第22話 大規模なイベント開催!?

 この日の部活は、突然新入部員としてやって来た四季神香里奈のせいで部室内が凄く大騒動を起こしていた。


 先週はヒール役として突然部室に現れた香里奈であったが、自身のミスによりUTube活動の件で学校側に怒られてしまい、その結果、退学か活動停止を迫られてしまい、それを阻止する為にこの映像制作部へと入部をしてきた。


 パッと見た感じは、あまり嬉しそうではなかった。これも、香里奈自信が古都と一緒の部活に所属するというのが嫌な為だろ。


 その為か香里奈は、入部初日早々から、自身の嫌っている古都と激しい言い合いをやっていた。


 そんな香里奈がこの映像制作部に入部をやらなければならなくなった一連の騒動をは自業自得とは言えども、同じUTuberである為に一旦に他人事とは言えない。


 それどころか、今後、香里奈が映像制作部の部員になるという事は、嫌でも今まで以上に合わなければならない機会が出て来る。その事を考えると、古都と香里奈が今の様な関係のまま部室にいるのは凄く良くない気がしてきた。


 その為には、とりあえず古都と香里奈の関係をどうにかして改善する必要がある。しかし、この水と油の様な関係の2人の仲を良くする事なんて出来るのか? どうやって言い争いを止めようか? 何か良い案はないか? とにかくいろんな方法を考えてみる事にした。





 少し考えていた時、ふとある事を思い出した。そう言えば、こんな言葉を聞いた事がある。お互いが協力をやる事で1つの友情が芽生える…… 


 ふと思い出した言葉なのだが、果たして本当にそんな事があるのだろうか? もしあるとするのなら?


 この時、キョウはある案を閃いた。今は仲が悪い古都と香里奈のUTubeチャンネルであるフェイカーズとチョコチップとのコラボ動画である。


 もし、この言葉が本当であるのなら、一緒にコラボ動画を作る事で今までの悪い関係から少しでも一変する可能性があるのでは?


 そう思ったキョウは、早速ソファーに座り激しい言い合いをしている2人に話しかけた。ダメかも知れないが、言ってみない事には始まらない。


「ちょっと話を聞いてくれないかな?」


「なんだよキョウ?」


「突然なによ?」


 激しい言い合いをしている最中に声をかけた為、古都と香里奈は睨み付ける様な目付きでキョウの方を見た。


「これからは同じ部員同士になるんだしさ、ケンカばかりされたらこっちには凄く迷惑だよ。だからさ、ここはひとつ、香里奈が入部をして来た記念にコラボ動画を出して、協力をしてひとつの動画を作って今までとは違う関係になってみたらどうかな?」


 古都と香里奈に睨まれている中、咄嗟に思いついた案を言った。


「弱小の分際で、どの口が言ってるのよ!!」


「私だって、こんな奴とはコラボなんてしたくないよ!!」


「そんな事言わずにさ、一回だけでもコラボ動画をやってみようよ。UTubeをやって行くなら、他のUTuberとコラボをやってみるのもいい勉強になるよ」


 予想はしていたが、完全に否定をされた。しかし、諦めずにもう一声かけてみる事にした。


「確かに夏川さんの言う通り、コラボ動画は面白そうね」


「そうだよ!! 一緒に動画を作れば、香里奈ちゃんもみんなで一緒に動画を作る楽しさが分かるよ!!」


「美沙と優は賛成してくれるのか!?」


 関係改善の為のコラボの件だが、古都と香里奈の代わりに、美沙と優がコラボの案に賛成をしてくれた。


「コラボで関係改善なんて出来るワケないでしょ?」


「コラボ如きで仲良くなるなら、誰だって苦労はしないわよ。それにコラボをしたいのなら、最低でも私よりも有名になりなさいよね!!」


 しかし、古都と香里奈の2人は、完全にコラボ動画を撮る為の協力をやろうという気は全くなかった。


「そんな事言わずに少しは考えてみたらどうかしら? これからは同じ部員同士になるのだし、今までの様な仲の悪い関係だと、お互いが気まずいだけよ。それに、さっきの春浦さんの一件でお互いが痛み分けをしている様なつもりでいても、それは和解とは全く違うのよ。だから一度、きちんとした形で和解を考えてみたらどうなの?」


「だからこそ、仲良くなる為にみんなで力を合わせて一つの動画を作れば、きっと仲良くなれるよ!! だから、みんなで一緒にコラボ動画を作ろうよ!!」


 コラボに反対している古都と香里奈に対し、美沙と優はコラボ動画をやる必要がある理由を言った。


「そう言われても…… 私が今のあんた達とコラボをしたところで、私にはメリットなんてないのだけど?」


「確かに、チャンネル数に差があればメリットがないのも分からなくもない。でも、こっちだって期待ハズレな残念なコラボにさせるつもりは全くない。それどころか、期待以上の出来のコラボ動画だって作れるさ」


