第8話 遭遇からの撃退

 一つ目のカートが縦横にシダを揺らして駆け回り、ターゲットを見失ったガンターレットが掘り中を撃ちまくって穴だらけにする。

 暴走を繰り返すターレットが横一文字に茂みをぶち抜き、カートをかすめソノイたちの隠れる窪みに向かって火線を伸ばす。

「むう!!」

 頭を抱え死を覚悟したソノイの上に、ユーヤーが体を張って覆い被さる。

鈍い衝撃と地面の削れる音。ターレットの弾はユーヤーのアーマーを貫けず、そのまま別方向に火線を伸ばしてカートたちを追い回した。

「大丈夫ですか?」

「なっ、なんとか!」

「しばらくじっとしていて! ここは地雷原だ」

『少尉! パッシブマインをオフラインにしました! 今ターレットを手動操作中!』

「よくやったクローン!」

 銃声が鳴り響き、ユーヤーがソノイを振り返って手招きする。

「ソノイ少尉、近くに落ちた友軍機がいます。武器をとりに向かいます!」

「了解よ!」

 ソノイは腰の拳銃を引き抜き構えると、ゆっくりと腰を伸ばしシダの上から頭を覗かせた。

 上からは残ったクローン警備兵が銃を撃ち、掘りのあちこちから獣の叫び声と咆哮が聞こえてくる。

 ソノイはユーヤーの示すハンドサインに合わせて、背をかがめてシダの茂みを走り抜けた。


 背の高い茂みの向こう側から黒煙が漂っており、ソノイが駆け寄ると先ほど掘りに落ちた二脚型軽偵察車両ライドウォーカーの全容が分かった。

 パイロットの警備クローンは即死だった。

「こいつを持っていてください少尉」

 ユーヤーが倒れたクローンの持ち物から無線機をとりだし、スイッチを入れ直してソノイに投げる。

 ソノイは受け取ると、インカムを耳に押し当てて戦況を確認した。

『こちらは総合戦術本部、敵の小規模部隊が基地正門を突破しようとしている。増援は送れない!』

「聞こえましたかソノイ少尉。このッしつこいやつらが!」

 ユーヤーはソノイを背にしてクローンガンを担ぎ、白い発光を数度弾けさせながら銃を撃った。

 ガーッ!!!!????

 バズーカほどもあるクローンガンの直撃を受けて、カートの一体が白い泡を吐き出し吹き飛んでいく。

 大きな音をたてて獣は地面に倒れこみ、ついで長い両腕をわずかに動かすとそのまま息耐えた。

 ユーヤーが振り返ってクローンガンを放り、拳銃だけのソノイに投げて渡す。脇の死体から武器を受け取ると、装填し直してゆっくりと武器を構えて後退した。

「ここは危険です、いったん掘りの外に出ないと」

「どこか出られる場所があるの?」

「非常用のはしごがありますが、少し歩かないと」

 無人のガンターレットがチュイーンと音を鳴り響かせながら弾丸をまき散らし、空堀の向こうから入ってこようとする小型カートと掘りの中に隠れるカートたちを追い散らす。

 ソノイは煙を吹くライドウォーカーから顔を覗かせ周りを見ると、ユーヤーを振り返ってゆっくりうなずいた。

 先にソノイがガンを担いで前進し、その後に続いてユーヤーが後ろを見張りながら後退する。

 基地中で非常サイレンが鳴り響く。

 最後まで応戦していた警備のクローンは、敵に円盤状の投げ石を投げられその場で死んだ。

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