第21話 アイドル系UTuberの入部

 昨日の夕方頃に、美沙という人との話をした後、私は映像制作部という弱小UTuber達の部活に入部する事を決めた。


 放課後、改めて映像制作部の顧問の先生に部活に入部をする事を話すと、意外とあっさりと承認をしてくれた。


 そして今、私は顧問の先生と一緒に、映像制作部の部室に案内されていた。


「もうすぐで部室に着くわよ。四季神さん」


「そうですか。なんか、今更になって凄く緊張してきた」


「大丈夫よ。きちんと話をすればみんな分かってくれるわよ」


 私は古都に凄く嫌われている為、本当に部活に入って上手くやって行けるのか今更ながら、凄く心配になって来た。


 最もリアルで初対面の時に踏みつけたり服を破ったりもしている為、以前以上に嫌われているのは間違いないと思う。


 正直言って先に古都が攻撃をしてきたからこその正当防衛のつもりでやったのだけど、少しばかりやり過ぎだったと今になって思ってしまう。


 そうこうしている内に、部室のへと着いた。


「今日からは四季神さんもこの部の一員なんですから、硬くならずに気軽に入りましょ」


「そうね……」


 部室の入口に着いた後、顧問の先生が部室のドアを開け、私を部室の中に入る様に誘導した。





 入口のドアが開き、部室の中の様子が見えると、そこには以前にも見た事がある様な現部員全員が揃って話をしたり動画制作をやっている光景が真っ先に目に入った。


「み~んな、今日は凄く大事なお話があるわよ~」


「なんだよ。話って?」


「あの四季神さんが、今日から入部をする事になりました!!」


 顧問の先生の一言により、それぞれ何かをやっていた部員達が一斉に入口の方を見た。そして部員達の目線は、すぐに顧問の先生から私に変わった。


「あぁ、香里奈ちゃん、部活に入ってくれたんだね」


「あんたの願い通り、入部してあげたわよ」


 私の姿を見て真っ先に反応をしてくれたのは優であった。


「入部をしてくるとは、以外にも予想外だったな。どんな吹き回しがあったのやら?」


「そりゃあ、四季神さんだって学校に通いながらUtube活動をやりたいからこそ、最も最善の選択肢を選んだだけにしか過ぎないわよ」


「そうなのかな? 優が香里奈を入部させたがっていたから、その成果が実っただけなのかも知れないし」


「その可能性はありそうね。でも、最終的に決めたのは四季神さん自身よ」


 その後、キョウという貧乳のデカ女と美沙が、私の方を見ながら2人で話をしていた。


 そんな中、古都は私の顔を見るなり、凄く怒った様子で喋って来た。


「オイッ!! なんで香里奈がここに来ているんだよ!! 私はお前の入部は認めないからな!!」


 私の予想通り、古都は私の入部を認めていなかった。


「いくら部長だからって、同じ学校の生徒の入部を拒否したらダメよ。一応、四季神さんは自分の意思で入部をしたいって言って来たのよ」


「そうなのか?」


「そうよ。だから、これからは同じ部員同士、仲良くやりなさい。それじゃあ、私は職員室に戻るから」


 顧問の先生は、私が自分から入部をしたいと言ったのを現部員達に伝えた後、他の用事があるのか、そのまま部室から出て行ってしまった。


 ちょっと、凄く気まづく心細くなるじゃない…… せめて、もう少し残っていてくれた方がありがたいのだけど……


 そんな事を考えていた私を見ながら、古都は再び怒りながら喋って来た。


「先週は散々嫌味を言って来たくせに、いざ退学を迫られると、手の平を返す。お前、凄く情けないぞ!!」


「べっ、別に私がどんな選択をしようが勝手じゃない!!」


「なんだよ!! 例え先生が認めたって、私は認めないからな!!」


 古都が私の方を見ながら入部は認めないと文句を言っていると、美沙が古都の後ろに回り込み、古都を抱き抱えた。


「全く、ワガママはその辺にしておきなさい」


「何をするんだよ、離せ!! 下ろせ!!」


 美沙に抱き抱えられた古都は、手足をジタバタと動かしながら暴れていた。


「四季神さんの入部ぐらい、素直に認めてあげなさい」


「嫌だよ!! 美沙だって見ただろ。アイツの悪い癖をよ」


「見てみたから充分に知っているわよ」


「だったら、なんでアイツの入部を認めろとか言うんだよ!?」


「同じ学校にいるのだから、どの部活に入ろうかなんて、その人の自由でしょ。その選択肢を否定したらダメよ」


「うっ、うるさいわ!!」


「キャア!! いきなり何をするのよ!!」


 突然、古都は美沙の股部分を右足のかかとで蹴り上げ、美沙から離れた。


「痛ったい……」


「みっ、美沙ちゃん、大丈夫?」


「凄く痛いのか?」