「私だって、香里奈ちゃんの期待に答える事が出来る様に頑張るからさ」


「あんた達ね、口で言うのは簡単だけど、実行するのって凄く難しいのよ」


「それぐらい分かったうえで言っているよ。だからさ、コラボをやってみたらどうかな?」


 チャンネル数に差がある為に、自分の期待には応える事の出来ないコラボ動画になると思っている香里奈に対し、キョウは確実に今の香里奈が予想している以上のコラボ動画が作れるという自信を持って言った。ここまで自信を持って言えるのは、全て昔からの経験があるお陰だけど。


「キョウちゃんだけでなく、古都ちゃんも美沙ちゃんも、香里奈ちゃんが思っている以上に凄いんだよ。絶対に香里奈ちゃんの期待以上のコラボ動画が作れるよ」


「優もこう言っているんだしさ、せめてどんなコラボをやるかの話だけでも来てはくれないかな?」


「そうだよ。香里奈ちゃん、今こそコラボの件を考える時だよ」


「まぁ…… そこまで言うのなら話だけは聞いてあげてもいいわよ。本当に期待に答えれるくらいの内容は思いつくのでしょうね?」


「あぁ、思いつくさ」


 優のおかげもあり、とりあえず香里奈はコラボ動画に関する話だけでも聞いてくれる事になった。


「四季神さんは話だけでも聞いてくれるようになったから、春浦さんも話だけでも聞きなさい」


「全く…… 勝手に話を進めやがって。あくまでも話を聞くだけだからな!!」


 その後、美沙の一押しでとりあえず古都も話だけは聞く考えになり、ここから本格的にフェイカーズとチョコチップはコラボをやるのか? どんな内容のコラボをやるのか? と言った話し合いの緊急会議が始まった。





 会議が始まったのはいいが、あまりの急であった為、コラボで何をやろうかというのは実はまだ考えていなかった。この会議中に良い案が思い付くかどうか正直怪しいぐらいでもある。


「ねぇ、せっかく古都ちゃんと香里奈ちゃんの2人が揃った事だし、コラボ動画はロスヒスのゲーム実況をやってみてはどうかな?」


 そんな中、最初に案を出したの優であった。


「ロスヒスねぇ…… 私は香里奈とかいうヤツのせいで、今はロスヒスに目を向けたくもないんだよね。だってあの日の出来事を思い出してしまうんだもの。それに、私は香里奈をUTubeで抜くまではロスヒスを自分が作ったゲームだと自慢する気もない」


「どうしてなの?」


「ロスヒスバブルなんて、結局はアイドル系UTuber達によってもたらされたブームであって、私が作ったゲームに魅力があったわけではなくて、そのゲームをプレイしていたアイドル系UTuberにこそ魅力があったんだもの。だからこそ、今は本当の意味で自分にも魅力のある作品を作って、香里奈を見返してやろうと思っている」


 古都から意外な言葉が返ってきた。思い返してみれば、古都と初めて出会った時にも古都は自分がロスヒスの制作者だなんて自慢は全くしてこなかったな。古都の性格からしたら凄く意外にも思えるが、ある意味、これは古都なりのプライドでもあるんだろな。


「ふぅ~ん、古都ったら、そんな事を考えていたのね。どうせ古都には私を超える事が出来ない以上、あんたは一生ロスヒスの制作者を名乗る事は出来ないってわけね」


「余計なお世話だよ!! すぐにでも追い抜いてやるからな!!」


「そう? 果たして本当に追い抜けるかしら?」


 香里奈から再びバカにされたような事を言われた古都は、カッとなって怒った様子で香里奈に言い返した。





 その後も、いろんな案が出ては来るが、これが良いと言うベストな案は未だに出てこなかった。


 ここまでいろんな案が出てきたが、ハッキリ言ってどの案も特別凄い案とは言えず、寧ろ、コラボでなくても普段の動画でも出来るレベルの内容であった。最も、1人でUTubeをやっている香里奈なら、コラボでなくても出来てしまう内容の案ばかりだからこそ決まらないのかも知れない。


 もし、平凡な案が気に入らずに断っているのなら、本当に想像を上回る内容を思いつかないとコラボは出来ないだろな。


「さっきからいろんな案を聞いていたけど、どれも1人でやろうと思えばできる内容だし、特別コラボでやろうなんて思ったりもしないのよね。やっぱりあんた達とのコラボはまだまだ早かったのかしら? 今がダメならもっと実力を付けた後に出直しなさいよ」


「みんなで作る動画は、1人1人の特技を活かして作るからこそ良い動画が出来るんだよ。1人で作るよりも確実に良い動画が出来るよ」


 やっぱり、香里奈は平凡な案が気に入らなかっただけの様だった!!


