヤーのコムリンクに大佐のいつもの声がきこえる。大佐の声は、いつも通り何か含んだような声だった。

だが、ソノイのオーダーとグレイヴのオーダーが食い違う。

「死ねと?」

『何を考えているんだ、お前たちは考えるな。俺たちは、使命を完了することでしか生存を認められていない』

 グレイブのトマホークがアックスを抜き出し、風の唸る甲板上で左腕、右腕を持ち上げて構える。

 三機の味方機たちも腕をあげ、機体を風に唸らせて格闘戦の構えをとる。

 交差する視線、両者は甲板上で睨み合い、風圧に重い機体をきしませた。

 一機がグレイブ機ににじりより、素早く鋭い突きを繰り出す。

 それを大佐の青いトマホークが横に避けてなぎ払う。

 鉄と鉄がぶつかり合い、赤い火花が飛び散り、なぎ払われた旧式の敵が鈍い悲鳴を上げた。

『さあ来いバケモノめ! 次に死にたい奴はどいつだ!』

 動きを止めた一機目が徐々に崩れ落ち、下半身だけを残して風の彼方へと飛んでいく。

 降下艇の下から次々と、今度は無数の旧式たちが上昇してきて白い帯を引いた。

 二機目と三機目の旧式たちが引く。


「敵! どうやらかこまれたようですね」

『すこし分が悪いな』

「少し?」

 グレイヴは旧式たちの前に互いに一歩も退かず、アックスを構えた。

 次々と湧き出てくる旧式たちに囲まれ、ユーヤーたちの降下艇は空の上で孤立している。

「?」

『どうした?』

 風の音?

 ユーヤーは大佐たちの戦いとは別の方角に何かを見つけて振り返る。

 音がする。風の音。

 さらに別の……今度は別の、赤い所属不明機が後方から迫る。

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