 股の部分に両手を押さえながら座り込んだ美沙を見た優とキョウが、心配をしながら美沙の方に近づいて行った。


「ちょっと、あんた一体何やってるのよ!?」


「お前が言えるセリフかよ!!」


「なっ、なによ!!」


「私はお前の入部なんか認めない!! だから、今すぐ出て行けぇ!!」


 痛がる美沙の目の前で私の方を睨む様に見ていた古都は突然、以前の時の様に私に攻撃を仕掛けようとして迫って来た。


「そうやって、また前回と同じ様に反撃をされたいの?」


 攻撃をしようと迫ってくる古都に対し、私はあの時と同じ様に反撃をやろうとし、いつでも攻撃が出来る体制に入った。


「私が同じ技をそう簡単に喰らうとでも思ったのか!? そんなお前の考えが甘いんだよ!!」


 古都は突然、私の両足を掴もうとして、ダイブをやる様に飛び込んできた。


「お前は上に集中し過ぎているせいで、下が疎かになっているんだよ!!」


「一体、何が言いたいのよ!?」


「これが、以前にお前にやられた仕返しだ!! 仕返しは倍返しだ!!」


 古都はそう言いながら、私のスカートの両端を掴んだ。そして、そのまま私のスカートは古都と共にズリ下りてしまった。


 その後、私は自分の股部分が異様に涼しくなった気がした瞬間、凄く嫌な予感がした。古都は倍返しと言いながら、単にスカートを下ろしただけでなく、私が穿いていたパンツまでズリ下ろしていた。


 古都が床に倒れ込んだのと同時に、私と古都の様子を見ていた美沙と優とキョウの3人が、恥かしそうに顔を赤くしながら、両手で顔を押さえた。


「えぇっ!? ちっ、ちょっと、なっ、何やってるのよ!?」


 スカートだけでなく、パンツまでもがズリ下ろされてしまった為、私の股が丸出しになってしまった。


 突然の出来事の為、学校内の部室、そして、古都だけでなく、美沙と優とキョウにまで私の股が見られてしまった……


「キッ、キャア!!」


 私は顔を凄く赤面になり恥かしがりながら、丸出しになった股を両手で慌てながら隠した。


 今すぐにでもこの場から離れたい…… 


 例え、見られたのが同じ女子であっても、凄く恥ずかしい…… 


 恥かしさのせいで、心臓の鼓動が納まらない。


「一瞬だったけど、私はバッチリと見たぞ。お前、毛が全くなかったな。私よりも子供じゃないか!!」


「うっ、うるさいわね!! 毛を剃ってるからないのよ!!」


「ほ~う、アイドル系Utuberは身だしなみの手入れとか大変だねぇ~」


「アイドルとか関係なしに、一緒にお風呂に入る弟に毛を引っ張られるから、仕方なしに毛を剃ってるのよ!! 好きで剃ってるんじゃないんだから!!」


 古都は完全に勝ち誇りながら、私の股に毛がない事をからかう様に言って来た。


 私の誰にも知られたくない秘密が、まさかこんな形で知られてしまうなんて…… 


 もうヤダ、凄く恥ずかしい秘密を知られた以上、もう退学でもなんでもいい。今すぐにでも、この場から離れたい……


「そんな事よりも、今すぐにスカートから手を離しなさいよ!!」


 誰にも知られたくない秘密を知られてしまった私は、恥かしさのあまり顔を真っ赤にするのと同時に、両目には涙が少しずつこぼれる様に出始めた。





 それからしばらく時間が経過した後でも、私の恥かしいという思いのせいで、心臓の鼓動は納まらなかった。それどころか、古都以外の部員の3人までもが、私の顔を見るなり、恥かしそうに顔を照らす素振りを見せる。本当であったら、このまま学校から去りたかったけど、ここで逃げてしまうと私を入部させようと頑張ってきた優には悪いと思い、私は凄く恥ずかしい気持ちはあるものの、部室に留まる事にした。


 そして今は、凄く恥ずかしい思いをして元気がなくなっていた私を励まそうと、私が座っているソファーの目の前のテーブルには、たくさんのお菓子とジュースが置かれていた。


「それにしても、よく耐えたわね四季神さん。私はてっきりあの時の様に春浦さんを再び踏みつけるのかと思ったわ」


「恥かしさのあまり、そこまで頭が回らなかっただけよ」


「そうだったの。その時は私が四季神さんに代わって、春浦さんを叱っていたわ」


 私の目の前に置いているコップにジュースを注ぎながら喋る美沙は、先程の股を蹴られた件の根を持っているせいか、どことなく怖い顔をしながら喋っていた。


「でも、見られたのが女子でよかったわよ。男子にでも見られていたら、それこそ私の高校生活は終わっていたわよ」


「そっ、それは良かったわね。男がいっ、いなくて……」


 私がジュースを飲みながら言った言葉を聞いた美沙は、隣に座っているキョウの方をチラチラと何度か見ていた。それと同時に、なぜかキョウという人は顔を赤くしながら、先程以上に私の方を見ようとはしなくなった。