 それはともかく、先程の優の一言が偶然にも平凡な案を脱却させる事の出来る、凄いヒントが隠されていた事に気が付いた。


 それは、ただ単に人数を増やすだけのコラボをやるのではなく、メンバー1人1人の特技を活かした内容でコラボを考えると言う事であった。どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったのだ!!


 優の一言のお陰で良い案に辿り着く事が出来ると思ったキョウは、コラボ実現というゴールを目指し、話を繋げるために喋り始めた。


「確かに優の言う通り、今回のコラボはただ単に動画を撮るだけでなくて、みんなの特技を活かして大規模な動画を作ってみたらどうかな? あと、ただ単に自分達だけでコラボをやる動画を撮るのではなくて、いっその事、今いるファン達をも巻き込んだ一大イベントを開催してみたらどうかなっと考えてみたんだけど?」


「イベント!? いきなり過ぎないか!!」


「確かにいきなりだとは思うけど、チャンネル数の差がある香里奈とのコラボで何をやるのかを話し合ってきた結果、生半端なコラボではダメだという事が分かった。そこで、香里奈とのコラボ動画では、みんなの得意分野を集結して映画を作って、それを自主イベントで上映しようと考えたのだが?」


 古都からイベントについて聞かれたキョウは、先程の優の一言からヒントをもらい、そこから自分なりに考えて思いついた案を言った。


「イベントを実行するのって、どれだけ難しいと思ってるの!?」


「そうだよ!! 今の私達のチャンネル登録者数は精々3000人だよ!! まだまだ人を呼ぶのには少なすぎる人数だよ!!」


 突然の自主イベント開催の案を発表した直後、美沙と古都からは本当に出来るのか? と思っている様な反応をされた。


 確かに、そんな反応をされても仕方がない。まだ、こんな大イベントはこのメンバーでは経験していないのだから。


「あんたね、突然イベントを開催するとか言っているけど、出来ると思って言っているの? それに、映画なんて作れると思ってるの?」


「出来ると思ったからこそ、言った発言だよ」


「あんた、相当自信があるわね……」


「当たり前だろ? 脚本担当の古都、音響担当の美沙、編集担当のボク、そして、知名度と人気がある香里奈。あと、この映像制作部。このメンバーがいればなんとかなるさ!!」


 香里奈からも本当に自主イベントで映画上映が出来るのかという心配の声がかかったが、キョウはなんとしてもコラボ動画を実現させる為に、見栄を張りながら自信気に言った。


「そうだよ!! キョウちゃんの言う通り、このメンバーが全員で力を合わせれば、絶対に出来るよ。私の名前がなかったのは残念だけど……」


 他の部員達がキョウの案に賛成をしない中、優だけはなぜか共感をする様に自信を持って賛成をしてくれた。


「優も相当自信がある様ね…… まぁ、私の協力があれば、あんた達ザコでも成功する大イベントになると思うわよ」


「と言う事は、香里奈はこの案に賛成をしてくれるのか?」


「まぁ、一応ね。どんな映画を作るのか、どんな感じでイベントを開催するのかの話を聞きたいわ」


 優のお陰なのか、香里奈が案に賛成をしてくれた事により、一気に話が進みそうに思えた。


「ザコとは失礼な!! 本当に凄いのは私達だってのを、これから作る映画で思い知らせてやるわ!!」


「そうね。こんな大きなイベントだと曲の作り甲斐もありそうだし、実に面白そうね」


 先程は賛成の考えではなかった古都と美沙だったが、香里奈の一言を聞いた後、対抗心を燃やす様に共にキョウの案に乗ってくれた。


「みんな賛成をしたという事は、香里奈とのコラボ動画の内容はイベントでの映画開催で決定だな!!」


 初めは不可能に思えた香里奈とのコラボの件であったが、普通ではない大きなスケール。いわゆる自主イベントでの映画上映という大きな形で、なんとかコラボ動画の撮影をやる事が可能になった。


 果たして、これから始まる映画撮影で、古都と香里奈の不仲は解消されるのか? 解消がされなければ、コラボを始めた意味がない。不仲を解消する事こそが、コラボの真の目的なのだから。


 そんな事を思う中、どんな映画を撮るのか、次はその話し合いが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る