第7話 敵とは?

 霞む視界が徐々に戻り、しだいに意識がはっきりしてくる。

 断続的に鳴り響く発砲音。クローンたちの怒声。軽くフワフワしたような感覚に少しずつ、重力の重みが戻ってくる。

「くっ、油断したわ」

「ソノイ少尉あぶない! まだ伏せていて!」

 力なく揺れる頭をソノイが抑えたとたん、真横からあのユーヤー少尉が飛び込んできてソノイの体を押さえ込む。

 その一瞬前にすぐ目の前で、何かが真っ赤な一つ目を見開き覗き込んでいた。

 ソノイは体中に寒気を覚えた。だがそれをユーヤー少尉が力技で横にはね飛ばし、カートに向かってめいいっぱいクローンガンを撃ちまくった。

「伏せていて! 身を低くそのまま動かないで!」

「今のは!?」

「カートだ! 奴らに喰われたらおしまいだ!」

 堀の底に生い茂る灰色のシダ類を押しのけて、緑色の肌をしたカートが悲鳴を上げながら逃げていく。

 化け物の咆哮。

 そのとき頭上の無人ガンターレットが砲身を傾け、シダ類に隠れるカートを狙い撃った。

 だがターレットはカートのいる茂み一帯を撃ったかと思うと、それに続いてソノイたちが隠れる窪みの方まで撃ってくる。

「ッ!!!!」

「ターレットを切れクローン! 命令だ!」

『カートが基地に入り込んでしまいます! 敵勢力は不明!』

「敵は三体だ! ターレットとパッシブマインをオフライン! 援護しろクローン!」

 ユーヤーはバズーカ並に巨大なクローンガンを茂みに向かって撃ち続け、掘りの上に立つクローンたちと共同して敵を追い払う。

 警備のクローンは手持ちの小火器と、偵察車両ライドウォーカーのミサイルを使って敵を追い詰めた。

 だが掘りの内側から長い腕が突如伸びると、ライドウォーカーの脚部を掴む。反応しきれなかった一機が掘りの中に引き込まれ、残った一機は数歩後退して援護銃撃を中止。

 引き込まれたライドウォーカーが爆発し、兵士の断末魔が無線に響いた。

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