 同じ女子でも、同性の意外な秘密を知ってしまうという事って、凄く恥ずかしい事なのね。キョウという人は貧乳で少しボーイッシュだが、一応男子ではなく私達と同じ女子である。ホント、男子がいなくて良かった。


「ホント、そうだな。男がこの部室に居なくて、本当に良かったな!! ははは」


 すると突然、私の前にいる優の膝の上に座っていた古都が、完全に勝ち誇った様子で私の方を見ていた。


「うっ、うるさいわね!! あんたにその恥かしさが分かるの?」


「分かるも何も、先週、お前に制服を破られた時は、私だって充分に恥かしい思いをしたわ!!」


「あんたの場合は、ブラが見えた程度でしょ!! そこまで恥かしくないじゃないの!?」


「何を言うか!! 私はその程度の恥かしさ以上に、お前に踏まれたという痛みだって味わってるんだぞ!!」


 目の前に座っていた古都と私は、どちらがより恥かしい思いをしたのかという言い合いを始めた。


「それに、お前に破られた制服のボタンを縫い付けるのだって、凄く苦労をしたんだぞ!!」


「いやっ、ボタンを縫い付けたのはボクだから!!」


 そんな中、古都が私に破られた制服のボタンの件を言い出すと、先程まで下を向いていたキョウが突然、ツッコみを入れる様に顔を上げ、古都の方を見出した。


「とにかく…… 今回はお互いが恥かしい思いをした事には変わりはないな。私は今後もお前を許すつもりはないけど、とりあえず今はお互い様だと思って見逃してやるよ。だから、部活に所属したければ部に所属してればいいよ」


「と言う事は、もしかして香里奈ちゃんの入部を認めてあげるの?」


「まぁ、入部をしてしまった事には変わりはないし、今から廃部に追い込んでも、それはそれで新たな問題を生むだけになるし…… それに、アイツの弱みも掴めた事だしさ、入部ぐらいは認めたっていいかなっと思って」


 その後、先程の怒った状態とは異なり、感情が一段落した古都は、私の入部をあっさりと認めてしまった。


 古都にとっては先程の私のスカートとパンツをズリ下ろし、私に凄く恥ずかしい思いをさせた事により、一種の怒りが収まったのだろう。


 どちらにせよ、これで今後も学校に通いながらのUTube活動が出来る事になったのは確実ね。


「とりあえず良かったじゃないの、四季神さん」


「そうだよ!! 改めて映像制作部にようこそだよ!!」


「まぁ、同じ部員になるのなら、今後ともよろしく」


 部長である古都が私の入部を認めると、それに反応をするかのように、美沙と優とキョウが私の方を見て改めて私が部活に入った事を歓迎した。


「よっ、よろしくね……」


 そんな3人に、私は軽く挨拶を返した。


 以前部室に来た時は傲慢な態度でいた私だったが、今回は入部という形で退学か活動停止の危機から助けられたという弱い立場になってしまったというのと、先程の古都の一連により凄く恥ずかしい思いをしてしまった私は、以前のような強気の態度は3人には見せる事はなかった。


「でも、お前は運動部で例えるならレギュラーでもなんでもない補欠と一緒だからな。要は部内のカーストの最下層だという事ぐらいは頭に入れておけよ」


 他の部員達によって私の入部が歓迎されているのを見ていた古都が、突然、余計な一言を言って来た。その一言をを聞いた私は、古都に恥かしい秘密を知られ弱い立場になって以前の様な強気には出にくくなったとはいえ、さすがに一番下だと言われるのは頭にくる!!


「なっ、なによ!! なんで私が最下層なのよ!! 私の方がチャンネル数が多いのだから、私こそが真の最上層よ!!」


「何を言うか!! 部活内で一番偉いのは部長なんだぞ!! 部長の権限こそが全てなんだよ!!」


「あんた達フェイカーズは部活と一心同体なのかも知れないけど、私はフェイカーズのメンバーでもないし、今後もフェイカーズには入るつもりもないから、あんたの言う事なんか聞かないわよ!!」


「入部した後でワガママを言うなよ!! 第一、嫌々入部をしなければならなくなった原因は、そもそもお前が凄くバカだったからだろ!? 少しは自分の失敗を見直せよ」


「バッ、バカとはなによ!! あんた達が部活を作っていた理由なんて、始めから知っているワケないでしょ!!」


 古都の一言により私の闘志に火がついてしまい、私は古都と再び熱い言い争いを始めてしまった。


「ちょっと四季神さん、落ち着きなさい!!」


「こっ、古都ちゃ~ん、ケンカをしたらダメだよ~ これからは仲良くやって行かないと……」 


 激しく言い争いをやっていたのを見た美沙と優が、私と古都の言い争いを止める様に割り込んできた。


「全く、これからはますます賑やかな部になりそうだな……」


 そんな中、キョウという人だけは美沙と優の様にケンカを止めようとはせず、ただその様子に困惑をしている様子を見せていた。

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